今回は李白の「静夜思」について解説をしていきます。
25歳で故郷を離れた李白が、「静夜思」を詠んだのは31歳の頃と言われています。
李白は701年に西域で生まれ、現在の四川省で育ちました。
幼いころから優れた文才を発揮するものの、役人になることはなかなか叶いませんでした。
お酒を好み、自由奔放な李白。
小さなことにはこだわらず快活で、親しみやすい人物だったと言われています。
李白は、俗人離れした変幻自在な詩を詠む存在であったことから、後世「詩仙」と呼ばれました。
そんな李白がどのような思いを込めて、この詩を読んだのか考えていきましょう。
この記事では
・書き下し文(読み仮名付き)
・語句の意味/解説
・現代語訳
・漢詩の形式や技法
以上の内容を順番にお話していきます。
李白「静夜思」白文・書き下し文・現代語訳・解説
① 牀前看月光
牀前月光を看る
語句 | 意味/解説 |
牀前 | 寝台(ベッド)、寝床 |
月光 | 月の光 |
看 | (注意深く)見る、見守る |
【訳】寝床の前で月の光を見ると
② 疑是地上霜
疑ふらくは是れ地上の霜かと
語句 | 意味/解説 |
疑ふらくは | 疑ふ+接尾語「らく」+係助詞「は」…恐らく、ひょっとして |
地上の霜 | 地上におりた霜 |
【訳】恐らくこれは地上におりた霜だろう
空に出ている月の光が地上の霜と見間違えるというのは、どういう状況なんでしょうか?
月の光が、あまりにも白く明るく地面を照らしていたのです。
それが霜がおりたように見えたと言うことです。
寝床の前で見た月の光が、霜のように白く明るかったので、月に興味が向いていますね。
そうですね。
また、霜がおりていてもおかしくない時期であることがわかります。
秋も深まった頃、いわば晩秋の頃ですね。
③ 挙頭望山月
頭を挙げて山月を望み
語句 | 意味/解説 |
頭 | あたま |
山月 | 山の上に出ている月 |
望む | 眺める |
【訳】頭をあげて山に出た月を眺めていると
④ 低頭思故郷
頭を低れて故郷を思ふ
語句 | 意味/解説 |
低れる | 下がっている |
【訳】頭が下がってきて故郷のことを思う
どうして月が、故郷のことを思うことにつながるのでしょうか?
もともと漢詩において、月は望郷の思いを詠むときによく用いられます。
ここでは地面を霜がおりたかのように照らしていたのが、月の光と気付き、月を見上げます。
そこで、山に出た月を見て「見覚えのある景色だな…」と感じたのですね。
山の中で育った李白は、故郷を思い出したのでしょう。
そして、そこにいる懐かしい人のことを思っているんですね。
「低頭」と頭を下げてうつむく様子から、寂しさも表現されています。
詩の形式・表現技法
詩の形式…五言絶句(一句が五文字、四句からなる)
押韻…偶数句末
「霜 sou」「郷 kyou」
※第一句の「光 kou」も押韻となっている
対句…第三句と第四句(頭を挙げて/頭を低れて)
まとめ
いかがでしたでしょうか?
「静夜思」に込められた、李白の思いは理解できましたか?
視点の動きから、心の向かう対象も変化していましたね。
25歳で故郷を離れ、31歳の時に読んだ詩とされています。
李白は気さくで親しみやすい性格で、放浪の詩人と言われていますが、寒さを感じる夜に一人、故郷を思って寂しくなる時もあったのでしょう。
中国の詩において「月」は感傷、特に望郷の思いとは切っても切れない関係です。
それを大衆にわかりやすく、ストレートに表現する李白の技術や感性を「静夜思」から感じ取っていただけたら嬉しいです。
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