今回は荀子より「出藍誉(出藍の誉れ)」について解説をしていきます。
「出藍の誉れ」とは、もととなるものよりそこから出たものの方が優れていることを言います。
つまりは弟子の方が師匠よりも優れているということを指しています。
この記事では
・白文
・書き下し文(読み仮名付き)
・語句の意味/解説
・現代語訳
以上の内容を順番にお話していきます。
「出藍の誉れ」書き下し文・現代語訳・解説
白文
①君子曰、「学不可以已。
②青取之於藍而青於藍、
③氷水為之而寒於水。
④木直中縄、
⑤輮以為輪、其曲中規。
⑥雖有槁暴、不復挺者、
⑦輮使之然也。
⑧故木受縄則直、
⑨金就礪則利、
⑩君子博学而日参省乎己、
⑪則智明而行無過矣。」
書き下し文(読み仮名付き)・語句解説・現代語訳
①君子曰はく、「学は以つて已むべからず。
語句 | 意味/解説 |
君子 | 常識をわきまえた立派な人のことを言う |
学 | 学問 |
以つて | それによって |
已む | 中断する、やめる |
べからず | ~してはいけない【禁止】 |
【訳】君子が言うことには、「学問はこれくらいでいいだろうとやめてはいけない。
「以つて已むと」は直訳すると「それによってやめる」となります。
ここでは「これぐらいでいいだろうとやめる」と訳しました。
②青は之を藍より取りて藍よりも青く、
語句 | 意味/解説 |
青 | 青(色) |
藍 | 藍草 |
【訳】青色は藍草から取るものであるが藍草よりも青く、
③氷は水之を為すも水よりも寒し。
語句 | 意味/解説 |
寒し | 冷たい |
【訳】氷は水からできるが、水よりも冷たい。
④木の直きこと縄に中たるも、
語句 | 意味/解説 |
直きこと | 真っすぐなもの |
縄 | 墨縄※木の曲がりなどを確認する道具 |
中たる | ぴったりと合う |
【訳】木の真っすぐなものは墨縄にぴったりと合うが、
⑤輮めて以つて輪と為せば、其の曲がること規にも中たる。
語句 | 意味/解説 |
輮めて | 曲げて |
輪と為す | 輪にする |
規 | コンパス |
【訳】曲げて輪にすれば、その曲がり具合はコンパスにもぴったりと合う。
⑥槁暴有りと雖も、復た挺びざるは、
語句 | 意味/解説 |
槁暴 | 枯れて乾く |
雖も | ~であっても |
復た~ざる | 二度とは~しない |
挺び | まっすぐになる |
【訳】枯れて乾いた状態であっても、二度とはまっすぐにならないのは、
⑦輮むること之をして然らしむるなり。
語句 | 意味/解説 |
然らしむる | そのようであるようにさせる |
※しむ(使む) | ~させる【使役】 |
【訳】曲げることがこれにそのようであるようにさせるのである。
⑧故に木は縄を受くれば則ち直く、
語句 | 意味/解説 |
故に | したがって。だから |
縄 | 墨縄のこと |
受く | 受け止める |
~れば則ち… | ~すれば【仮定】 |
直く | 真っすぐになり |
【訳】したがって墨縄を当てれば真っすぐになり、
「縄を受くれば」の部分は直訳すると「墨縄を受け止めれば」となります。
ここでは「墨縄を当てるとそれに沿って真っすぐになる」ということを言っています。
⑨金は礪に就けば則ち利く、
語句 | 意味/解説 |
金 | 金属 |
礪 | 砥石 |
就けば | 磨けば |
利く | 鋭く |
【訳】金属は砥石で磨けば鋭くなり、
⑩君子は博く学びて日に己を参省すれば、
語句 | 意味/解説 |
博く | 幅広く |
己 | わが身 |
参省 | 繰り返し行動を反省する |
【訳】君子(になるに)は幅広く学び一日にわが身の行動を繰り返し反省すれば、
⑪則ち智は明らかにして行ひは過ち無し。」と。
語句 | 意味/解説 |
智 | 知恵 |
明らかにして | はっきりして |
行ひ | 行動 |
過ち無し | 間違いがない |
【訳】知恵がはっきりして行動にも間違いがなくなる。」と。
一体何を言っているのか
・藍色が藍よりも青い
・氷は水よりも冷たい
これは「もとになっているものよりも優れたものになること」を表しています。
続いて
・定規で引いた線と重なるほどまっすぐな木も、コンパスに合わせて輪のようにすれば曲がる
・それは乾いても元のまっすぐな木には戻らない
はどうでしょうか?
まっすぐだったものが、曲がって元に戻らなくなる…
あまりいいイメージがしません。
ここで言っていることは下記の通りです。
「縄を受くれば則ち直く」はその逆で、
縄(墨縄)…君子
まっすぐになる…君子のようになる
ということですね。
そうです。
その次の「金は礪に就けば則ち利く」は
金…君子を目指す人
礪に就く…君子を目指して学問を怠らすに励む
利く…磨かれて君子になっていく
ということを言っています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
このお話は、自分のお手本とする人を目指して努力するとそのようになれる。
またそれ以上の存在になれるということを言っています。
「出藍の誉」とは弟子が師匠よりも優れることを言います。
学問にはげむことで、教えを受けた師匠を越えた弟子を褒めたたえる言葉です。
このお話は、学問の奥深さも語っています。
学問は途中でやめることなく、怠らずに励むことでさらに発展するということです。
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