白居易「長恨歌①漢皇色を重んじて~」現代語訳・解説|天子を虜にした楊貴妃の魅力とは?

漢文

※当サイトはアフィリエイト広告を利用しています。

教科書で、やたらと長い漢詩を見たことはありませんか?

今回は、その「長恨歌」を取り上げます。日本人に古くから愛された、白居易の作品です。
この「長恨歌」は、唐の玄宗皇帝と楊貴妃のお話です。さすがに実名ではマズいと思った白居易は、「漢の武帝」の話としてこの詩を作っています。

この二人のエピソードは、『源氏物語』の「桐壺」にも登場します。桐壺更衣を溺愛する帝を見て、貴族たちが「楊貴妃の例までも」と、危機感を持ったのでした。「女に溺れてきちんと政治をしなかった帝が、国をめちゃめちゃにした」というのが、二人に対する印象ではないでしょうか?

しかし、この「長恨歌」は、決して女性に溺れた帝を非難するものではありません。「長恨」は、「長く忘れることのできない恨み」という意味です。誰のどういう思いが込められているのか、しっかりと読み取っていきましょう。

この作品は漢詩ではありますが、リズミカルな文章として読める作品だと思いますので、警戒しないでチャレンジしていただきたいです。

 

白居易「長恨歌①漢皇色を重んじて~」現代語訳・解説

今回は、楊貴妃の出身についてと、その美しさについて語られている部分を解説します。

白居易(772年生-846年没)
唐代の詩人。古くから、日本人に愛されてきた。紫式部や清少納言、松尾芭蕉や与謝蕪村にも影響を与えた。

 

白文・書き下し文(読み仮名付き)・現代語訳・語句解説

① 漢皇重色思傾国
  漢皇かんこう いろおもんじて 傾国けいこくおも
【訳】漢の天子は容姿が美しい女性を好み、絶世の美人を(得たい/妻にしたいと)思っていた

漢皇
漢の天子のこと。実際は唐の玄宗の話だが、遠慮して漢の武帝の話というていにした
容姿が美しい女性
重んじて
重要視する。ここでは好むことを表している
傾国
国を危うくするほどの絶世の美人のこと
格助詞
思ふ ハ行四段活用動詞「思ふ」終止形

 

② 御宇多年求不得
  御宇ぎょう 多年たねん もとむれども
【訳】天下を治めている間、長い年月(をかけて)探し求めたけれども、手に入れられずにいた。

御宇 天下を治めている間
多年 長い年月
求むれ
マ行下二段活用動詞「求む」(探し求める)已然形
ども 逆接の接続助詞(~けれども)
ア行下二段活用動詞「得」(手に入れる)未然形
打消の助動詞

 

③ 楊家有女初長成
ようむすめはじめて長成ちょうせい
【訳】(そんな時に)楊氏の家に娘がいて、(その娘は)年ごろになったばかりであった

楊家 楊氏の家
格助詞
有り
ラ行変格活用動詞「あり」(いる)連用形
初めて ~したばかり
長成す
大人になる、ここでは年ごろになることを表す

 

④ 養在深閨人未識
  やしなれて深閨しんけいひといまらず
【訳】養育されて家の奥にある部屋にいたので、ほかの人はまだ(その娘の存在を)知らなかった

養は
ハ行四段活用動詞「養ふ」(養育する)未然形
受身の助動詞「る」連用形
接続助詞
深閨 家の奥にある女性の寝室
格助詞
在り
ラ行変格活用動詞「在り」(いる)連用形
他の人
未だ~ず まだ~ない
識ら
ラ行四段活用動詞「識る」(知る)未然形

 

⑤ 天生麗質難自棄
天生てんせい麗質れいしつ おのづからがた
【訳】生まれつきの美しさは、自分から捨てるのは難しい 

天生 生まれつき
格助詞
麗質 顔立ちの美しさ
自づから 自分から
棄て難し 捨てるのが難しい

これは、本人が美しさを隠そうとしても周りの人々が放っておかない、ということを表しています。

 

⑥ 一朝選在君王側
  一朝いっちょうえらばれて 君王くんおうかたわら
【訳】ある日選ばれて、天子のそばにいることになった(=お仕えすることになった)

一朝 ある日
選ば バ行四段活用動詞「選ぶ」未然形
受身の助動詞「る」連用形
接続助詞
君王
天子。ここでは漢の天子(実際は唐の玄宗のこと)を指す。
格助詞
そば
格助詞
在り ラ行変格活用動詞「在り」終止形

 

⑦ 迴眸一笑百媚生
  ひとみめぐらして一笑いっしょうすれば 百媚ひゃくびしょう
【訳】瞳をくるりと回してひとたび笑えば、数多くの色っぽさが生まれる

ひとみ
格助詞
迴らして くるりと回す
一笑すれば ひとたび笑えば
百媚 百の(数多く、様々の)色っぽさ
生ず 生まれる

楊貴妃に視線を送られ「ニコッ」とされたら、みんなその色気にメロメロになっちゃうということですね。すごい…

 

⑧ 六宮粉黛無顔色
  六宮りくきゅう粉黛ふんたい 顔色がんしょく
【訳】後宮にいる美しく化粧をした女性たちは(楊貴妃の美しさに)圧倒されて手も足も出ない

六宮
後宮のこと。天子の皇后や后たちがいる宮殿を指す。
格助詞
粉黛
おしろいと眉墨のこと。そこから美しく化粧することを表す。
顔色無し
顔色がない → 圧倒されて手も足も出ないことを表す

後宮にいる美しく化粧をした人たちでさえも、楊貴妃の前では見劣りすると言っています。

 

続き:春寒くして欲を賜ふ華清の池~

この記事を書いた人
あずき

40代、一児の母
通信制高校の国語教員

生徒が「呪文にしか見えない」という古文・漢文に、少しでも興味を持ってもらえたらと作品についてとことん調べています。

自分の生徒には直接伝えられるけど、
聞きたくても聞けない…などと困っている方にも届けたくて、ブログを始めました。

≫詳しいプロフィールはこちら

あずきをフォローする
漢文
シェアする
あずきをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました