十八史略より「竭股肱之力(股肱の力を竭くす)」について解説をしていきます。
「股肱の力」とは、臣下として出すべき力のことを言います。
今回のお話は、劉備が自分の亡きあとを諸葛亮に託す場面です。
どのようなやりとりが行われたのか、読み取っていきましょう。
この記事では
・書き下し文(読み仮名付き)
・語句の意味/解説
・現代語訳
以上の内容を順番にお話していきます。
「竭股肱之力(股肱の力を竭くす)」現代語訳・解説
白文・書き下し文(読み仮名付き)・語句解説・現代語訳
① 昭烈臨終謂亮曰、
昭烈終はりに臨みて亮に謂ひて曰はく、
語句 | 意味/解説 |
昭烈 | 人名。昭烈帝テイ(劉備のこと。蜀の初代皇帝) |
終はり | 命が終わる時、臨終 |
臨みて | 直面する |
亮 | 人名。諸葛亮 |
【訳】昭烈帝が死去するにあたって諸葛亮に対して言うことには、
②「君才十倍曹丕。
「君の才は曹丕に十倍す。
語句 | 意味/解説 |
君 | あなた(尊敬の意味が込められている) |
才 | 才能 |
曹丕 | 人名。魏の初代皇帝。 |
【訳】「お前の才能は曹丕の十倍ある。」
③ 必能安国家、終定大事。
必ず能く国家を安んじ、終には大事を定めん。
語句 | 意味/解説 |
能く | 【可能】~できる |
安んじ | 安泰にする |
終には | しまいに、とうとう |
大事 | 重大な事柄 |
定めん | 治める、安定させる |
【訳】必ず国家を安泰にすることができ、しまいに国家統一を成し遂げるだろう。
「大事を定めん」は「国家統一を成し遂げる」と訳しました。
④ 嗣子可輔輔之。
嗣子輔くべくんば之を輔けよ。
語句 | 意味/解説 |
嗣子 | 後継ぎの子。ここでは劉備の子の劉禅リュウゼンを指す。 |
輔く | 補佐する |
べくんば | 「べし」連用形「べく」+係助詞「は」(~できるなら) |
之 | 劉禅を指す |
輔けよ | 「輔く」の命令形 |
【訳】跡継ぎの子が補佐することができるならばこれを補佐しなさい。
⑤ 如其不可、君可自取。」
如し其れ不可ならば、君自ら取るべし。」と。
語句 | 意味/解説 |
如~ | 【仮定】もし~ならば |
其れ | 嗣子を補佐すること |
不可 | できない |
君 | あなた(諸葛亮を指す) |
自ら | 自分自身で |
取る | 統治する |
べし | 【適当】~がよい |
【訳】もし補佐することができないならば、君が自分自身で統治するのがよい。」と。
⑥ 亮涕泣曰、
亮涕泣して曰はく、
語句 | 意味/解説 |
涕泣して | 涙を流して泣く |
【訳】諸葛亮が涙を流して言うことには、
⑦「臣敢不竭股肱之力、
「臣敢へて股肱の力を竭くし、
語句 | 意味/解説 |
臣 | 私(君主に対して臣下である自分を指して言う) |
敢へて(~ざらんや) | 【反語】~しないことがあろうか。いや~必ずする。 |
股肱の力 | 全身の力 |
竭し | 尽くし |
【訳】「私はなんとしても臣下として全力を尽くし、
⑧ 効忠貞之節、
忠貞の節を効し、
語句 | 意味/解説 |
忠貞の節 | 忠実で貞節な志 |
効し | 尽くす |
【訳】忠実で貞節な志を尽くし、
⑨ 継之以死。」
之に継ぐに死を以てせざらんや。」と。
語句 | 意味/解説 |
之 | 国家統一という劉備の志 |
継ぐに | 引き継ぐために |
死を以て | 命をかけて |
(敢へて~)せざらんや | 【反語】~しないことがあろうか。いや~する。 |
【訳】大事を引き継ぐために命をかけないことがあるだろうか、いや必ず命をかけてする。
「自分の命をかけて、劉備の願いである国家を作ります!」と宣言したのですね。
劉禅という人物
17歳で父である劉備のあとを継ぐことになった劉禅。
劉禅はどのような人物だったのでしょうか?
彼は残念な二代目でした。
暗愚の王の代表として、後世に名を残すほどです。
結果的に諸葛亮の死後、蜀を滅亡させてしまいました。
滅亡後に洛陽に連行された劉禅は、酒宴の席で臣下たちが涙を流す中、「ここでは面倒くさいことを考えなくて済むので、とても楽しいです」とヘラヘラ笑っていたというエピソードもあるくらいです。
そんな人物だと分かっていながら、諸葛亮は自分で国を治めるのではなく、劉禅を支えて尽くしたのでした。
劉備との、強い絆が感じられるのではないでしょうか。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は劉備が臨終にあたって、諸葛亮へ息子と国を託す場面でした。
劉備の言葉に、諸葛亮は涙を流して「命がけで頑張ります!」と宣言します。
実際に残念な二代目皇帝を支え、天下泰平の世を作るために尽力したのでした。
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