李白「贈汪倫(汪倫に贈る)」現代語訳・解説|男たちの熱い友情の物語

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はじめに

今回は、中国・唐の時代のはくが詠んだ「贈汪倫(汪倫に贈る)」を解説します。この詩は、別れの切なさよりも、出会えた喜びと感謝が爆発しているような、とてもポジティブで熱い友情の詩です。
この詩の裏にある「汪倫の作戦」や、李白が胸を打たれた背景を分かりやすく解説します。

作者・李白(701-762)
唐代を代表する「詩仙」と称される天才詩人。
若くして旅を好み、各地を放浪して詩作を行った。奔放で豪快な詩風で、自由とお酒を深く愛した人だった。

 

李白「贈汪倫(汪倫に贈る)」

この詩が読まれた背景  

この詩が詠まれた背景には、ファン(汪倫)が憧れのスター(李白)を自分の村に招くための、クスッと笑える「作戦」がありました。

汪倫は、李白を招くために「ここには十里の桃花があり、万家の酒店があります」と手紙を出しました。旅好き・酒好きの李白を誘うには、十分な内容です。
しかし、李白が喜んで行ってみるとそんなものはなく、汪倫が「十里の桃花とは10里離れたところにある『桃花潭』という川のことで、万家の酒店とは『万さん』という主人が営む酒屋が1軒あるという意味です」と明かしました。
それに対して李白は怒ることもなく、笑ってその地で過ごしたそうです。

李白は漂泊の詩人で、旅先で人に漢詩を贈ることがありました。
しかし、このように詩の中に自分の名前と相手の名前を盛り込んだ漢詩は珍しいです。

では、これらを踏まえて本文を見ていきましょう。 

白文・書き下し文(読み仮名付き)・現代語訳・語句解説 

題名:贈汪倫
汪倫に贈る

汪倫
人名。桃花潭で酒造りをしていた。地元の名士だったようである。
格助詞
贈る
友人に対して、感謝や友情を込めて漢詩を贈るという文化がある

【訳】友人である汪倫に贈る(詩)

 

① 李白乗舟将欲行
はく ふねりて まさかんとほっ

李白
人名。作者自身を指しており「私」と訳
格助詞
乗りて 乗って
将に~欲す ~しようとする
行かん 行こう ※ここでは「出発する」と訳

【訳】私は船に乗って、出発しようとする

 

② 忽聞岸上踏歌声
たちまがんじょう とうこえ

忽ち 不意に
聞く 聞こえる
岸上
岸の上 ※船に乗っている李白に対して、汪倫たちは岸にいるということ
踏歌
「跳歌」「打歌」などとも呼ばれ、歌いながら足を踏み鳴らして踊ること。
格助詞
踏歌の歌声

【訳】不意に岸の上で踏歌を歌い踊る声(が聞こえる)

この句は、友人の汪倫が村人とともに、李白のことを見送ってくれている様子を表現しています。

 

③ 桃花潭水深千尺
ももたんすい ふかせんじゃく

桃花潭水
桃花潭…現在の安徽省の南部を流れる川のこと。その川の水。
深さ 深さは
千尺
千尺は約300メートル。ここでは川の深さが非常に深いことを表現している

【訳】桃花潭の水は深さは千尺もある(=非常に深い)

④ 不及汪倫送我情
汪倫おうりんわれおくるのじょうおよばず

汪倫
人名。李白の友人。桃花潭で酒造りをしていた。
格助詞(~の)
格助詞(~に対する、~を)
送る 見送る
格助詞
思い、人情
格助詞
及ばず 至らない

【訳】汪倫が私を見送る思い(の深さ)には至らない

友人の汪倫が、自分のことを思ってくれる思いの方が、桃花潭と比べ物にならないほど深いんだ!と言っているんですね。

 

詩の形式・押韻 

この詩の形式は、七言絶句です。   

 押韻は、第一句末の「行」、第二句末の「声第四句末「情になります。
日本語の読み方だと、「韻を踏んでいないではないか!」と思われる方もいるかもしれませんが、当時の発音だと確かに「押韻である」と言えます。
 

作者の思い 

この詩には、汪倫の純粋な真心に対する、李白の「最高のアンサー(感謝)」が込められています。

1. 汪倫の見送りに興奮
いよいよ李白が舟に乗って出発しようとしたその時、汪倫は村人たちを引き連れ、足を踏み鳴らしながら賑やかに歌いました。
李白にとって、この見送りはよほど嬉しかったのでしょう。
詩の冒頭でわざわざ「李白が〜」と自分の名前を出し、「まさに船が出ようとしたその時、突然聞こえてきたんだ!」と、その時の驚きと興奮を表現しています。

李白は友人に対して詩を贈ることがありますが、タイトルに人名をいれることはあっても、詩の中に自分の名前や相手の名前を入れるのは、非常に珍しいことです。
それだけ李白にとって汪倫が肩書などを超えた、深く熱い友情があることがわかります。

2. 「深い水」よりも「深い情」
後半の「桃花潭の水深千尺も、汪倫の情の深さには及ばない」というフレーズは、誇張表現です。
騙されてやってきた「桃花潭」という場所の名前をあえて使い、「水深300メートルなんて目じゃないくらい、あいつの気持ちは深いんだ!」と汪倫の思いに応えています。

 

まとめ 

いかがでしたでしょうか?

汪倫が李白会いたさについた可愛い嘘から始まり、最後は男たちの熱い友情を感じる、ステキな漢詩でした。

  • 出発の瞬間に響いた歌声

  • 深い川の水すら超える、汪倫の圧倒的な真心

形式ばったお別れの挨拶ではなく、お互いの素の心が通じ合ったからこそ、この詩は現在でも愛され続けているのではないでしょうか。

この記事を書いた人
あずき

40代、一児の母
通信制高校の国語教員

生徒が「呪文にしか見えない」という古文・漢文に、少しでも興味を持ってもらえたらと作品についてとことん調べています。

自分の生徒には直接伝えられるけど、
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