呂氏春秋「知音」現代語訳・解説

今回は呂氏春秋より「知音ちいん」について解説をしていきます。
知音とは心の通じた理解者、親友のことを言います。

この記事では

以上の内容を順番にお話していきます。

「知音」書き下し文・現代語訳・解説

白文

①伯牙鼓琴、鍾子期聴之。

②方鼓琴而志在太山。

③鍾子期曰、「善哉乎鼓琴、巍巍乎若太山。」

④少選之間而志在流水。

⑤鍾子期又曰、「善哉乎鼓琴、湯湯乎若流水。」

⑥鍾子期死。

⑦伯牙破琴絶絃、終身不復鼓琴。

⑧以為世無足復為鼓琴者。

書き下し文（読み仮名付き）・語句解説・現代語訳

①伯牙はくが琴ことを鼓こし、鍾子期しょうしき之これを聴きく。

【訳】伯牙が琴を演奏し、鍾子期がその音色を聴く。

②琴ことを鼓こするに方あたりて志こころざしは太山たいざんに在あり。

【訳】琴を演奏するときに、心は泰山にある。

泰山を思いうかべてことを弾くということですね。

③鍾子期しょうしき曰いはわく、「善よきかな琴ことを鼓こする、巍巍乎ぎぎことして太山たいざんのごとし。」と。

【訳】鍾子期が言うことには、「すばらしい演奏だなあ。琴を演奏すると、高くそびえる泰山のようである。」と。

この部分は演奏を聴くと「壮大な泰山が目の前にそびえているようだ」ということです。

④少選しょうせんの間まにして志こころざしは流水りゅうすいに在あり。

【訳】少しの間（伯牙の）心は流れる水にあった。

今度は演奏のイメージが泰山から流れる水に変わったのですね。

⑤鍾子期しょうしき又また曰いはわく、「善よきかな琴ことを鼓こする、湯湯乎しょうしょうことして流水りゅうすいのごとし。」と。

【訳】鍾子期がまた言うことには、「すばらしい演奏だなあ。琴を演奏すると、盛んに流れる水のようだ」と。

伯牙の演奏のイメージが変わったことを、鍾子期はしっかりと感じ取ったということですね。

⑥鍾子期しょうしき死しす。

【訳】鍾子期が亡くなった。

⑦伯牙はくが琴ことを破やぶり絃げんを絶たち、終身しゅうしん復また琴ことを鼓こせず。

【訳】伯牙は琴を壊して弦を断ち、生涯二度と琴を演奏しなかった。

⑧以為おもへえらく世よに復またた琴ことを鼓こするに足たる者もの無なしと。

【訳】（伯牙が）思うことには世の中に二度と琴を演奏するに値する者はいないと。

鍾子期以上に自分の演奏のイメージを理解してくれる人はいない
ということです。

理解してくれる人がいないなら、演奏する意味もないと思ってしまったんですね。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

知音とは心の通じた理解者のことでした。
伯牙にとっての鍾子期のことですね。

また絶絃という言葉のもととなる話でもありました。
「絶絃」とは慣れ親しんだもの・人・行為と決別することを意味する言葉となりました。

伯牙が素晴らしい琴の演奏者であったのは、そのすばらしさを理解してくれる人がいたからだと言えます。