枕草子「すさまじきもの①」現代語訳・解説|多角的な観察眼!清少納言の「興ざめなもの」

古文

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はじめに

今回は『枕草子』の「すさまじきもの」の解説をします。
「すさまじ」とは「興ざめだ」という意味です。
興ざめとは「興=楽しげな気分や盛り上がり」が「さめて」しまうことです。
清少納言は様々な観点から、「興ざめなもの」を語っています。

現代語訳を見ながら、しっかりとおさえていきましょう。

 

枕草子
成立:平安時代中期
作者:清少納言
ジャンル:随筆
内容:宮仕えをしていた時の宮中での出来事や、人間模様、季節の自然などを鋭い感性で描いている。「をかし」の文学と言われる。
やっぱり、この本の訳はわかりやすいです!「清少納言になりきって」いるところが、わかりやすさのポイントなのでしょう。

※この解説に登場する「清少納言」のセリフは、「あずき的解釈」となっておりますので考慮の上、ご覧ください。

枕草子「すさまじきもの①」現代語訳・解説

すさまじきもの。ひるほゆるいぬはるじろさんがつ紅梅こうばいきぬ
興ざめなもの。昼に吠える犬。春の網代。三、四月の紅梅かさねの着物。

すさまじき
シク活用の形容詞「すさまじ」(興ざめである、しらける)連体形
もの、 名詞
名詞
ほゆる
ヤ行下二段活用動詞「ほゆ」(吠える)連体形
犬。 名詞(ここでは番犬を指している)
名詞
格助詞
網代。
名詞(氷魚:鮎の稚魚を捕るための仕掛け。冬に川に仕掛けるものだが、ここでは春まで残っている様子のことを言っている)
三、四月 名詞
格助詞
紅梅
名詞(かさねの色目の一つ。表が紅で裏が紫。11月~2月ころに着られる)
格助詞
衣。 名詞(着物)
名詞
死に ナ行変格活用動詞「死ぬ」連用形
たる 完了の助動詞「たり」連体形
牛飼ひ。 名詞(牛を飼う人のこと)
清少納言
清少納言

これはね、「時機外れ」だから「すさまじ」なのよ。
昼ほゆる犬…番犬ならば夜に吠えてほしいところなのに、昼に吠える
春の網代…冬に鮎の稚魚を捕まえるために川に仕掛けるものだけど、春に仕掛けてあってもねぇ
三、四月の紅梅の衣…11月~2月ころに着るかさねなのに、3~4月に着るのはねぇ

 

うしにたるうし乳児ちごくなりたるうぶおこさぬびつ地火炉じかろ
牛が死んだ牛飼い。乳飲み子が亡くなった産屋。火をつけない角火鉢、いろり。

名詞
死に ナ行変格活用動詞「死ぬ」連用形
たる 完了の助動詞「たり」連体形
牛飼ひ。 名詞(牛を飼う人のこと)
乳児 名詞(乳飲み子、赤ん坊)
亡くなり ラ行四段活用動詞「亡くなる」連用形
たる 完了の助動詞「たり」連体形
産屋。 名詞(出産のための建物や部屋のこと)
名詞
おこさ
サ行四段活用動詞「おこす」(火をつける、火をおこす)未然形
打消の助動詞「ず」連体形
炭櫃、
名詞(角火鉢:四角い形の枠の中に灰と炭を入れて燃やす火鉢)
地火炉。 名詞(いろり)
清少納言
清少納言

次はね、「あるべきものがないために役立たずになってしまった」ために「すさまじ」なものなの。
牛死にたる牛飼ひ…世話をするはずの牛がいない
乳児亡くなりたる産屋…赤ちゃんのための産屋なのにね
火おこさぬ炭櫃、地火炉…火がついていないと役に立たない

 

博士はかせのうちつづおんな 生ませたる。方違かたたがきたるに、あるじせぬところ。まいて節分せちぶんなどは、いとすさまじ。
博士が次々と続いて女の子を産ませたこと。方違えに行ったのに、もてなしをしないところ。まして、節分などは、大変興ざめだ。

博士
名詞(大学寮や陰陽寮などの官職の一つ。学問などの教官で、男子が世襲するものであった)
格助詞
うち続き
カ行四段活用動詞「うち続く」(次々と続く)連用形
女児 名詞(女の子、女児)
生ま マ行四段活用動詞「生む」未然形
使役の助動詞「す」連用形
たる。 完了の助動詞「たり」連体形
方違へ
名詞(陰陽道に基づいて、災いを避けるために不吉な方角に直接向かわずに遠回りをした。前夜に他の場所に移って、目的の方角を変える。方違え先は、親戚や知人の家・部下・寺などだった。当時は方違えでやってきた客人はもてなすというのが当たり前だった)
格助詞
行き カ行四段活用動詞「行く」連用形
たる 完了の助動詞「たり」連体形
に、 接続助詞
あるじせ
サ行変格活用動詞「あるじす」(客人をもてなす)未然形
打消の助動詞「ず」連体形
所。 名詞
まいて 副詞「まして」のイ音便
節分
名詞(四季の変わり目のこと。「節分違え」は節分の日に恵方にある家に移動しなければならないという風習があった。)
など 副助詞
は、 係助詞
いと 副詞(大変、とても)
すさまじ。
シク活用の形容詞「すさまじ」終止形
清少納言
清少納言

今度は「期待外れ」で「すさまじ」なものね。
博士のうち続き女児生ませたる…女の子は教官にはなれないの。学問で身を立てるのは、男って決まってるのよ、この時代は。世襲制なのに、女の子ばかり産まれるのは、期待外れってことになっちゃうわね。
方違えに行きたるに、あるじせぬ所…方違えに行ったら、もてなすのがルールよ。それなのにそっけなくされたり、ごちそうもないとホントがっかりしちゃうわ。ましてや節分っていうビックイベントだったりしたら、マジ最悪だわ。

 

ひとくによりおこせたるふみものなき。
田舎から送ってくる手紙にお土産がないこと。

名詞 ※人の国…日本において都以外の国。田舎のこと
格助詞
名詞
より 格助詞
おこせ
サ行下二段活用動詞「おこす」(送ってくる、よこす)連用形
たる 完了の助動詞「たり」連体形
名詞(手紙)
格助詞
名詞(贈り物。当時は地方からの手紙には、地方の名産品などを土産として添えるという習慣があった)
なき。 ク活用の形容詞「なし」連体形

 

きょうのをもさこそおもらめ、されどそれは、ゆかしきことどもをもあつめ、にあることなどをもけば、いとよし。
都からの手紙もそう思うだろう、しかしそれは、(田舎の人が)知りたい様々なことを書き集め、世の中の出来事などをも知ることができるので、とても良い。

名詞(都、京都)
格助詞
格助詞
係助詞
副詞(そのように)
こそ 係助詞 ※結び:らめ
思ふ ハ行四段活用動詞「思ふ」終止形
らめ、
現在推量の助動詞「らむ」(~ているだろう)已然形【係り結び】
されど 接続詞(しかし)
それ 代名詞
は、 係助詞
ゆかしき
シク活用の形容詞「ゆかし」(知りたい)連体形
ことども 名詞(様々なこと)
格助詞
書き集め、
マ行下二段活用動詞「書き集む」(書き集める)連用形
名詞(世の中)
格助詞
ある ラ行変格活用動詞「あり」連体形
こと 名詞
など 副助詞
格助詞
係助詞
聞け カ行四段活用動詞「聞く」(伝え聞く、知る)已然形
ば、 接続助詞
いと 副詞
よし。 ク活用の形容詞「よし」(良い)終止形
清少納言
清少納言

次は手紙の「すさまじ」いことね。
人の国よりおこせたる文のものなき…地方からの手紙には、名産とかお土産をつけるのが普通でしょ?何もないなんてがっかりだわ~

都からの手紙は、内容が面白いんだから贈り物がついてなくても良いのよ~なんて、田舎ディスってるんですか!?
感じ悪いですよ

 

ひとのもとにわざときよげにきてやりつるふみかえりごと、いまぬらかし、あやしうおそきとつほどに、
人のところに特別にきちんと書いて送った手紙の返事が、今持ってきているだろうよ、(でも)異常に遅いことだと待つうちに、

名詞
格助詞
もと 名詞(ところ)
格助詞
わざと 副詞(特別に)
清げに
ナリ活用の形容動詞「清げなり」(きちんとしている)連用形
書き カ行四段活用動詞「書く」連用形
接続助詞
やり
ラ行四段活用動詞「やる」(手紙を送る)連用形
つる 完了の助動詞「つ」連体形
名詞
格助詞
返りごと、 名詞(返事)
名詞
係助詞
持て来
カ行変格活用動詞「持て来」(持ってくる)連用形
強意の助動詞「ぬ」終止形
らむ
現在推量の助動詞「らむ」(~ているだろう)終止形
かし、 終助詞(~よ)
あやしう
シク活用の形容詞「あやし」(異常だ)連用形
遅き ク活用の形容詞「遅し」(遅い)連体形
格助詞
待つ タ行四段活用動詞「待つ」連体形
ほど 名詞(うち、間)
に、 格助詞

 

ありつるふみぶみをもむすびたるをもいときたなげにりなし、ふくだめて、うえきたりつるすみなどえて、
先ほどの手紙を、それが立て文でも結び文であっても、とても汚げに取り扱い、けば立たせ、(結び文の結び目の)上に引いていた墨なども消えて、

あり
ラ行変格活用動詞「あり」連用形 ※ありつる…先ほどの
つる 完了の助動詞「つ」連体形
文、 名詞
立て文
名詞(正式な書状の形式の一つ。手紙をらいと呼ばれる紙で包み、その上から白い紙で包み、上下を折りたたんでいる)
格助詞
係助詞
結び
バ行四段活用動詞「結ぶ」(結ぶ ※ここでは結び文のことを指す)連用形
たる 存続の助動詞「たり」連体形
格助詞
係助詞
いと 副詞
汚げに
ナリ活用の形容動詞「汚げなり」(汚い、見苦しい)連用形
取りなし、
サ行四段活用動詞「とりなす」(取り扱う)連用形
ふくだめ
マ行下二段活用動詞「ふくだむ」(けば立たせる)連用形
て、 接続助詞
名詞
格助詞
引き カ行四段活用動詞「引く」連用形
たり 存続の助動詞「たり」連用形
つる 完了の助動詞「つ」連体形
名詞
など 副助詞
消え ヤ行下二段活用動詞「消ゆ」連用形
て、 接続助詞

 

「おしまさざりけり。」もしは、「おおんものみとてれず。」とて、かえりたる、いとわびしくすさまじ。
「いらっしゃいませんでした。」もしくは、「御物忌みだと言って受け取らない。」と言って(使者が)持ち帰ったのは、とても情けなく興ざめである。

「おはしまさ
サ行四段活用動詞「おはします」(いらっしゃる)未然形【尊敬】使者→手紙の相手への敬意
ざり 打消の助動詞「ず」連用形
けり。」 過去の助動詞「けり」終止形
もしは、 接続詞(もしくは、あるいは)
「御物忌み
名詞(不吉なことがあったり、不幸な災難があった場合や、不吉な夢を見たり、暦の凶日の場合に行われる。物忌みの場合は、家に籠もって他者との関わりを断つ)
とて 格助詞
取り入れ
ラ行下二段活用動詞「取り入る」(受け取る)未然形
ず。」 打消の助動詞「ず」終止形
格助詞
言ひ ハ行四段活用動詞「言ふ」連用形
て、 接続助詞
持て帰り
ラ行四段活用動詞「持て帰る」(持ち帰る)連用形
たる、 完了の助動詞「たり」連体形
いと 副詞
わびしく
シク活用の形容詞「わびし」(情けない)連用形
すさまじ。 シク活用の形容詞「すさまじ」終止形
清少納言
清少納言

⑩せっかくきちんとキレイに書いて送った手紙なのに、待てど暮らせど返事は来ず…
やっと来たと思ったら、雑に扱われてボロボロ。結び目の墨も消えるくらいでさ。
「いなかった」とか「物忌みだ」とか理由をつけて受け取ってもらえなかったし、これは脈なしすぎて情けなくなってくるわ…

それはつらいですね…
それすらもネタにしちゃう、清少納言姉さんすごいっす!

 

続き:験者の、物の怪調ずとて~

この記事を書いた人
あずき

40代、一児の母
通信制高校の国語教員

生徒が「呪文にしか見えない」という古文・漢文に、少しでも興味を持ってもらえたらと作品についてとことん調べています。

自分の生徒には直接伝えられるけど、
聞きたくても聞けない…などと困っている方にも届けたくて、ブログを始めました。

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