老子より「無用の用」について見ていきます。
「無用の用」とは、一見何の役にも立っていないと見えるものが、実は重要な役割を果たしていることを意味します。
老子や荘子などの道家の思想の一つです。
この記事では
・書き下し文(読み仮名付き)
・語句の意味/解説
・現代語訳
以上の内容について順番に説明していきます。
「無用之用(無用の用)」現代語訳・解説
内容(白文・書き下し文・現代語訳・語句解説)
① 三十輻、共一轂。
三十輻、一轂を共にす。
語句 | 意味/解説 |
三十輻 | 輻…車輪の矢 |
一轂 | 轂…車輪の中央にある車軸を通す部分 |
共 | 共有する→ここでは「集まる」と訳 |
【訳】車輪の30本の矢は、一つの轂に集まって(車輪となって)いる。
② 当其無、有車之用。
其の無に当たりて、車の用有り。
語句 | 意味/解説 |
其の無 | 車輪の中央の、何もない穴の開いた空間のことを指す |
当 | ~のため |
用 | はたらき |
【訳】その轂の何もない空間があるため、車輪のはたらきを為すのだ。
③ 埏埴以為器。
埴を埏ねて以つて器を為る。
語句 | 意味/解説 |
埴 | 粘土 |
埏 | こねる |
為る | 作る |
【訳】粘土をこねて器を作る。
④ 当其無、有器之用。
其の無に当たりて、器の用有り。
語句 | 意味/解説 |
其の無 | うつわの中の何もない空間を指す |
【訳】その器の中に何もない空間があるため、器としてのはたらきを為すのだ。
⑤ 鑿戸牖以為室。
戸牖を鑿ちて以つて室を為る。
語句 | 意味/解説 |
戸牖 | 戸口や窓 |
鑿 | 穴を開ける |
室 | 部屋 |
【訳】戸口や窓を開けて部屋を作る。
⑥ 当其無、有室之用。
其の無に当たりて、室の用有り。
語句 | 意味/解説 |
其の無 | 部屋にある何もない空間を指す |
【訳】その部屋の中に何もない空間があるため、部屋としてのはたらきを為すのだ。
⑦ 故有之為利、無之以為用。
故に有の以つて利を為すは、無の以つて用を為せばなり。
語句 | 意味/解説 |
故に | だから |
有 | 形のあるもの |
利を為す | 役に立つ |
無 | 形のないもの |
【訳】だから形のあるものが役に立つのは、形のないものがそのはたらきを為しているからなのである。
どれも形に目が行きますが、実際に役割を果たしているのは、その何もない部分(空間)だということです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
老子から「無用の用」の解説をしました。
今回のお話は、一見役に立たないようなものでも、重要な役割を果たしているというお話でした。
「役に立たないように見える」というのは、人間の自分本位な考え方であり、天から見たら無駄なものや役に立たないものなど一つもないということを言っています。
みなさんは、普段実感することがないけど、実は大切な役割を果たしているものを見つけることができるでしょうか?
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