孟浩然「宿建徳江(建徳江に宿る)」現代語訳・解説|作者の思いとは?

漢文

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唐詩三百首より孟浩然もうこうねんの「宿建徳江(建徳江に宿る)」について解説をしていきます。

今回は漢詩です。
どのような状況を表していて、作者のどのような思いが込められているのかを読み取っていきましょう。

この記事では

・白文
・書き下し文(読み仮名付き)
・語句の意味/解説
・現代語訳

以上の内容を順番にお話していきます。

「宿建徳江(建徳江に宿る)」書き下し文・現代語訳・解説

白文

題名:宿建徳江

① 移舟泊煙渚
② 日暮客愁新
③ 野曠天低樹
④ 江清月近人

漢詩のきまり

本文の解説に入る前に、簡単に漢詩のきまりをおさらいしておきましょう。

つまり、今回は五言絶句となります。

押韻
2句目:新(sin)
4句目:人(jin)
です。

対句は、3句目と4句目

書き下し文(読み仮名付き)・語句解説・現代語訳

 題名:建徳江けんとくこう宿やど

語句 意味
建徳江 現在の浙江省建徳市のあたりを流れる川(長江の下流)
宿る 宿泊する

【訳】建徳江の岸辺に宿泊したときのこと

 

 建徳江は、霧が立ち込める川として有名でした。

 

ふねうつして煙渚えんしょはく

語句 意味
移して 移動する
煙渚 もやに包まれた岸辺
※煙…もや、渚…中州(川の真ん中)
泊す 停泊する

【訳】船を移動させて、夕もやに包まれた中州に停泊した

「旅の途中で、日が暮れて辺りが暗くなってきたし、もやもかかって視界が悪くなってきたから、今日はここで船を停めよう」という感じですね。

 

にちかくしゅうあらたなり

語句 意味
日暮 日暮れ、夕暮れ
客愁 旅先での心細い思い(旅愁)
新たなり 改めて

【訳】日が暮れると、旅愁が改めて湧き上がってくる

 

ひろくしててん

語句 意味
野原
曠くして 広い
低れ 低くなっている

【訳】野原は広く、空は木々の上に低く垂れ

天が木々より低く見えるとは、どういうことですか?

「空が、木に垂れ下がってるかのように見える」というのは、「空が近い(ように感じる)」ということです。

 

こうきよくしてつきひとちか

語句 意味
清くして にごりがない、澄み渡る
ここでは孟浩然のことを指している
近し 近い

【訳】川は澄みきって、月は私の近く(に感じられる)

 

こちらも3句目同様に、月が低いところにあるように感じられるということですね。

「澄みきった川に映る月影が、空にある月よりも人(私)の近く感じられる」という解釈もあります。

状況

大きな川の真ん中で船を停泊させて、旅先で感じるわびしい思い(旅愁)を詠んでいます。
旅とは言っても、楽しい旅行というわけではありません。
孟浩然は、科挙に受からず、放浪していました。
官職に就くことを諦められないまま、旅を続けていたのです。
澄んだ川と明るく照る月の描写が美しい作品ですが、その美しさだけしか孟浩然のやりきれない思いを慰めるものがないという状況なのです。
それにより、いっそう作者の無念の思いや、わびしさが感じられます。

孟浩然とは

姓は孟、名は浩、あざな(呼び名、あだ名)は浩然です。
孟浩然は、何度も科挙(役人になるための試験)を受けます。
受かることないまま、仕事に就かずに放浪しながら都に出ると、詩人として知られることになります。
しかし、孟浩然は官職につくことをあきらめなかったのです。
結局、官職に就くことができずに一生を終えました。

それでも、当時の有名な詩人である李白や杜甫などは孟浩然を慕い、尊敬する思いを込めた詩を詠んでいます。

孟浩然の詩は、自然描写の美しさが素晴らしいです。
また、人間味のある内容で親しまれてもいました。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回は、孟浩然の「宿建徳江」を解説しました。
主題は、旅先で感じるわびしい思い(旅愁)です。

すばらしい描写で詩人としては高い評価を受けた孟浩然ですが、社会に受け入れられなかった不満を訴え続けたようにも感じられます。

この記事を書いた人
あずき

40代、一児の母
通信制高校の国語教員

生徒が「呪文にしか見えない」という古文・漢文に、少しでも興味を持ってもらえたらと作品についてとことん調べています。

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