更級日記「物語」現代語訳・解説|念願の源氏物語を手に入れる

古文

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今回は更級日記から「物語」を現代語訳・解説していきます。

源氏物語を読みたい気持ちが強すぎるがあまり、薬師仏まで作ってしまう作者。

今回はその作者がついに「源氏物語」と出会います。

念願の物語を手に入れた作者が何を語るのか?

注目して読んでいきましょう。

 

 

「物語」現代語訳・品詞分解・解説

それでは早速本文を読んでいきましょう。

 

「物語」本文・品詞分解・現代語訳

かくのみ思ひおもいくんじたるを、こころなぐさと、心苦こころぐるしがりて、はは物語ものがたりなどもとめて給ふたもうに、げにおのづからなぐさみゆく。

語句 品詞・用法・意味
かく 副詞(このように)
※乳母の死や藤原行成の娘が亡くなったことで、作者は悲しみに暮れていた。
のみ 強調の副助詞(ひたすら~いる)
思ひくんじ サ行変格活用動詞「思ひくんず」連用形(ふさぎこむ)
たる 存続の助動詞「たり」連体形
を、 格助詞
名詞(気持ち、感情)
係助詞
慰め マ行下二段活用動詞「慰む」未然形(心を晴らす)
意志の助動詞「む」終止形
と、 格助詞
心苦しがり ラ行四段活用動詞「心苦しがる」連用形(気遣う)
て、 接続助詞
母、 名詞
物語 名詞
など 副助詞
求め マ行下二段活用動詞「求む」連用形(探し求める)
接続助詞
見せ サ行下二段活用動詞「見す」連用形(見せる)
給ふ 尊敬のハ行四段活用補助動詞「給ふ」連体形
作者→母への敬意
に、 接続助詞
げに 副詞(本当に)
おのづから 副詞(自然と)
慰みゆく。 カ行四段活用動詞「慰みゆく」終止形(心が晴れていく)

【訳】このように(私が)ひたすらふさぎこんでいるので、心を晴らそうと、気遣って、母が物語などを探し求めてお見せになるので、本当に自然と心が晴れていく。

藤原行成の姫君…書が素晴らしく、作者は憧れていた。
父が頼んでくれたことによって、彼女と交流ができるようになった。
※父の孝標にとって藤原行成は雲の上の存在であった。
緊張しながらも娘の為に頑張ってくれたのだと推測できる。
姫君は病弱であった。
 
 

むらさきのゆかりをて、つづききのまほしくおぼゆれど、ひとかたなどもえせず。

紫のゆかり 名詞(源氏物語の「若紫」)
格助詞
マ行上一段活用動詞「見る」連用形
て、 接続助詞
続き 名詞(続き)
格助詞
マ行上一段活用動詞「見る」未然形
まほし 希望の助動詞「まほし」連用形(~たい)
おぼゆれ ヤ行下二段活用動詞「おぼゆ」已然形(思われる)
接続助詞
人語らひ 名詞(人に相談すること)
など 副助詞
係助詞
副詞※え~ず(~できない)
サ行変格活用動詞「す」未然形
打消しの助動詞「ず」終止形

【訳】源氏物語の「若紫」の巻などを見て、続きが見たいと思われるけれども、人に相談することもできない。

 

たれもいまだみやこなれぬほどにて、えつけず。

代名詞
係助詞
いまだ 副詞(まだ)
名詞
なれ ラ行下二段活用動詞「なる」未然形(見つける)
打消の助動詞「ず」連体形
ほど 名詞(様子)
断定の助動詞「なり」連用形
て、 接続助詞
副詞※え~ず(~できない)
見つけ カ行下二段活用動詞「見つく」未然形(見つける)
ず。 打消の助動詞「ず」終止形

【訳】誰もまだ都に慣れていない様子であるので、見つけることができない。

 

いみじくこころもとなく、ゆかしくおぼゆるままに、この源氏げんじ物語ものがたりいちまきよりしてみなたまと、こころのうちにいのる。

いみじく シク活用形容詞「いみじ」連用形(とても※程度が良くても悪くても使用する)
心もとなく、 ク活用形容詞「心もとなし」連用形(待ち遠しくてじれったい)
ゆかしく シク活用形容詞「ゆかし」連用形(見たい※ここでは「読みたい」と訳)
おぼゆる ヤ行下二段活用動詞「おぼゆ」連体形(思われる)
ままに、 名詞「まま」+格助詞「に」(~なので)
この 代名詞「こ」+格助詞「の」
源氏の物語、 源氏物語
一の巻 名詞(第一巻)
より 格助詞
サ行変格活用動詞「す」連用形
接続助詞
みな 名詞(全て)
見せ サ行下二段活用動詞「見す」連用形(見せる)
給へ 尊敬のハ行四段活用補助動詞「給ふ」命令形
作者→仏への敬意
と、 格助詞
心のうち 名詞「心」+格助詞「の」+名詞「うち」(心の中)
格助詞
祈る。 ラ行四段活用動詞「祈る」終止形

【訳】とても待ち遠しくてじれったく、読みたいと思われるので、「この源氏物語を第一巻から全てお見せください」と心の中で祈る。

 

源氏物語への思いが強すぎて、また祈っちゃってますね。

「門出」では思うがあまり、等身大の薬師仏を作ってひたすらお祈りしていましたね。

 

 

 

おや太秦うずまさにこもりたまるにも、異事ことごとなくこのことをもうして、ままにこの物語ものがたり見果みはおもど、えず。

名詞
格助詞
太秦 名詞(京都にある太秦寺。現在の広隆寺のこと)
格助詞
こもり ラ行四段活用動詞「こもる」連用形
給へ 尊敬のハ行四段活用補助動詞「給ふ」連用形
作者→親への敬意
存続の助動詞「る」連体形
格助詞
も、 係助詞
異事 名詞(別のこと、他のこと)
なく ク活用形容詞「なし」連用形
このこと 名詞(※「源氏物語を第一巻から読ませてください」と仏に祈ったことを指す)
格助詞
申し 謙譲の作業四段活用動詞「申す」連用形(お願いする。お頼みする)
て、 接続助詞
出で ダ行下二段活用動詞「出づ」未然形
仮定の助動詞「む」連体形(~たら)
ままに 名詞「まま」+格助詞「に」(~とすぐに)
この物語 名詞(※源氏物語のことを指す)
見果て タ行四段活用動詞「見果つ」連用形(最後まで見る)
意志の助動詞「む」終止形
格助詞
思へ ハ行四段活用動詞「思ふ」已然形
ど、 逆接の接続助詞
マ行上一段活用動詞「見る」連用形
ア行下二段活用補助動詞「う」未然形(~することができる)
ず。 打消の助動詞「ず」終止形

【訳】親が太秦寺に泊まり込みされるときも(お供をして)、他のことはさしおいて、このことをお願いして、(ここを)出たらすぐにこの物語を最後まで見ようと思うけれども、見ることができない。

 

いと口惜くちおしくおもなげかるるに、ばなるひと田舎いなかよりのぼりたるところわたいたれば、

いと 副詞(大変。非常に)
口惜しく シク活用形容詞「口惜し」連用形(残念だ。悔しい)
思ひ嘆か カ行四段活用動詞「思ひ嘆く」未然形(悲しく思う)
るる 自発の助動詞「る」連体形(自然と~される、~せずにはいられない)
に、 格助詞(~時)
をば 名詞
なる 断定の助動詞「なり」連体形
名詞
格助詞
田舎 名詞
より 格助詞
上り ラ行四段活用動詞「上る」連用形(上京する)
たる 完了の助動詞「たり」連体形
名詞
格助詞
渡い サ行四段活用動詞「渡す」連用形「渡し」のイ音便化したもの(行かせる)
たれ 完了の助動詞「たり」已然形
ば、 接続助詞
※已然形+ば…原因理由(~ので)

【訳】大変残念で悲しいと思わずにはいられないときに、おばである人が田舎から上京してきた所に(親が私を)行かせたので、

 

「いとうつくしうなりにけり。」など、あはれがり、めづらしがりて、かえるに、

「いと 副詞(大変。非常に)
うつくしう シク活用形容詞「うつくし」連用形「うつくしく」のウ音便化(かわいらしい。美しい。きれいだ。立派だ)
生ひなり ラ行四段活用動詞「生ひなる」連用形(成長する)
完了の助動詞「ぬ」連用形
けり。」 詠嘆の助動詞「けり」終止形
など、 副助詞
あはれがり、 ラ行四段活用動詞「あはれがる」連用形(しみじみと感慨深く思う。感動する)
めづらしがり ラ行四段活用動詞「めづらしがる」連用形(珍しく思う。すばらしいと思う)
て、 接続助詞
帰る ラ行四段活用動詞「帰る」連体形
に、 格助詞

【訳】「本当にかわいらしく成長したなぁ」などと、感動して、すばらしいと思って、帰る時に、

 

「うつくし」の解釈に、悩んだ方もいるかもしれませんね。

ここでは久しぶりに会った親戚のおばちゃんに「あら~ちょっと見ない間に、すっかりかわいくなっちゃって」という感じです。

「物語」は「門出(作者が13歳だという記述あり)」の翌年のことを描いたもの。
年齢は13歳~14歳だと考えられる。
 

なにをかたてまつらむ。まめまめしきものは、まさなかりなむ。ゆかしくしたまなるものをたてまつらむ。」とて、

代名詞
格助詞
疑問の係助詞
奉ら 謙譲のラ行四段活用動詞「奉る」未然形(差し上げる)
をばなる人→作者への敬意
む。 意志の助動詞「む」連用形※係り結び
まめまめしき シク活用形容詞「まめまめし」連体形(実用的だ。日常的だ)
もの 名詞
は、 係助詞
まさなかり ク活用形容詞「まさなし」連用形(良くない。不都合だ)
強意の助動詞「ぬ」未然形
む。 推量の助動詞「む」終止形
ゆかしく シク活用形容詞「ゆかし」(見たい)
サ行変格活用動詞「す」連用形
給ふ 尊敬のハ行四段活用補助動詞「給ふ」終止形
をばなる人→作者への敬意
なる 伝聞の助動詞「なり」連体形(~だそうだ。~ということだ)
もの 名詞
格助詞
奉ら 謙譲のラ行四段活用動詞「奉る」未然形(差し上げる)
をばなる人→作者への敬意
む。」 意志の助動詞「む」終止形
とて 格助詞「と」+接続助詞「て」(~と言って)

【訳】「何を差し上げましょうか。実用的なものは、良くないでしょう。見たがっていらっしゃると聞いているものを差し上げましょう。」と言って、

 

源氏げんじ五十余巻ごじゅうよまきひつりながら、ざい中将ちゅうじょう、とぎみ、せりか、しらら、あさうづなどい物語ものがたりども、一袋ひとふくろれて、

源氏 名詞
格助詞
五十余巻 名詞(五十数巻)
名詞(蓋つきの木箱)
格助詞
入り ラ行四段活用動詞「入る」(入る)
ながら、 接続助詞(~のままで)
ざい中将 名詞(在五中将の物語=在原業平の物語=伊勢物語と言われている)
とほぎみ、
せりかは、
しらら、
あさうづ
いずれも書名だけが伝わり、本文が現存していない散在物語
など 副助詞
いふ ハ行四段活用動詞「いふ」連体形
物語 名詞
ども 接尾語(複数を表す)
一袋 名詞(一つの袋)
取り入れ ラ行下二段活用動詞「取り入る」連用形(取って入れる)
て、 接続助詞

【訳】源氏物語の五十数巻を櫃に入れたままで、「ざい中将」「とほぎみ」「せりかは」「あさうづ」などと言う物語たちを、一つの袋に取って入れて(くださって)、

 

かえ心地ここちのうれしさぞいみじきや。

ア行下二段活用動詞「得」連用形(手に入れる。自分のものにする)
接続助詞
帰る ラ行四段活用動詞「帰る」連体形
心地 名詞(気持ち)
格助詞
うれしさ 名詞(うれしさ)
強調の係助詞
いみじき シク活用形容詞「いみじ」連体形(はなはだしい。とても)
※係り結び
詠嘆の間投助詞(~だなあ)

【訳】手に入れて帰る気持ちの嬉しさは並々ではないものだなぁ。

 

はしるはしる、わづかにつつこころこころもとなくおも源氏げんじを、いちまきよりして、ひともまじらず几帳きちょうのうちにうちして、でつつ心地ここちきさきくらいなににかはせむ。

はしるはしる 副詞(胸をわくわくさせながら)
わづかに ナリ活用形容動詞「わづかなり」連用形(ほんの少し)
マ行上一段活用動詞「見る」連用形
つつ 反復の接続助詞(~しては)
名詞(中心)
係助詞
ア行下二段活用動詞「得」連用形
打消の助動詞「ず」連用形
※心も得ず 【連語】理解できない。よくわからない。
心もとなく ク活用形容詞「心もとなし」連用形(じれったい。待ち遠しい)
思ふ ハ行四段活用動詞「思ふ」連体形
源氏 名詞(源氏物語)
を、 格助詞
一の巻 名詞
より 格助詞
サ行変格活用動詞「す」連用形(※ここでは「し始める」と解釈)
て、 接続助詞
名詞
係助詞
まじら ラ行四段活用動詞「まじる」未然形
打消の助動詞「ず」連用形
※まじらず 【連語】邪魔をされる
几帳 名詞(布製のついたて、部屋の仕切り)
格助詞
うち 名詞(中)
格助詞
うち臥し サ行四段活用動詞「うち臥す」連用形(横になる)
て、 接続助詞
引き出で ダ行下二段活用動詞「引き出づ」連用形(取り出す)
つつ 接続助詞(~しては)
見る マ行上一段活用動詞「見る」連体形
心地、 名詞(気持ち)
后の位 名詞
係助詞
代名詞
格助詞
反語・疑問の係助詞(~か)
強調の係助詞(~なのか、いや~だろう)
サ行変格活用動詞「す」未然形
む。 意志の助動詞「む」連体形
※何にかはせむ 【連語】いったい何のためになろうか、いや何にもならない

【訳】胸をわくわくさせながら、ほんの少し見ては(物語の中心)を理解できず、じれったく思っていた源氏物語を、第一巻から読み始めて、邪魔をされず几帳の中で横になって、(櫃から)取り出しては読む気持ちは、后の位も一体何のためになろうか、いや何にもならない。

 

ひる日暮ひぐらし、よるめたるかぎり、ちかくともして、これをるよりほかのことなければ、

名詞
格助詞
日暮らし 名詞(朝から晩まで。一日中。)
名詞
格助詞
名詞
格助詞
覚め マ行下二段活用動詞「覚む」(目が覚める)
たる 存続の助動詞「たり」連体形
限り、 名詞(あいだ、うち)
名詞(あかり)
格助詞
近く ク活用形容詞「近し」連用形
ともし サ行四段活用動詞「ともす」連用形(あかりをつける)
て、 接続助詞
これ 代名詞(源氏物語のこと)
格助詞
見る マ行上一段活用動詞「見る」連体形
より 格助詞
ほか 名詞(それ以外)
格助詞
こと 名詞
なけれ ク活用形容詞「なし」已然形
ば、 接続助詞

【訳】昼は一日中、夜は目が覚めている間、あかりを近くにつけて、これを見る以外のことがないので、

 

おのづからなどは、そらにおぼえかぶを、いみじきことにおもに、

おのづから 副詞(自然と)
など 副助詞(~など)※ここでは物語の文章や人物のことを指す
は、 係助詞
そらに ナリ活用形容動詞「そらなり」連用形(物を見ないで。暗記していて)
おぼえ浮かぶ バ行四段活用動詞「おぼえ浮かぶ」連体形(思い出される)
を、 格助詞
いみじき シク活用形容詞「いみじ」連体形(すばらしい)
こと 名詞
格助詞
思ふ ハ行四段活用動詞「思ふ」連体形
格助詞

自然と(物語の文章や人物)などを、暗記していて思い出されるのを、すばらしいことだと思うと、

 

ゆめに、いときよげなるそうの、なる袈裟けさたるがて、

名詞
格助詞
いと 副詞(体操。大変)
清げなる ナリ活用形容動詞「清げなり」連体形(すっきりとして美しい)
名詞
の、 同格の格助詞
黄なる ナリ活用形容動詞「黄なり」連体形(黄金色の)
名詞(生地)
格助詞
袈裟 名詞(法衣)
カ行上一段活用動詞「着る」用
たる 存続の助動詞「たり」連体形
格助詞
カ行変格活用動詞「来」連用形
て、 接続助詞

【訳】夢にたいそうすっきりとして美しい僧で、黄金色の生地の袈裟を着ている(僧が)出てきて、

 

法華経ほけきょうまきなら。」とれど、ひとにもかたらず、ならはむわんともおもかけず、物語ものがたりのことをのみこころにしめて、

法華経五の巻 名詞(「妙法蓮華経」の第五巻
格助詞
疾く 副詞(早く)
習へ ハ行四段活用動詞「習ふ」命令形(経験して身につける。学ぶ)
格助詞
言ふ ハ行四段活用動詞「言ふ」終止形
格助詞
見れ マ行上一段活用動詞「見る」已然形
ど、 逆接の接続助詞
名詞
格助詞
係助詞
語ら ラ行四段活用動詞「語る」未然形(話す)
ず、 打消の助動詞「ず」連用形
習は ハ行四段活用動詞「習ふ」未然形
意志の助動詞「む」終止形
格助詞
係助詞
思ひかけ カ行下二段活用動詞「思ひかく」未然形(心にとめる)
ず、 打消の助動詞「ず」連用形
物語 名詞
格助詞
こと 名詞
格助詞
のみ 副助詞
名詞
格助詞
しめ マ行下二段活用動詞「しむ」連用形(関心を寄せる。浸る)
て、 接続助詞

【訳】「妙法蓮華経の第五巻を早く学びなさい。」と言う(夢を見たが)、(その夢のことを)人にも話さず、(法華経を)学ぼうとも心にとめないで、物語のことだけに浸って、

この夢の意味は?

「妙法蓮華経」の第五巻には竜王の娘が女人成仏を遂げた話が書かれています。

女人成仏とは、女性も男性同様に悟りを開いて仏になることができるというもの

そもそも法華経以外では女性は成仏できないとされていたが、この話によって女性が成仏できることが保証されたと言えます。

作者がこのような夢を見たのはどうして?

作者には「成仏をしたい」という思いがあったのに、現在は「源氏物語」に夢中になって悟りを開く学びを怠っていました。

そのことを指摘するような夢を見たということです。

 

われはこのごろわろきぞかし、さかりにならば、かたちもかぎりなくよく、かみもいみじくながくなりな

代名詞(私)
係助詞
このごろ 名詞(今)
わろき ク活用の形容詞「わろし」連体形(美しくない。見栄えがしない)
強調の係助詞
かし、 念押しの終助詞(~よ。~ね)
盛り 名詞(最盛期)
格助詞
なら ラ行四段活用動詞「なる」未然形
ば、 接続助詞
※もし~ならば
かたち 名詞(容貌)
係助詞
限りなく ク活用形容詞「限りなし」連用形(この上ない。最高だ)
よく、 ク活用形容詞「よし」連用形(美しい。きれいだ)
名詞
係助詞
いみじく シク活用形容詞「いみじ」連用形(とても)
長く ク活用形容詞「長し」連用形
なり ラ行四段活用動詞「なる」連用形
強意の助動詞「ぬ」未然形
む、 推量の助動詞「む」終止形

【訳】私は今は見栄えがしないことよ、もし女盛りになれば、容貌もこの上なく美しくなり、髪もとても長くなるだろう、

 

ひか源氏げんじ夕顔ゆうがお宇治うじ大将だいしょう浮舟うきふね女君おんなぎみうにこそあらめ、と思ひける心、まづいとはかなく、あさまし。

光の源氏 名詞(光源氏)
格助詞
夕顔 名詞(源氏物語に登場する女性。光源氏に愛された女性の一人。)
宇治の大将 名詞(源氏物語の宇治十帖に登場する光源氏の子供。名は薫。)
格助詞
浮舟の女君 名詞(薫に愛された女性)
格助詞
やうに 例示の助動詞「やうなり」連用形(~のようだ)
こそ 強調の係助詞
あら ラ行変格活用動詞「あり」未然形
め、 意志の助動詞「む」已然形※係り結び
格助詞
思ひ ハ行四段活用動詞「思ふ」連用形
ける 過去の助動詞「けり」連体形
心、 名詞
まづ 副詞(一向に。どうにも)
いと 副詞(大変。とても)
はかなく、 ク活用形容詞「はかなし」連用形(たよりない、むなしい)
あさまし。 シク活用「あさまし」終止形(あきれた)

【訳】光源氏(に愛された)夕顔、宇治の大将(に愛された)浮舟の女君のようでありたい、と思う気持ちは、どうにも頼りなく、あきれたことだ。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回は、源氏物語を読みたくて恋焦がれていた作者が、念願叶って源氏物語を手に入れるお話でした。

薬師仏を作ってまで、お祈りした甲斐があったというものです。

一日中夢中になって読みふけっていたある日に、夢を見ます。

その夢は怠けた作者を諫める内容でしたが、作者は行動を改める様子はないようです。

みなさんには、そこまで夢中になるものはありますか?

この記事を書いた人
あずき

40代、一児の母
通信制高校の国語教員

生徒が「呪文にしか見えない」という古文・漢文に、少しでも興味を持ってもらえたらと作品についてとことん調べています。

自分の生徒には直接伝えられるけど、
聞きたくても聞けない…などと困っている方にも届けたくて、ブログを始めました。

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コメント

  1. うさぎん より:

    学校のテスト対策で調べていたところこのサイトに辿り着きました。
    時々ある会話文のおかげもあり、本当に現代文の物語作品のように読み入ってしまいました。
    授業では古文が全くわからず退屈なのですが、古文をここまで楽しめたのは初めてです。
    続きも気になるので読み進めてみたいと思います。
    ありがとうございます!

    • あずき あずき より:

      こちらこそ、嬉しいコメントをありがとうございます!
      励みになります。
      今後ともお役に立てるように頑張ります。

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