淮南子「塞翁馬(塞翁が馬)」現代語訳・解説

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今回は淮南子えなんじより「塞翁馬(塞翁さいおううま)」について解説をしていきます。

 

塞翁が馬とは…人生の幸せや不幸というのは予測できないという意味の言葉

そのもととなるお話の解説をしていきます。

この記事では

・白文

・書き下し文(読み仮名付き)

・語句の意味/解説

・現代語訳

以上の内容を順番にお話していきます。

 

「塞翁が馬」書き下し文・現代語訳・解説

白文

①近塞上之人、有善術者。

②馬無故亡而入胡。

③人皆弔之。

④其父曰、「此何遽不為福乎。」

⑤居数月、其馬将胡駿馬而帰。

⑥人皆賀之。

⑦其父曰、「此何遽不能為禍乎。」

⑧家富良馬。

⑨其子好騎、堕而折其髀。

⑩人皆弔之。

⑪其父曰、「此何遽不為福乎。」

⑫居一年、胡人大入塞。

⑬丁壮者、引弦而戦、近塞之人、死者十九。

⑭此独以跛之故、父子相保。

 

書き下し文(読み仮名付き)・語句解説・現代語訳

塞上さいじょうちかきのひとに、じゅつくするものり。

語句 意味/解説
塞上 国境の砦のほとり
占いなどの術
善くする者 得意とする者※善く…上手に、うまく

【訳】国境の砦のほとりの近くに住む人で、占いなどの術を得意とする者がいた。

 

うまゆえくしてげてる。

語句 意味/解説
故無くして 理由なく
亡げて 逃げて
西法や北方の国、またはそこに住む異民族
入る 入っていく

【訳】馬が理由なく逃げて、隣の胡の国に入っていった。

 

占い師さんが飼っている馬が逃げてしまったということですね。

そうですね、またこのお話の舞台は国境近くなので、胡の国は隣の国であることが想像できます。

 

 

ひとみなこれちょうす。

語句 意味/解説
人々
みんな
このこと※「善くする者」の飼っている馬が胡の国に逃げてしまったこと
気の毒に思って慰める

【訳】人々はみんなこのことを気の毒に思って慰めた。

 

く、「何遽なんふくらざらんや」と。

語句 意味/解説
其の父 その老人 ※術を善くする者を指す
何遽~乎 どうして~か、いや~ない【反語】
幸福

【訳】その老人が言うことには、「このことがどうして幸福とならないことがあろうか、いや幸福になる。」

 

ること数月すうつきうま駿馬しゅんめひきかえる。

語句 意味/解説
居ること数月 とどまること数月→数か月が経って※数か月とはだいたい3~4、または5~6か月くらいを言う
駿馬 優れた馬のこと
将ゐて 連れて

【訳】数か月が経って、その馬は胡の駿馬を連れて帰ってきた。

 

ひとみなこれす。

語句 意味/解説
このこと※胡の国に逃げた馬が胡の国の駿馬を連れて帰ってきたことを指す
賀す 祝福する

【訳】人々はみんなそのことを祝福した。

 

く、「何遽なんあたざらんや」と。

語句 意味/解説
わざわい、不幸
何遽~能はざらん どうして~できないことがあろうか、いや~できる→どうして~とならないことがあろうか、いや~となる

【訳】その老人が言うことには、「このことがどうして不幸とならないことがあろうか、いや不幸となる。」

 

いえ良馬りょうばむ。

語句 意味/解説
※其の父の家を指す
良馬 良い馬のこと
富む 増える、ゆたかになる

【訳】その家は良馬が増えた。

 

このみ、ちてる。

語句 意味/解説
其の子 其の(父の)息子
騎を好み 乗馬を好み
腿の骨

【訳】その息子は乗馬を好み、(ある時)馬から落ちて腿の骨を折った。

 

ひとみなこれちょうす。

 【訳】人々はみんなこのことを気の毒に思って慰めた。

 

く、「何遽なんふくらざらんや。」

【訳】その老人が言うことには、「このことがどうして幸福とならないことがあろうか、いや幸福になる。」

 

ること一年いちねん胡人こひとおおさいる。

語句 意味/解説
居ること一年 とどまること一年→一年が経って
大ひに たくさん
入る 入って来る

【訳】一年が経ち、胡の国の人がたくさん砦に入ってきた。→胡の国が大軍を為して攻め入ってきた。

 

丁壮ていそうなるものつるきてたたかさいちかきのひとするものじゅうなり。

語句 意味/解説
丁壮なる者 若者
弦を引きて 弓を引く
塞に近きの人 砦の近くに住む人
死する者 死者
十に九 十人に九人

【訳】若者は弓を引いて戦ったが、砦の近くに住む人で、死者は十人中九人であった。

 

ほとんどの人が命を落としてしまったということですね…

 

これひとゆえつて、あいたもてり。

語句 意味/解説
「其の子」を指す
独り その人だけ
足の障害
故を以つて 理由として、ゆえに
相保てり お互いに無事であった

【訳】その息子だけは足の障害を理由に、父子はお互いに無事であった。

 

足の骨を折った後に障害が残ったことを理由に、1年後に胡の人が攻め入ってきた際に戦いに参加しなかったということを言っています。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。

皆が「残念だったね」と慰めるようなことが、幸福に転じ、また「良かったね」と言われるようなことが不幸に転じたりもするというお話でした。

 

まとめるとこのようになりますね

①飼っていた馬が逃げた【不幸】⇒胡の駿馬を連れて帰って来る【幸福】

②胡の駿馬を連れて帰って来る【幸福】⇒息子が落馬により骨折する【不幸】

③息子が落馬により骨折する【不幸】⇒戦に参加しないことで無事であった【幸福】

みなさんはどのように思いましたか?

自分たちだけが助かったことを「幸福」と言っていることに、違和感を感じる方もいるかもしれません。

いずれにしても「一見不幸なことが起きたとしても次はきっと幸福がやってくる」と前向きに、そして幸福だと感じるときも謙虚に生きることの大切さを教えてくれるお話ではないでしょうか。

この記事を書いた人
あずき

40代、一児の母
通信制高校の国語教員

生徒が「呪文にしか見えない」という古文・漢文に、少しでも興味を持ってもらえたらと作品についてとことん調べています。

自分の生徒には直接伝えられるけど、
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