蛇足 現代語訳・解説｜蛇に足はありませんが？何が言いたいの？

今回は戦国策より「蛇足」の解説をします。

蛇足とは役に立たないもの、余計なものを指す言葉です。

「蛇足」現代語訳・解説

白文

①楚有祠者。

②賜其舎人卮酒。

③舎人相謂曰、「数人飲之不足。

④一人飲之有余。

⑤請画地為蛇、先成者飲酒。」

⑥一人蛇先成。

⑦引酒且飲之。

⑧乃左手持卮、右手画蛇曰、「吾能為之足。」

⑨未成、一人之蛇成。

⑩奪其卮曰、「蛇固無足。

⑪子安能為之足。」

⑫遂飲其酒。

⑬為蛇足者、終亡其酒。

書き下し文（読み仮名付き）・語句解説・現代語訳

①楚そに祠まつる者もの有あり。

楚	春秋戦国時代に長江の中流地域にあった国。
祠者	祭りをつかさどる人。

【訳】楚の国に祭りをつかさどる人がいた。

 

②其その舎人しゃじんに卮酒ししゅを賜ふたもう。

舎人	使用人
卮酒	大杯についだ酒
賜	お与えになる

【訳】（ある時）その使用人に大杯についだ酒をお与えになった。

 

③舎人しゃじん相謂あいいひいて曰いはわく、「数人すにんにて之これを飲のまば足たらず。

相謂	お互いに言葉を交わす、互いに言い合う
之	大杯についだ酒のこと

【訳】使用人たちがお互いに言い合うことには、「数人でこれを飲めばたりない。

 

④一人いちにんにて之これを飲のまば余あまり有あり。

飲まば	マ行四段活用「飲む」未然形+接続助詞「ば」 順接仮定条件（～ば）
余り有り	十分である、十分な余裕がある

【訳】一人でこれを飲めば、十分な余裕がある。

 

⑤請ふこう地ちに画えがきて蛇へびを為なし、先まづ成なる者もの酒さけを飲のまん。」と。

請	【願望】～しよう
地に画きて蛇を為し	地面に蛇の絵を描く
先づ	第一に、一番に
成る	完成する
ん	【意志】～う、～よう

【訳】地面に蛇の絵を描き、一番最初に（蛇の絵を）完成させた者が酒をのむことにしよう。

 

⑥一人いちにんの蛇へび先まづ成なる。

【訳】一人の蛇（の絵）が一番に完成した。

 

⑦酒さけを引ひきて且まさに之これを飲のまんとす。

酒を引きて	酒を手元に引き寄せて
且に～す	【再読文字】今にも～しようとする

【訳】酒を手元に引き寄せて今にもこの酒を飲もうとする。

 

⑧乃すなわち左手ひだりてに卮しを持もち、右手みぎてに蛇へびを画えがきて曰いはわく、「吾われ能よく之これが足あしを為なさん。」と。

乃ち	そこでなんと
卮	さかずき
吾	私
能く	【可能】～できる
之が足を為す	これに足を描くことができる

【訳】そこでなんと左手にさかずきを持ち、右手で蛇を描きながら言うことには、「私はこれ（＝蛇）に足を描くことができる。」と。

 

⑨未いまだ成ならざるに、一人いちにんの蛇へび成なる。

未だ～ず	【再読文字】まだ～ない

【訳】（その人の蛇の絵が）まだ完成しないうちに、（別の）一人の蛇（の絵）が完成した。

 

⑩其その卮しを奪うばひいて曰いはわく、「蛇へび固もとより足あし無なし。

其の卮	最初に蛇を描き上げた人が手にしていたさかずき
固より	もともと

【訳】その大きなさかずきを奪って言うことには、「蛇にはもともと足が無い。

 

⑪子し安いずくんぞ能よく之これが足あしを為なさん。」と。

子	あなた
安くんぞ	どうして～か、いや～ない。

【訳】あなたはどうしてこれ（＝蛇）に足が描けるのか、いや描けない。」と。

 

⑫遂ついに其その酒さけを飲のむ。

遂に	そして、そのまま
其の酒	奪ったさかずきに入っている酒

【訳】そしてその酒を飲んだ。

 

⑬蛇へびの足あしを為なす者もの、終ついに其その酒さけを亡うしなへえり。

終に	とうとう、結局
亡へり	ハ行四段活用動詞「亡ふ」+完了の助動詞「り」（失う、取り逃す）

【訳】蛇の足を描いた者は、結局その酒を飲み損ねてしまった。

まとめ

いかがでしたでしょうか？

今回は戦国策から「蛇足」を解説しました。

せっかく一番に蛇を描き上げたのに、余裕をこいて調子に乗った為に酒を飲み損ねてしまったというお話です。

余計なことはしないほうがいいですね。

しかし「蛇足」には「余計なもの」という意味がありますが、謙遜する時にも使用します。

適切な使い方を知っておきましょう。