枕草子「この草子、目に見え心に思ふことを①」現代語訳・解説|『枕草子』誕生のきっかけとは?

古文

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はじめに

今回は『枕草子』の「この草子、目に見え心に思ふことを」の前半部分を解説をします。

枕草子
成立:平安時代中期
作者:清少納言
ジャンル:随筆
内容:宮仕えをしていた時の宮中での出来事や、人間模様、季節の自然などを鋭い感性で描いている。「をかし」の文学と言われる。

このお話は、『枕草子』を書くことになったきっかけが語られています。
私はこういう話を読むと、「いかにも清少納言だな~」と感じます。

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枕草子「この草子、目に見え心に思ふことを」現代語訳・解説

この草そう子し、目めに見みえ心こころに思おもふウことを、人ひとやは見みむンとすると思おもひイて、
この草子は、(私の)目に見え、心に思うことを、他の人が見ようとするか、いやしないと思って、

こ 代名詞
の 格助詞
草子、
名詞(紙をとじて綴った冊子・本のこと)
目 名詞
に 格助詞
見え ヤ行下二段活用動詞「見ゆ」(見える)連用形
心 名詞
に 格助詞
思ふ ハ行四段活用動詞「思ふ」連体形
こと 名詞
を、 格助詞
人 名詞
やは 【反語】係助詞 ※結び:する
見 マ行上一段活用動詞「見る」未然形
む 意志の助動詞「む」終止形
と 格助詞
する サ行変格活用動詞「す」連体形
と 格助詞
思ひ ハ行四段活用動詞「思ふ」連用形
て、 接続助詞

 

つれづれなる里さと居いのほどに書かき集あつめたるを、
退屈な里帰りの間に書き集めたけれども、

つれづれなる
ナリ活用の形容動詞「つれづれなり」(退屈だ、手持無沙汰だ)連体形
里居
名詞(宮仕えをする人が実家に帰ること、里下がりと言われる。現代の帰省・里帰り)
の 格助詞
ほど 名詞(間)
に 格助詞
書き集め
マ行下二段活用動詞「書き集む」(書き集める)連用形
たる 完了の助動詞「たり」連体形
を、 【逆接】接続助詞(~けれども)

 

あいなう、人ひとのために便びんなき言いひイ過すぐしもしつべきところどころもあれば、
困ったことに、他の人にとって都合が悪い言い過ぎをしてしまったにちがいないことがあちらこちらにあるので、

あいなう、
ク活用の形容詞「あいなし」(気に入らない、つまらない ※「自分の意図とは違い都合が悪い」というニュアンスを含む → ここでは「困ったことに」と訳)連用形「あいなく」のウ音便
人 名詞
の 格助詞
ため 名詞
に 格助詞
便なき
ク活用の形容詞「便なし」(都合が悪い)連体形
言ひ過ぐし 名詞(言い過ぎ)
も 係助詞
し サ行変格活用動詞「す」連用形
つ 強意の助動詞「つ」終止形
べき 当然の助動詞「べし」連体形
ところどころ 名詞(あちらこちら)
も 係助詞
あれ ラ行変格活用動詞「あり」已然形
ば、 接続助詞

 

よう隠かくしおきたりと思おもひイしを、心こころよりほかにこそもり出いでにけれ。
うまく隠しておいたと思ったけれども、思いがけず漏れ出てしまったのだ。

よう
ク活用の形容詞「よし」(ちょうどよい、ふさわしい ※ここでは「うまく」と訳)連用形「よく」のウ音便
隠しおき カ行四段活用動詞「隠しおく」(隠しておく、人目につかないようにしておく)連用形
たり 完了の助動詞「たり」終止形
と 格助詞
思ひ ハ行四段活用動詞「思ふ」連用形
し 過去の助動詞「き」連体形
を、 接続助詞
心 名詞 ※【連語】心よりほか…思いがけず
より 格助詞
ほか 名詞
に 格助詞
こそ 係助詞 ※結び:けれ(已然形)
もり出で
ダ行下二段活用動詞「もり出づ」(漏れ出る)連用形
に 完了の助動詞「ぬ」連用形
けれ。
詠嘆の助動詞「けり」已然形 【係り結び】

 

ここからは作者以外の登場人物を押さえてから、進みましょう。

宮の御前…中宮定子のこと
内大臣…中宮定子の兄、藤原伊周のこと
上の御前…帝(一条天皇)のこと
(作者…清少納言は中宮定子に仕えている)

 

宮みやの御お前まえに、内大臣うちのおとどの奉たてまつり給たまへエりけるを、
中宮様に、内大臣が(紙を)献上なさっていたのを、

宮の御前 名詞(中宮定子のこと)
に 格助詞
内大臣 名詞(中宮定子の兄、藤原伊周のこと)
の 格助詞
奉り
ラ行四段活用動詞「奉る」(献上する)連用形【謙譲】作者→宮の御前への敬意
給へ
ハ行四段活用補助動詞「給ふ」(なさる)已然形【尊敬】作者→内大臣への敬意
り 完了の助動詞「り」連用形
ける 過去の助動詞「けり」連体形
を、 格助詞

当時、紙は高級品なんですよね。

 

「これに何なにを書かかまし。上うえの御お前まえには、史記しきといふウ文ふみをなむン書かかせ給たまへエる。」などのたまはワせしを、
「これに何を書こうかしら。帝におかれては、史記という漢文の書籍をお書きになっていらっしゃいます。」などと(中宮様が)おおせになったので、

これ 代名詞
に 格助詞
何 代名詞
を 格助詞
書か カ行四段活用動詞「書く」未然形
まし。
ためらいの意志の助動詞「まし」(~ようかしら)終止形
上の御前 名詞(帝=一条天皇のこと)
に 格助詞
は、 係助詞
史記 名詞
と 格助詞
いふ ハ行四段活用動詞「いふ」連体形
文 名詞(書物、漢文の書籍)
を 格助詞
なむ 係助詞 ※結び:る(連体形)
書か カ行四段活用動詞「書く」未然形
せ
尊敬の助動詞「す」連用形 宮の御前→上の御前への敬意
給へ
ハ行四段活用補助動詞「給ふ」已然形【尊敬】宮の御前→上の御前への敬意 ※二重敬語
る。」 存続の助動詞「り」連体形 ※係り結び
など 副助詞
のたはませ
サ行下二段活用動詞「のたまはす」(おおせになる ※「のたまふ」よりも敬意の高い表現)連用形 【尊敬】作者→宮の御前への敬意
し 過去の助動詞「き」連体形
を、 接続助詞

一条天皇は「史記」を書き写していました。「史記」は難しい漢文の書籍であり、それを書写するということから一条天皇が漢文に関して博識であったことがうかがえます。

「枕まくらにこそは侍はべらめ。」と申もうししかば、
「(まさに)枕でございましょう。」と申し上げたところ、

「枕 名詞
に 格助詞
こそ 係助詞 ※結び:め(已然形)
侍ら
ラ行変格活用補助動詞「侍り」(~でございます)未然形【丁寧】作者→宮の御前への敬意
め。」 推量の助動詞「む」已然形 ※係り結び
と 格助詞
申し
サ行四段活用動詞「申す」(申し上げる)連用形【謙譲】作者→宮の御前への敬意
しか 過去の助動詞「き」已然形
ば、 接続助詞

 

どういうことですか?

なぜ枕なのかについては、はっきりしていないのです…「枕詞」の「枕」であるとか、「枕元においていつでも書けるようにする」という意味であるとか、夫である帝が書いている「史記=敷(布団)」から連想して、「枕」としたなどと様々な説があります。

 

「さは、得えてよ。」とて、給たまはワせたりしを、
「それならば、お前のものにしなさい。」とおっしゃって、(私に)お与えになったのだが、

「さは、 接続詞(それならば)
得
ア行下二段活用動詞「得(う)」(自分のものにする、手に入れる)連用形
てよ。」 強意の助動詞「つ」命令形
とて、 格助詞
給はせ
サ行下二段活用動詞「給はす」(お与えになる ※「給ふ」よりも敬意の高い表現)連用形【尊敬】作者→宮の御前への敬意
たり 完了の助動詞「たり」連用形
し 過去の助動詞「き」連体形
を、 接続助詞

 

あやしきを、こよや何なにやと、尽つきせず多おおかる紙かみを、書かき尽つくさむンとせしに、いとものおぼえぬことぞ多おおかるや。
変なことを、あれやこれやと、尽きないほどたくさんの紙を、書き尽くそうとしたので、全くわけのわからないことが多いことよ。

あやしき
シク活用の形容詞「あやし」(異常だ、変だ)連体形 ※作者が自分のことを「そんな柄でもない」と謙遜しているという解釈もある
を、 接続助詞
こ
代名詞 ※「こよやなにや」…あれやこれや
よ 終助詞
や 間接助詞
何 代名詞
や 間接助詞
と、 格助詞
尽きせ
サ行変格活用動詞「尽きす」(尽きる、なくなる)未然形
ず 打消の助動詞「ず」連用形
多かる ク活用の形容詞「多し」連体形
紙 名詞
を、 格助詞
書き尽くさ サ行四段活用動詞「書き尽くす」未然形
む 意志の助動詞「む」終止形
と 格助詞
せ サ行変格活用動詞「す」未然形
し 過去の助動詞「き」連体形
に、 接続助詞
いと 副詞
ものおぼえ
ヤ行下二段活用動詞「ものおぼゆ」(物心がつく、分別がつく)連体形
ぬ 打消の助動詞「ず」連体形
こと 名詞
ぞ 係助詞 ※結び:多かる(連体形)
多かる ク活用の形容詞「多し」(多い)連体形
や。 【詠嘆】間投助詞

 

続き:おほかた、これは、世の中にをかしきこと~

この記事を書いた人
あずき

40代、一児の母
通信制高校の国語教員

生徒が「呪文にしか見えない」という古文・漢文に、少しでも興味を持ってもらえたらと作品についてとことん調べています。

自分の生徒には直接伝えられるけど、
聞きたくても聞けない…などと困っている方にも届けたくて、ブログを始めました。

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