今回は呂氏春秋の「刻舟求剣(舟に刻みて剣を求む)」の現代語訳と解説をしていきます。
この言葉は、世の中の移り変わりに気付かず、古いきまりややり方にこだわることのたとえです。
この言葉がなぜそのような意味を持つのでしょうか?
本文を読みながら考えていきましょう。
刻舟求剣(舟に刻みて剣を求む) 現代語訳・解説
それでは早速本文をみていきましょう。
書き下し文と現代語訳から、内容を解説していきます。
内容(白文・書き下し文・現代語訳・解説)
白文
書き下し文(ふりがなは現代仮名遣いで表記)
※青…単語、文法
赤…指示語の解説
楚人有渉江者。
楚人に江を渉る者有り。
楚の国の人で長江を渡った者がいた。
※江…長江
其剣自舟中墜於水。
其の剣舟中より水に墜つ。
遽刻其舟曰、
遽かに其の舟に刻みて曰はく、
慌ててその船に(目印)を刻んで言うことには、
※遽かに…慌てる、うろたえる
「是吾剣之所従墜。」
「是れ吾が剣の従りて墜ちし所なり」と。
「ここが私の剣が落ちた所だぞ」と。
※従りて…起点を表す
舟止。
舟止まる。
船は(岸に着いて)止まった。
従其所刻者、入水、求之。
其の刻みし所の者より、水に入りて、之を求む。
その刻んだ所から、川の中に入って、これ(落とした剣)を探し求めた。
※求む…探し求める
舟已行矣。
舟は已に行けり。
船はすでに進んでしまっていた。
※已に…すでに
※行け…進む
※矣…完了を表す置き字
而剣不行。
而るに剣は行かず。
それにもかかわらず剣は進まない。
※而るに…それにもかかわらず
求剣若此、不亦惑乎。
剣を求むること此くのごときは、亦惑ひならずや。
剣を探し求めるのにこのようなやり方をするのは、なんと愚かではないか。
※若此…このようなやり方をするのは
※不亦~乎…反語(なんと~ではないか)
※惑ひ…愚かである
以此故法為其国与此同。
此の故法を以つて其の国を為むるは此と同じ。
この古い規範や法律によって国を治めるのはこれと同じことである。
※故法…古い規範や法律
此と同じ…剣を川に落とした時に、進んでしまう船に目印をつけて後から探そうとすることと同じく愚かなことだということ。
時已徙矣。
時已に徙れり。
時代はすっかり移り変わってしまっている。
※時…時代
※已に…すっかり
※徙れ…変わる
而法不徙。
而るに法は徙らず。
それにもかかわらず規範や法律は変わっていない。
以此為治、豈不難哉。
此を以つて治を為す、豈に難からざらんや。
この古い規範や法律で政治を行おうとするのは、どうして難しくないことだろうか、いや難しいことだろう。
※為治…政治を行う
※豈不~哉…反語(どうして~ではないだろうか、いや~だ
本文の説明は以上になります。
どんなことを言っているのか、詳しくみていきましょう。
何が言いたかったのか?
この話から何が言いたかったのでしょうか?
剣を川に落としたのに、船に目印をつけて「俺が落としたのはここだぞ!!」って言うなんて、ヤバいですよね。
読者はすでにこの行為が愚かなことだと気付いていますよね。
「そんな愚かなことが、政治でも起きているんだよ」というのが作者の伝えたいことですか。
時代は移り変わっているのに、
法律は変わらず、昔ながらの方法で政治をおこなっていては国が治まるはずがないと言うことですね。
古代政治を理想とし、それを手本とするべきだという儒者の思想を批判しているとも考えられます。
時代の状況に合わせて、政治のやり方を変えていく必要があるというメッセージも感じられます。
また、剣を取り戻したければ、川に落とした時点ですぐに飛び込めば良かった。
つまり何か事が起きたら、瞬時に対応することが大切だとも言っているのではないでしょうか。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
このお話は川で剣を落とした男が、慌てて船に「ここが俺の剣を落とした場所だぞ!」とドヤ顔で言い、船が動いてから川に入って探しても剣が見つかることがなかったという内容です。
そのことから時代が移り変わっていることに気付かず、古いやり方で政治を行い続けていては国が治まるはずもなく、愚かなことだと言っているのです。
何千年も昔の人がそういっているにもかかわらず、現代においてもそのようなことがありますね。
まずは身近なことから、「事が起きたら瞬時に対応する」ということを実行してみましょう!
コメント