列女伝「孟母断機」現代語訳・解説|母がブチ切れたのはなぜ?

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今回は列女伝より「孟母断機」について解説をしていきます。

「孟母断機」とは、孟子の母が織っていた布を断ち切ったことを表しています。
帰ってきた孟子に対して、「あんたがしてるのは、こういうことだよ!」と見せつけたのです。
どういうことなのか、詳しい内容を見ていきましょう。

この記事では

・白文
・書き下し文(読み仮名付き)
・語句の意味/解説
・現代語訳

以上の内容を順番にお話していきます。

 

「孟母断機」書き下し文・現代語訳・解説

白文

① 孟子之少也、既学而帰。
② 孟母方織。
③ 問曰、「学何所至矣。」
④ 孟子曰、「自若也。」
⑤ 孟母以刀断其織。
⑥ 孟子懼而問其故。
⑦ 孟母曰、「子之廃学、若吾断欺織也。
⑧ 夫君子学以立名、問則広知。
⑨ 是以居則安寧、動則遠害。
⑩ 今而廃之、是不免於廝役、
⑪ 而無以離於禍患也。
⑫ 何以異於織績而食、中道廃而不為。
⑬ 寧能衣其夫子、而長不乏糧食哉。
⑭ 女則廃其所食、男則堕於脩徳、
⑮ 不為窃盗、則為虜役矣。」
⑯ 孟子懼、旦夕勤学不息。
⑰ 師事子思、遂成天下之名儒。

 

書き下し文(読み仮名付き)・語句解説・現代語訳

孟子もうしわかきとき、すでまなびてかえる。

語句 意味/解説
孟子 中国戦国時代の思想家(儒家)。「孔子の継承者」を名乗っていた。
少きとき 幼い頃
既に もう

【訳】孟子が幼い頃、もう学問を終えて(家に帰って)きた。

 

 

 このとき孟子は、母親と離れて寮生活をしていました。
その寮を抜け出して、帰ってきてしまったのです。

まだ幼かったし、寂しかったのかもしれませんね。

 

孟母もうぼまさる。

語句 意味/解説
孟母 孟子の母
方に ちょうどその時
織る 機ハタで布を織っていた

【訳】孟子の母はちょうど布を織っていた。

 

 く、「がくいずれのところにかいたる。」と。

語句 意味/解説
問ひて 尋ねて
学問
何れの所 どこ
至る 達する

【訳】(母が孟子に)尋ねて言うことには、「学問はどこまで進んだのか。」と。

 

 孟子もうしく、「自若じじゃくたり。」と。

語句 意味/解説
自若たり もとのままなこと、前と変化がない様子

【訳】孟子は「以前と変わりません。」と言った。

 

孟母もうぼとうしょくつ。

語句 意味/解説
刃物
以つて ~を用いて
其の織 今織っていた布
断つ 切断する、断ち切る

【訳】(すると)孟子の母は刃物で、織っていた布を断ち切った。

 

 ⑥孟子もうしおそれてゆえ

語句 意味/解説
懼れて 驚いてビクビクする
其の故 布を断ち切った理由
問ふ 尋ねる

【訳】孟子は驚いてビクビクしながらその理由を尋ねた。

 

寂しくて帰ってきたのに、お母さんブチ切れて織ってた布を切ったとなったらビビッてしまいますね…

 

孟母もうぼく、「がくはいするは、われしょくつがごときなり。

語句 意味/解説
あなた
学問
廃する (続けてきたことを)やめる
欺の この
布を織る
ごとき(若き) ~のようだ

【訳】母は言った、「あなたが学問をやめることは、私がこの織った布を断ち切るようなものだ。

 

君子くんしまなびてつてて、すなわひろむ。

語句 意味/解説
夫れ そもそも
君子 徳のある立派な人を指す
学びて 学ぶことで、学問で
以って ~で、~でもって
名を立て 名をあげる
問はば 尋ねる
則ち ~すると
知を広む 知識を広める

【訳】そもそも君子たる人は学問をして名をあげ、(分からないことを)尋ねて知識を広めるものだ。

 

ここればすなわねいやすんじ、うごけばすなわがいとおざかる。

語句 意味/解説
是を以つて こういうわけで
居れば 家にいるときは
寧に安んじ 安心して暮らせる
動けば 活動すれば
障害
遠ざかる 遠ざけることができる

【訳】これによって、(仕官せずに)家にいる時は平和で穏やかに暮らすことができ、(仕官して)活動すれば障害を遠ざけることができる。

 

これはどういうことを言っているのでしょうか?

つまり「学ぶことを続けているから、家でも将来の不安なく安心して過ごすことができるし、働くときも自分の知恵があるから、障害に遭わずに済む」ということです。

君子になりたければ、しっかり学びなさいと言っているのですね。

 

いまにしてこれはいするは、廝役しえきよりまぬがれずして、

語句 意味/解説
今にして
学問のこと
廃する (続けてきたことを)やめる
廝役 使用人
免れず 避けられない

【訳】今学ぶことをやめるということは、使用人となることを避けられないで、

 

禍患かかんよりはなるるきなり。

語句 意味/解説
禍患 災難
離るる 離れる
無きなり ないのだ

【訳】災難から離れることもないのだ。

 

なに織績しょくせきしてしょくするに、中道ちゅうどうにしてはいしてさざるにことならんや。

語句 意味/解説
何を以つて~んや 【反語】どうして~だろうか、いや~ない。
織績して 布を織って
食する 生計を立てる
中道にして 途中で
廃して やめる
為さざる 完成させない
異なら 違う

【訳】布を織って生計を立てているのに、途中でやめて布を完成させないのとどうして違うだろうか、いや違わない。

 

いずくんぞ夫子ふしせて、なが糧食りょうしょくとぼしからざらしめんや。

語句 意味/解説
寧くんぞ~んや 【疑問+反語】どうして~だろうか、いや~ない。
能く ~できる
其の夫子 自分の夫や子ども
衣せて 服を着せて
長く いつまでも
糧食 食糧
乏しから 足りない、乏しい
しめ 【使役】~させる

【訳】どうして夫や子に服を着せ、いつまでも食糧を乏しくないようにさせることができるだろうか。いや、できない。

 

おんなすなわしょくするところはいし、おとこすなわとくおさむるをおこたらば、

語句 意味/解説
食する所 生計を立てること
修むる 学んで身につける
堕らば 怠れば

【訳】女性が生計を立てることをやめ、男性が徳を身につけることを怠れば、

 

窃盗せっとうらずんば、すなわ虜役りょえきらん。」と。

語句 意味/解説
窃盗 盗み、盗人
ずんば ~しなければ
虜役 使用人

【訳】盗みをしなければ、使用人となってしまうだろう。」と。

 

厳しい話かもしれませんが、孟子の将来のことを思って学問を投げ出さずに続けるように諭したのですね。

 

孟子もうしおそれ、旦夕たんせきがくつとめてまず。

語句 意味/解説
懼れ 恐れおののく
旦夕 朝晩
学に勤めて 学問に励む
息まず 休む

【訳】孟子は(母の怒りに)恐れおののいて、朝も晩も学問に励んで休むことはなかった。

 

子思しし師事しじし、つい天下てんか名儒めいじゅれり。

語句 意味/解説
子思 孔子の孫。中国春秋時代の儒者。
師事し、 教えを受け
遂に ついには
天下の 天下に
名儒 名高い儒者
成れり なった

【訳】子思先生に師事し、ついには天下に名高い儒者となったのだった。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。

孔子が亡くなった約100年後に生まれた孟子ですが、孔子の教えを受け継ぎ発展させた人物として有名です。
そんな孟子にも、学問をやめて投げ出してしまった過去があったのですね。
孟子が学問に打ち込んだのには、しっかりした母の存在があったということがわかりました。

この記事を書いた人
あずき

40代、一児の母
通信制高校の国語教員

生徒が「呪文にしか見えない」という古文・漢文に、少しでも興味を持ってもらえたらと作品についてとことん調べています。

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