今回は李白の「黄鶴楼送孟浩然之広陵(黄鶴楼にて孟浩然の広陵に之くを送る)」について解説をしていきます。
これは李白(当時37歳)が、友人である孟浩然(当時49歳)を見送った時の様子を詠んだ詩です。
どのような思いが込められているのか、読み取っていきましょう。
この記事では
・書き下し文(読み仮名付き)
・語句の意味/解説
・現代語訳
・漢詩の形式や技法
以上の内容を順番にお話していきます。
李白「黄鶴楼送孟浩然之広陵(黄鶴楼にて孟浩然の広陵に之くを送る)」現代語訳・解説
白文・書き下し文(読み仮名付き)・語句解説・現代語訳
題名:黄鶴楼送孟浩然之広陵
黄鶴楼にて孟浩然の広陵に之くを送る
語句 | 意味/解説 |
黄鶴楼 | 地名。現在の湖北省武漢市の兆候のほとりにあった高楼のこと |
孟浩然 | 人名 |
広陵 | 地名。現在の揚州市にあたる、長江下流の都市のこと |
之く | 行く |
送る | 見送る |
【訳】黄鶴楼で孟浩然が広陵に行くのを見送る
① 故人西辞黄鶴楼
故人西のかた黄鶴楼を辞し
語句 | 意味/解説 |
故人 | 古くからの友人。孟浩然を指す。 |
西のかた | 広陵から見て西の方の地 |
黄鶴楼 | 現在の湖北省武漢市の兆候のほとりにあった高楼のこと |
辞す | 別れを告げる |
【訳】古くからの友人は(広陵から見て)西の方の地であるこの黄鶴楼に別れを告げ、
② 煙花三月下揚州
煙花三月揚州に下る
語句 | 意味/解説 |
煙花 | 春の花に霞がたちこめている様子を指す |
三月 | 旧暦の三月(現在の四月頃を指す) |
揚州 | 地名。広陵の別名。 |
下る | 下っていく |
【訳】春の花にかすみが立ち込める三月に揚州へと(長江を)下っていく
③ 孤帆遠影碧空尽
孤帆の遠影碧空に尽き
語句 | 意味/解説 |
孤帆 | 帆を張った一そうの舟 |
遠影 | 遠くに見える姿のこと |
碧空 | 青空 |
尽き | なくなる |
【訳】帆を張った一そうの舟の遠くに見える姿は青空に消えてなくなり、
孟浩然を乗せた小舟が遠ざかって行って小さくなり、青空の中に消えていくようだと詠んでいます。
④ 唯見長江天際流
唯だ見る長江の天際に流るるを
語句 | 意味/解説 |
唯だ | 【限定】ただ~だけ |
長江 | 中国を流れる大きな川 |
天際 | 大空の果て |
流るるを | 流れるのを |
【訳】ただ長江が大空の果てまで流れるのを見るだけだ
小さな舟が大きな長江にポツンといて、見えなくなってしまう様子は寂しげですね。
そこが、李白の巧みな表現ではないでしょうか。
「友達との別れは寂しいなあ」と言わなくても、別れの寂しさが伝わりますよね。
でも憧れの都市である広陵に行ける孟浩然は、ウキウキだったかもしれないですけど…
だとしてもやはり当時の旅は、長く命がけでもありましたから、友人と会えなくなるのは寂しかったと思いますよ~。
詩の形式・表現技法
詩の形式…七言絶句(一句が七文字、四句からなる)
押韻…一句目+偶数句末
「楼 rou」「州 syuu」「流 ryuu」
「楼」だけ韻を踏んでなくないですか?
唐の時代の発音と、日本の音読みでは違っています。
日本の音読みだと韻が踏めていないように感じますが、しっかり押韻されています。
「楼 lou」「州 zhou」「流 liou」
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は李白の「黄鶴楼送孟浩然之広陵(黄鶴楼にて孟浩然の広陵に之くを送る)」を取り上げました。
情景を描くことで、古くからの友人との別れの寂しさが感じられました。
李白の表現の巧みさが、よく分かる作品でしたね。
自由奔放で天才肌、と言われる李白の作品はたくさんあります。
是非、他の作品も味わってみてください。
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