王翰「涼州詞」現代語訳・解説|豪華な酒宴の裏に隠された思い

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はじめに

作者・王翰(687-726頃)
若くして進士に合格した秀才。時の宰相であるちょうえつに手厚い待遇を受けた。しかし、張説の失脚と酒好きで奔放な性格も相まって、左遷される。
漢詩は壮大で力強いものであった。

王翰「涼州詞」現代語訳・解説

この詩が読まれた背景  

1. 漢詩の世界でのトレンド

「涼州歌」に歌詞をつけたものが、今回の「涼州詞」です。「涼州」は、現在の甘粛省に位置し、当時の唐と西域(シルクロード方面)を結ぶ重要な拠点でした。
同時に、異民族との戦いが絶えない、最も過酷な国境最前線でもありました。
多くの詩人が戦争などを含む辺境での生活などを題材にして、過酷な辺境生活を詠みました。これらは「辺塞へんさい詩」と呼ばれます。

2. 作者自身の経験

辺境の地について読むのが、詩人たちのトレンドであったものの、軍の仕事に携わったこともなく、現地の様子を知らない貴族が作っていました。
その後、軍の仕事に携わった詩人の作品が広まり、辺塞詩の世界が深まったと言われています。
作者である王翰は、駕部がぶ員外郎いんがいろうという役職についた経験がありました。
駕部とは、軍事に関する部署で、武器などから兵士の食料といった軍需用品や、それを運搬したりする馬を管轄する部署です。
王翰自身が戦地に赴いたかは不明ですが、物資を管理しながら戦地の状況を把握したり、実際に耳にすることもあったのかもしれません。
そのことによって、この「涼州詞」はより人の心をうつ作品になったと考えられます。

では、これらを踏まえて本文を見ていきましょう。 

 

白文・書き下し文(読み仮名付き)・現代語訳・語句解説 

題名:涼州りょうしゅう

涼州詞 涼州の地で流行った曲につけられた歌詞
涼州 地名

① 葡萄美酒夜光杯
どうしゅ こうはい

葡萄の美酒 美味しい葡萄酒、ワインのこと
夜光の杯
かんしゅく省の特産の玉で作られた酒杯のこと。のちに西域から伝わったガラスの杯も指すようになった。

【訳】美味しい葡萄酒を夜光の杯に注ぐ

 

② 欲飲琵琶馬上催
まんとほっして琵琶びわ じょううなが

飲ま (ワインを)飲む
んと欲して ~しようとして
琵琶 西域の楽器。馬に乗って弾く。
馬上 馬の上
格助詞
催す
促す、せきたてる ※ここでは、酒を飲むように促し酒宴を盛り上げるという意味

【訳】(葡萄酒を)飲もうとすると馬の上からは琵琶(の音色)が馬の上で(酒を飲むようにと)促す

 

③ 酔臥沙場君莫笑
じょうす 君笑きみわらふことかれ

酔ひて 酔って
沙場
砂漠のこと。異民族との戦場となっていた
格助詞
臥す 横になる、寝転がる
君、あなた ※ここでは読者に対して呼び掛けていると捉えた
笑ふこと 笑う
莫かれ 【禁止】~するな

【訳】酔って砂漠に横になっても、君は笑わないでくれ

これまでの異国情緒が漂う、うっとりとした夜の酒宴だと思っていましたが、違うようですね…

高級品であったワインをきれいなガラスの杯に注ぎ、琵琶で盛り上げながらガンガン飲むのは、どのような思いがあるか分かりますか?

戦いや死への不安を忘れるために、酒をあおるしかないという思いなのではないでしょうか?

その通りです。
次の句からも、明日はどうなるかわからない不安を常に抱えている様子がうかがえます。

④ 古来征戦幾人回
らい 征戦せいせん 幾人いくにんかえ

古来 古くから、今まで
征戦 戦地へ行く
幾人か どれほどの人数が
回る 戻る、帰る

【訳】今まで戦地へ行った(人たちのうち)どれほどの人が帰ってきただろうか(、いや帰ってきていない)。

 

詩の形式・押韻 

この詩の形式は、七言絶句です。   

 押韻は、第一句末の「杯 hai」、第二句末の「催 sai第四句末「回 kaiになります。

 

まとめ 

いかがでしたでしょうか?

今回は、王翰の「涼州詞」について解説をしました。

  • 異国情緒あふれる最高級の酒と器、そして酒宴を盛り上げる琵琶の音色

  • 異国情緒が漂う豪華な酒宴は、実は一時的に死への恐怖を忘れるためであった

翰は、戦地にいる兵士たちが「恐怖と戦いながら、己を奮い立たせて頑張ってくれている」と皆に伝えたかったのかもしれませんね。

みなさんはどのように感じましたか?

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この記事を書いた人
あずき

40代、一児の母
通信制高校の国語教員

生徒が「呪文にしか見えない」という古文・漢文に、少しでも興味を持ってもらえたらと作品についてとことん調べています。

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