はじめに
今回は、陶潜(陶淵明)の「桃花源記(桃花源の記)」について現代語訳と解説をしていきます。
この物語は、漁師が偶然見つけた桃源郷ー古代中国の理想郷を描いています。
【3分で分かる!桃花源記】
- あらすじ:漁師が川をさかのぼると、桃の花が咲き乱れる林に迷い込み、洞窟を抜けると理想郷「桃花源」が広がっていた。
- ポイント:村人たちは外界を知らず、平和に暮らしている。
漁師は再び訪れようとしたが、場所を特定できず、高尚の士も探し当てられなかった。 - 意味:自然と調和した理想郷=ユートピアの象徴。
「桃花源記(桃花源の記)」現代語訳・解説
書き下し文と現代語訳から、内容を分かりやすくするために解説をしていきます。
書き下し文・現代語訳・語句解説
晋の太元中、武陵の人魚を捕らふるを業と為す。
語句 | 意味/解説 |
晋 | 国名 |
太元 | 年号(孝武帝時代を指す) |
中 | ~の間、期間 |
武陵 | 地名(現在の湖南省常徳市の西側を指す) |
業 | 職業、なりわい |
為す | ~とする |

一応解説しますが、「武陵が人魚を捕らえる」訳ではないです(笑)
渓に縁りて行き、路の遠近を忘る。
谷川に沿って行くうちに、どれほどの道のりを進んできたのかも忘れてしまった。
語句 | 意味/解説 |
渓 | 谷川 |
縁りて | 沿って |
路 | 通り道 |
遠近を忘る | 遠いことと近いことを忘れる → どれくらい進んできたのかわからなくなったことを表す |

「魚を捕る」というと、日本では海での漁のイメージが強いですね。
しかし古代中国においては、黄河流域で釣りや漁が行われていました。
ボートのような船に乗って、川を進んだと想像できます。
忽ち桃花の林に逢ふ。
突然 桃の花の(咲いている)林に行き着いた。
語句 | 意味/解説 |
忽ち | 突然 |
桃花 | 桃の花 |
逢ふ | めぐり合う、偶然出会う |
岸を夾むこと数百歩、中に雑樹無し。
(その桃の林は川沿いの)岸をはさんで数百歩の距離にわたって続き、その中には他の木はなかった。
語句 | 意味/解説 |
夾む | はさむ |
雑樹 | いろいろの木(ここでは桃の木以外を指す) |

桃の木しか生えていない、不思議な場所に迷い込んだんですね。

「数百歩」とあるので少しわかりにくいですが、ボートでやってきたと想像すると、川の両岸に桃の木が数百歩程度の距離に生えていたということになります。
芳草鮮美、落英繽紛たり。
良い香りのする草は鮮やかで美しく、花びらは乱れ散っている。
語句 | 意味/解説 |
芳草 | 良い香りのする草 |
鮮美 | 鮮やかで美しいこと |
落英 | 散る花びら |
繽紛 | 乱れ散る様子 |
漁人甚だ之を異しみ、復た前み行きて、其の林を窮めんと欲す。
漁師はひどくこのことをあやしいと思い、さらに進んで行って、その林を行けるところまで行こうと思った。
語句 | 意味/解説 |
漁人 | 漁師 |
甚だ | ひどく |
之 | 「芳草鮮美」「落英繽紛」といった、桃の林の光景を指す |
異しみ | 変だと思う、あやしいと思う |
復た | 再び、もう一度 → ここでは「さらに」と訳 |
前み行き | 前に進んで行く |
窮め | 極める(ここでは「行けるところまで行く」という意味で解釈) |
んと欲す | ~しようとする |

漁師は、この現実離れした光景をあやしんでいます…

それで、林がどこまで続いているのか見てみようとしたということですね。
林水源に尽き、便ち一山を得たり。
林は谷川の水源のところで終わると、すぐに一つの山を見つけることができた。
語句 | 意味/解説 |
水源 | 川の根本のこと |
尽き | 終わる |
便ち | ~するとすぐに |
一山 | 一つの山 |
得 | 手に入れる(ここでは「見つけることができた」と解釈) |
たり | 完了の助動詞 |
山に小口有り、髣髴として光有るがごとし。
山には小さな穴があり、ほのかに光がさしているかのようだ。
語句 | 意味/解説 |
小口 | 小さな穴 |
髣髴として | ほのかに |
若し(ごとし) | ~のようだ |
便ち船を捨てて口より入る。
(漁師は)すぐに船をその場に置いて穴から入った。
語句 | 意味/解説 |
便ち | すぐに |
捨てて | 放り出す、(その場に)置いていく |
口 | 穴(前の文の「小口」を指す) |
初めは極めて狭く、纔かに人を通ずるのみ。
最初はとても狭く、やっと人が通るだけ(の狭さ)であった。
語句 | 意味/解説 |
初め | 最初(ここでは穴の入口付近を指す) |
極めて | 非常に、とても |
纔かに | やっと~するだけ |
人を通ずる | 人が通る |
復た行くこと数十歩、豁然として開朗なり。
さらに数十歩行くと、視界が大きく開けて明るくなった。
語句 | 意味/解説 |
復た | 「さらに」と訳 |
豁然 | 視界が大きく開ける様子 |
開朗 | 景色が広々と明るいこと |
なり | 断定の助動詞 |
土地平曠にして、屋舎儼然たり。
土地は平らかに開けていて、建物はきちんと整って(並んで)いる。
語句 | 意味/解説 |
平曠 | 平らかに開けている |
屋舎 | 建物、家屋 |
儼然 | きちんと整っている様子 |
たり | 存続の助動詞 |

ここからいよいよ舞台である村の様子です。
整い、栄えた村であることがわかる表現が続きます。
良田・美池・桑竹の属有り。
良い田畑・美しく立派な池・桑や竹のたぐいがある。
語句 | 意味/解説 |
良田 | 優れた田畑、良い田畑 |
美池 | 美しく立派な池 |
桑竹 | 桑と竹 |
属 | 類 |
阡陌交はり通じ、鶏犬相ひ聞こゆ。
田畑のあぜ道が縦横に通じ、鶏や犬の鳴き声があちこちから聞こえる。
語句 | 意味/解説 |
阡陌 | 縦横の道路のこと(ここでは田畑のあぜ道が縦横に通じている様子を表している) |
交はり通じ | 通じている |
鶏犬 | 鶏と犬(の鳴き声) |
相ひ | お互いに(ここでは「あちこちから」と訳) |
聞こゆ | 聞こえる |

「鶏犬相聞」というのは、老子が『小国寡民』で説いた 平和な理想の国の象徴 です。
村の家どうしが近い状態で並び、平和でのどかな田舎風景を表しています。
其中の往来種作する男女の衣著は、悉く外人のごとし。
語句 | 意味/解説 |
往来 | 行き来する |
種作 | 作物の種まきをする |
衣著 | 衣服 |
悉く | すべて |
外人 | ①異国の人②この村の外の人という解釈があるが、ここでは②として訳 |
ごとし(如) | ~のようだ |

「外人」については、①の「異国の人のようだ」と訳すと、「この現実離れした理想郷に住んでいる人たちは、異国の人のような漁師とは違った服装をしている」という解釈ができます。
また②の「この村の外の人=漁師自身を含む外の人たち」と訳すと、「この現実離れした理想郷に住んでいる人たちも、自分たちと服装は同じだ」と解釈できます。
黄髪垂髫、並怡然として自ら楽しむ。
語句 | 意味/解説 |
黄髪 | 白髪に黄色が混じった髪 → 老人を指す |
垂髫 | おさげ髪 → 子どもを指す |
並 | 皆 |
怡然 | 喜び楽しむ様子で、嬉しそうに |
自ら | 名詞(本人←ここでは老人と子どもを指す)として解釈 |
「みずから」や「おのずから」と読む
みずから…自分で(自分の意志で)
おのづから…自然と
と訳すのが一般的。
ここでは「みずから」と読んだ。
しかし「自分の意志で楽しむ」とは訳さず、老人や子どもを指す名詞として解釈し、「みずから」を明確には訳さなかった。

黄髪って金髪の異国の人のことを言っているのではないのですか?

この「黄髪」は「黄色がかった白髪」です。
ちなみに「黄髪垂髫」は老人と子どもを表す四字熟語です。

作者はなぜこのような村を描いたのでしょうか?

作者の陶淵明が生きた時代は戦乱の後、政治に対する失望などの社会不安があり、実際の社会とは正反対の理想郷を思い描いていたと言われています。
また理想郷については、先ほども触れたように老子の『小国寡民』に影響を受けていました。
漁人を見て、乃ち大いに驚き、従りて来たる所を問ふ。
語句 | 意味/解説 |
漁人 | 漁師 |
乃ち | そこで |
大いに | 非常に、とても |
従りて来たる所 | どこから来たのか ※「因りて来たる」と解釈し、桃花源にたどりついた理由や手段を指しているとした |
問ふ | 尋ねる |
「乃ち」の意味
「則ち」、「即ち」と比べて意味が取りにくいと言える。
乃ち①順接…そこで ②逆接…なんと ③強意…そのときこそ
①で訳すことが多く、ここでは②とするようだが、①でも意味は通る。
具に之に答ふ。
語句 | 意味/解説 |
具に | 詳しく |
之 | 前文の「所従来」という質問を指す |
答ふ | 答える |
便ち要へて家に還り、酒を設け鶏を殺して食を作る。
語句 | 意味/解説 |
便ち | すぐに |
要へて | ぜひ来てくれと誘う |
還り | 帰り |
設けて | 準備する |
食 | 食事 |
村中 此の人有るを聞き、咸来たりて問訊す。
語句 | 意味/解説 |
此の人 | 漁師のことを指す。 |
有る | いる |
咸 | 皆 |
問訊 | 挨拶をする |
自ら云ふ、「先世秦時の乱を避け、妻子・邑人を率ゐて、此の絶境に来たりて、復た出でず。遂に外人と間隔せり。」と。
語句 | 意味/解説 |
自ら | 自分から |
先世 | 先祖 |
秦時の乱 | 秦の時代、始皇帝が亡くなった時の戦乱を指す |
邑人 | 村人 |
率ゐて | 引き連れる |
此の絶境 | 絶境…人里離れた土地のこと 現在村人たちが住んでいるこの場所のこと |
復た~ず | 二度と~しない |
遂に | そうして |
外人 | 外部の人 |
間隔せり | 距離をと |

ここでの「外人」も「外部の人」と訳し、村の外の人を指しています。
問ふ、「今は是れ何の世ぞ。」と。
(村人が)尋ねることには、「今は何と言う時代か?」と。
語句 | 意味/解説 |
問ふ | 尋ねる |
是 | ~である ※英語のbe動詞のような役割 |
何の世 | 何時代、何と言う時代 |
ぞ | 終助詞(~か) |
乃ち漢有るを知らず、魏・晋に論無し。
なんとまあ(村人たちは)漢の時代があったことを知らず、魏や晋の時代については言うまでもない。
語句 | 意味/解説 |
乃ち | なんとまあ |
漢 | 国名(秦の次の王朝) |
魏 | 国名(漢の次の王朝の一つ ※魏・呉・蜀の三国が王朝だった) |
晋 | 国名(三国の時代の次の王朝) |
論無し | 言うまでもない |

「乃ち」を、ここでは「なんとまあ」と訳しているのですね。

そうです。
先ほど解説した②の解釈をしています。

村人たちは、本当に村の外のことは何も知らなかったのですね…

秦に続く漢の時代があったことを知らないので、その後に続いた魏や晋については知るはずがないと言っています。
此の人 一一為に具に聞く所を言ふ。
この人(=漁師)は一つ一つ(村人の)ために詳しく聞いたことを話した。
語句 | 意味/解説 |
此の人 | 漁師のこと |
一一 | 一つ一つ漏れなく |
為に | ~のために(ここでは、尋ねてきた村人たちのためであることを指す) |
具に | 詳しく |
聞く所 | 聞いたこと |
言ふ | 話す |

漁師は村人たちの質問に対して、自分の持っている知識を総動員して丁寧に答えたということが表現されています。
皆嘆椀す。
皆ため息をついて感心した。
語句 | 意味/解説 |
嘆椀す | ため息をついて感心する |

このことから、村人は世間から隔たった生活をしていましたが、外の世界に興味があることがわかりますね。
余人各復た延きて其の家に至らしめ、皆酒食を出だす。
他の村人も、それぞれ同じく(漁師を)招いて自分の家に連れて行く、皆酒と食事を出し(てもてなし)た。
語句 | 意味/解説 |
余人 | 他の人 |
各 | それぞれ |
復た | 同じく |
延きて | 招いて |
其の家 | それぞれの村人の家を指す |
至ら | やって来る |
しめ | 使役の「しむ」の連用形 |
酒食 | 酒と食事 |
出だす | 出す |

「至らしめ」は直訳すると、「(漁師を)やって来させる」となります。
ここでは、「漁師を自分の家に連れて行く」と訳しました。
停まること数日にして辞去す。
(漁師は)数日滞在した後、別れを告げた。
語句 | 意味/解説 |
停まる | 滞在する |
辞去す | 別れを告げる |

「停まること数日にして」は、直訳すると「滞在することが数日になって」です。
それを「数日滞在した後」と訳しました。
此中の人 語りて云ふ、「外人の為に道ふに足らざるなり」と。
この村の人が語って言うことには、「外部の人に対して、(この村のことを)話さないでください。」
語句 | 意味/解説 |
此中の人 | この村の人 |
語りて云ふ | 語って言う |
外人 | 外部の人 |
道ふ | 話す |
~に足らざ(不)るなり | 穏やかな禁止(~には及ばない。~しないでください。) |

また「外人」が出ました。
「此中人」に対して「外人」です。
つまりここでの「外人」は「この村の外の人」ということになりますね。

なぜ村人は漁師に口止めをしたのでしょうか?

村の外の人との交わりを避けているため、村に多くの人が来てほしくないし、この村のことを知られたくないからです。
既に出でて、其の船を得、便ち向の路に扶ひ、処処に之を誌す。
やがてそこを出て、自分の船を見つけ、すぐに以前(来たと)の道をたどって、あちこちに目印をつけた。
語句 | 意味/解説 |
既に | やがて |
其の船 | 漁師の船を指す |
得 | 手に入れる(ここでは置いてあった自分の船を見つけたことを指す) |
便ち | すぐに |
向の | 以前の |
路 | 道 |
扶ひ | たどって |
処処に | ところどころ、あちこち |
之 | ここでは桃花源に戻るための目印を指す |
誌す | 「標す」と同様。目印とする。 |

目印をつけたのは、またこの村に戻って来られるようにしたということですね。
郡下に及び太守に詣りて、説くこと此くのごとし。
その後、郡の役所のある町に到着すると、太守のもとに参上して、(村について)説明したことはこのようであった(=このように説明した)。
語句 | 意味/解説 |
郡下 | 郡の役所のある町 |
及び | 到着する、達する |
太守 | 武陵の長官 |
詣りて | (身分の高い人のもとに)参上して |
説くこと | 説明したこと |
此くのごとし | このようである |

村人に口止めされてたのに、あっさり約束を破ってますけど…

漁師は「こんなに素晴らしい手つかずに村があります」と報告することで褒美がもらえると思ったのでしょう。
太守即ち人をして其に往かしむ。
太守はすぐに人にそこに向かわせた。
【意訳】太守は漁師の話を聞いてすぐに部下に、漁師のあとをついて桃花源に行くように命じた。
語句 | 意味/解説 |
太守 | 武陵の長官 |
即ち | すぐに |
~をして…し(遣)む | ~に…させる |
往 | 行く |
向の誌しし所を尋ぬるに、遂に迷ひて復た路を得ず。
以前目印をつけた所を探し求めたが、とうとう迷って再び(桃花源への)道を見つけられなかった。
語句 | 意味/解説 |
向 | 以前 |
誌しし所 | 目印をつけた所 |
尋ぬる | 探し求める |
遂に | 最後に、とうとう |
迷ひて | 迷って |
復た~ず(不) | 再び~ない |
路を得 | (桃花源への)道を見つける |
南陽の劉子驥は、高尚の士なり。
南陽の劉子驥は、俗世間を離れた気高く立派な人物であった。
語句 | 意味/解説 |
南陽 | 地名。現在の河南省南陽市を指す |
劉子驥 | 人名。陶淵明と同時代に実在した人物 |
高尚の人 | 俗世間を去った気高く立派な人物、人格者であることを表す |
なり | 断定の助動詞(~である) |

ここで劉子驥という人物が登場します。
劉子驥は実在する人物で、富や名声を求めない人格的にすぐれた人です。
このような人を登場させることで、真実みを持たせているというのが一般的な解釈です。

「漁師が行ったという村の話を、この劉子驥という立派な人が信じてそこへ行こうとしたんだよ」と言った方が、説得力が増しますね。
之を聞き、欣然として往かんことを規るも、未だ果たさず、尋いで病みて終はる。
(劉子驥は)この話を聞いて、喜び勇んで(その村に)行こうと計画をしたが、まだ成し遂げないうちに、それからまもなく病気で亡くなってしまった。
語句 | 意味/解説 |
之 | 漁師が桃花源に行ったことと、そこへ再び行こうとしたら行けなかったという出来事を指す |
欣然として | 喜びいさんで |
往かんこと | 行こうと |
規る | 「図る」と同様と解釈 → 計画する |
未だ~ず | 【再読文字】まだ~しない |
果 | 成し遂げる |
尋いで | それからまもなく |
病みて | 病気になって |
終はる | 亡くなる |

約束を簡単に破ってしまうような漁師が行けて、高尚の士と言われる劉子驥がその村にたどり着けないのですね。
一体、なぜなのでしょうか?

漁師が最初に村にたどり着いたのは、偶然でしたよね。
その人の資質に関わらず、村が「行こうとして向かうと、たどり着けない場所」であったと言うことです。
後遂に津を問ふ者無し。
その後とうとう渡し場を尋ねる人はいなかった。
語句 | 意味/解説 |
後 | その後 |
遂に | 最後に、とうとう |
津 | 渡し場(ここでは、桃花源へ向かうための場所を指す) |
問ふ | 尋ねる |
者無し | ~する人はいない |

最後のこの一文はどういうことなんでしょうか?

この「津(渡し場)」とは、漁師が最初に村に入る前に船を泊めた渡し場のことを言っています。
つまり「その後、その村を目指そうという人が現れなかった」ということです。
以上でこのお話は終わりです。
続いて、ポイントを確認しましょう。
ポイント
外の人たちとの関わりを避け、
田畑は整い、平和に自給自足の生活を楽しんでいる理想郷と言える村。
本文土地平曠、屋舎儼然。有良田・美池・桑竹之属。阡陌交通、鶏犬相聞。其中往来種作男女衣著、悉如外人。黄髪垂髫、並怡然自楽。
漁師が川をさかのぼっていると、桃の花がずっと続く林に迷い込みました。
林の奥に小さな洞窟を発見し、中に入ると……そこには美しい村が広がっていました。
漁師は村を離れるとき、目印をつけながら武陵に戻りました。
しかし、郡の役人と再び村を目指した際には、その目印じたいが見つからなかったようです。
その後、高尚の士が「ぜひ自分も行ってみたい」と思い、探しに行きましたが……二度と見つけることはできませんでした。
-
- 漁師 → 偶然の自然な流れでたどり着いた
- 高尚の士 → 人為的に探したため見つけられなかった
ここには、「人の力では理想郷を手にできない」という思想が込められています。
桃花源はただの村ではなく、現実世界と切り離された「ユートピア」の象徴です。
「無為自然」(人為を捨て、自然のままに生きる姿勢)の思想が背景にあります。
つまり、「理想郷は欲深い人間の手には届かない。自然とともに生きる者だけが偶然に触れることができる」という意味を持ちます。
テスト前のチェックリスト
□ 作者は誰? → 陶淵明
□ 当時はどのような時代だった? → 戦乱の時代
□ 桃花源を発見したのは誰? → 漁師
□ 村人たちの暮らしの特徴は? → 外界を知らず、平和で自然と調和
□ 「高尚の士」が行けなかった理由は? → 人為的な探し方では見つけられなかったから
□ 桃花源は何を象徴する? → 理想郷・ユートピア
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は「桃花源記」についてみてきました。
漁師が偶然訪れた村は、平和で理想郷と言える村でした。
このお話から生まれたのが「桃源郷」という、俗世間を離れた、現実には絶対にない理想の社会を表す言葉が生まれたとされています。
- 漁師の偶然の発見 → 無心だからこそ得られる幸運
- 高尚の士の失敗 → 欲や執着では理想に届かない
という対比を理解すると、作者の思いも読み取れるのではないでしょうか。
コメント