今回は源氏物語より「若紫」について解説をしていきます。
源氏物語最大のヒロインとも言われる「紫の上」の物語は、この「若紫」から始まります。
かわいらしい女の子を光源氏が物陰から覗いている場面です。
・品詞分解と語句解説
・現代語訳
・本文の解説
以上の内容を順番にお話していきます。
源氏物語「若紫」品詞分解・現代語訳・解説
本文・品詞分解(語句解説)・現代語訳
日もいと長きに、つれづれなれば、
日 | 名詞 |
も | 係助詞【強意】 |
いと | 副詞(大変、非常に) |
長き | ク活用形容詞「長し」連体形 |
に、 | 接続助詞【添加】 |
つれづれなれ | ナリ活用の形容動詞「つれづれなり」(手持ち無沙汰だ、所在ない)已然形 |
ば、 | 接続助詞【順接確定条件】 |
【訳】(春の)日も大変長い上に、手持ち無沙汰なので、
夕暮れのいたう霞みたるに紛れて、かの小柴垣のもとに立ち出で給ふ。
夕暮れ | 名詞 |
の | 格助詞 |
いたう | ク活用の形容詞「いたし」(甚だしい、ひどい)連用形「いたく」のウ音便化 |
霞み | マ行四段活用動詞「霞む」(霞みがかる)連用形 |
たる | 存続の助動詞「たり」連体形 |
に | 格助詞 |
紛れ | ラ行下二段活用動詞「紛る」(紛れる、見つかりにくくなる)連用形 |
て、 | 接続助詞 |
か | 代名詞 |
の | 格助詞 |
小柴垣 | 名詞(小柴で作った低い垣根のこと) |
の | 格助詞 |
もと | 名詞(ところ) |
に | 格助詞 |
立ち出で | ダ行下二段活用動詞「立ち出づ」(出て来る)連用形 |
給ふ。 | ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」終止形【尊敬】作者→光源氏への敬意 |
【訳】夕暮れ時でひどく霞がかかっているのに紛れこんで、(光源氏は)あの小柴垣の所へ出て来なさる。
「かの小柴垣」と言っているのは、この小柴垣に囲まれた風情のある家に興味を持っていたということを示しています。
前から気になってた「あの小柴垣の家に出かけた」ということですね。
人々は帰し給ひて、惟光朝臣とのぞき給へば、
人々 | 名詞(多くの人。ここでは光源氏のお供の者たちを指す) |
は | 係助詞 |
帰し | サ行四段活用動詞「帰す」連用形 |
給ひ | ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」連用形【尊敬】作者→光源氏への敬意 |
て、 | 接続助詞 |
惟光朝臣 | 名詞(惟光は光源氏の乳母子と呼ばれる腹違いの部下) |
と | 格助詞 |
のぞき | カ行四段活用動詞「のぞく」(ちょっと立ち寄って見る)連用形 |
給へ | ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」已然形【尊敬】作者→光源氏への敬意 |
ば、 | 接続助詞【順接確定条件】 |
【訳】お供の者たちはお帰しになって、惟光の朝臣とちょっと立ち寄って御覧になると、
ただこの西面にしも、持仏据ゑ奉りて行ふ尼なりけり。
ただ | 副詞(ちょうど) |
こ | 代名詞 |
の | 格助詞 |
西面 | 名詞(西に面した部屋) |
に | 格助詞 |
しも、 | 【強意】副助詞(ちょうど) |
持仏 | 名詞(守り本尊として安置する仏像) |
据ゑ | ワ行下二段活用動詞「据う」(置く、据える)連用形 |
奉り | ラ行四段活用の補助動詞「奉る」連用形【謙譲】作者→仏への敬意 |
て | 接続助詞 |
行ふ | ハ行四段活用動詞「行ふ」(勤行をする)連体形 |
尼 | 名詞 |
なり | 断定の助動詞「なり」連用形 |
けり | 詠嘆の助動詞「けり」終止形 |
【訳】(目に入ったのは)ちょうど西に面した部屋に、守り本尊を置き申し上げて勤行をする尼君であった。
「行う」は古今異義語で、古語の意味は「仏道の修行をする、勤行をする」です。
「尼なりけり」の「けり」は過去ではないのですか?
ここでは詠嘆としています。
ここではくどくなりそうなので「尼君であった」と訳。詠嘆の「けり」
「~ことよ」「~だなぁ」と訳すだけでなく、今まで分からなかったことを知ったり、発見したときにも使用する。
簾少し上げて、花奉るめり。
簾 | 名詞 |
少し | 副詞 |
上げ | ガ行下二段活用動詞「上ぐ」(上へやる、位置を高くする)連用形 |
て、 | 接続助詞 |
花 | 名詞 |
奉る | ラ行四段活用動詞「奉る」終止形【謙譲】作者→仏への敬意 |
めり。 | 推定の助動詞「めり」終止形 |
【訳】簾を少し上げて、(女房が仏に)花をお供えしているようだ。
「奉る」は「差し上げる」という意味ですが、ここでは「仏に花を差し上げる」よりは「仏に花をお供えする」と訳しました。
中の柱に寄りゐて、脇息の上に経を置きて、いと悩ましげに読みゐたる尼君、ただ人と見えず。
中の柱 | 名詞(部屋の中央にある柱) |
に | 格助詞 |
寄りゐ | ワ行上一段活用動詞「寄りゐる」(寄りかかって座る、寄り添って座る)連用形 |
て、 | 接続助詞 |
脇息 | 名詞(ひじ掛けのこと) |
の | 格助詞 |
上 | 名詞 |
に | 格助詞 |
経 | 名詞(経文、仏典) |
を | 格助詞 |
置き | カ行四段活用動詞「置く」連用形 |
て、 | 接続助詞 |
いと | 副詞(たいそう、非常に) |
悩ましげに | ナリ活用の形容動詞「悩ましげなり」(気分が悪そうに)連用形 |
読みゐ | ワ行上一段活用動詞「読みゐる」(読んでいる)連用形 |
たる | 存続の助動詞「たり」連体形 |
尼君、 | 名詞 |
ただ人 | 名詞(普通の身分の人) |
と | 格助詞 |
見え | ヤ行下二段活用動詞「見ゆ」(思われる、考えられる)未然形 |
ず。 | 打消の助動詞「ず」終止形 |
【訳】部屋の中央にある柱に寄りかかって座り、脇息の上に経文を置いて、たいそう気分が悪そうに読んでいる尼君は、普通の身分の人とは思われない。
四十余ばかりにて、いと白うあてに、痩せたれど、つらつきふくらかに、まみのほど、
四十余 | 名詞(四十…40歳、余…それより少し多いこと) |
ばかり | 副助詞(~ぐらい、~ほど) |
に | 断定の助動詞「なり」連用形 |
て、 | 接続助詞 |
いと | 副詞(たいそう、非常に) |
白う | ク活用の形容詞「白し」(色が白い)連用形「白く」のウ音便化 |
あてに、 | ナリ活用の形容動詞「あてなり」(上品だ)連用形 |
痩せ | サ行下二段活用動詞「痩せる」連用形 |
たれ | 存続の助動詞「たり」已然形 |
ど、 | 接続助詞【逆接確定条件】(~けれども) |
つらつき | 名詞(頬の様子) |
ふくらかに、 | ナリ活用の形容動詞「ふくらかなり」(ふっくらとしている)連用形 |
まみ | 名詞(目元) |
の | 格助詞 |
ほど、 | 名詞(辺り) |
【訳】四十歳ちょっとで、たいそう色が白くて上品で、痩せているけれども、頬の様子がふっくらとして、目元の辺りや、
髪のうつくしげにそがれたる末も、なかなか長きよりも、こよなう今めかしきものかなと、あはれに見給ふ。
髪 | 名詞 |
の | 格助詞 |
うつくしげに | ナリ活用の形容動詞「うつくしげなり」(かわいらしい感じ、美しい様子)連用形 |
そが | ガ行四段活用動詞「そぐ」(切り落とす)未然形 |
れ | 受身の助動詞「る」連用形 |
たる | 存続の助動詞「たり」連体形 |
末 | 名詞(端、末端) |
も、 | 係助詞 |
なかなか | 副詞(かえって、むしろ) |
長き | ク活用の形容詞「長し」(長い)連体形 |
より | 格助詞 |
も、 | 係助詞 |
こよなう | ク活用の形容詞「こよなし」(この上ない)連用形「こよなく」のウ音便化 |
今めかしき | シク活用の形容詞「今めかし」(現代風だ)連体形 |
もの | 名詞 |
かな | 終助詞【詠嘆】 |
と、 | 格助詞 |
あはれに | ナリ活用の形容動詞「あはれなり」(しみじみとした思いだ)連用形 |
見 | マ行上一段活用動詞「見る」(見る)連用形 |
給ふ。 | ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」終止形【尊敬】作者→光源氏への敬意 |
【訳】髪が美しく切り落とされている端も、かえって長い(髪)よりも、この上なく現代風なものだなあと思って、しみじみとした思いで御覧になる。
清げなる大人二人ばかり、さては童べぞ、出で入り遊ぶ。
清げなる | ナリ活用の形容動詞「清げなり」(小綺麗だ)連体形 |
大人 | 名詞(年配の女性、女房) |
二人 | 名詞 |
ばかり、 | 副助詞(~ほど、~ぐらい) |
さては | 接続詞(そのほかには) |
童べ | 名詞(子どもたち) |
ぞ、 | 係助詞※結び:遊ぶ |
出で入り | ラ行四段活用動詞「出で入る」(出入りする)連用形 |
遊ぶ。 | バ行四段活用動詞「遊ぶ」連体形【係り結び】 |
【訳】小綺麗な年配の女房が二人ほど(いて)、そのほかには子どもたちが、出入りして遊んでいる。
中に、十ばかりにやあらむと見えて、白き衣、山吹などの萎えたる着て走り来たる女子、
中 | 名詞 |
に、 | 格助詞 |
十 | 名詞(10歳) |
ばかり | 副助詞(~ぐらい、~ほど) |
に | 断定の助動詞「なり」連用形 |
や | 係助詞 |
あら | ラ行変格活用動詞「あり」未然形 |
む | 推量の助動詞「む」連体形 |
※にやあらむ | 【連語】~であろうか |
と | 格助詞 |
見え | ヤ行下二段活用動詞「見ゆ」(思われる、考えられる)連用形 |
て、 | 接続助詞 |
白き | ク活用の形容詞「白し」連体形 |
衣、 | 名詞(衣服、着物) |
山吹 | 名詞(山吹重ね) |
など | 副助詞【例示】 |
の | 格助詞 |
萎え | ヤ行下二段活用動詞「萎ゆ」(衣服の糊が落ちて柔らかくなる)連用形 |
たる | 存続の助動詞「たり」連体形 |
着 | カ行上一段活用動詞「着る」連用形 |
て | 接続助詞 |
走り来(き) | カ行変格活用動詞「走り来(く)」(走って来る)連用形 |
たる | 完了の助動詞「たり」連体形 |
女子、 | 名詞(女の子、少女) |
【訳】その中で、十歳くらいであろうかと思われて、白い下着の上に、山吹重ねなどで糊が落ちて柔らかくなった着物を着て、走って来た女の子は、
「衣」は「着物」という意味ですが、「白き衣」の上に「山吹などの(衣)」を着ていることから、「白き衣」は「白い下着」と訳されています。
あまた見えつる子どもに似るべうもあらず、いみじく生ひ先見えて、うつくしげなるかたちなり。
あまた | 副詞(たくさん) |
見え | ヤ行下二段活用動詞「見ゆ」(見える、目に入る)連用形 |
つる | 完了の助動詞「つ」連体形 |
子ども | 名詞(子どもたち) |
に | 格助詞 |
似る | ナ行上一段活用動詞「似る」(同じように見える)終止形 |
べう | 当然の助動詞「べし」連用形「べく」のウ音便化 |
も | 係助詞 |
あら | ラ行変格活用動詞「あり」未然形 |
ず、 | 打消の助動詞「ず」連用形 |
※べうもあらず | (連語)~はずもない |
いみじく | シク活用の形容詞「いみじ」(たいそう)連用形 |
生ひ先 | 名詞(成長していく先、将来) |
見え | ヤ行下二段活用動詞「見ゆ」(見せる、思わせる)連用形 |
て、 | 接続助詞 |
うつくしげなる | ナリ活用の形容動詞「うつくしげなり」(いかにもかわいらしい様子だ)連体形 |
かたち | 名詞(顔立ち、顔つき、容貌) |
なり。 | 断定の助動詞「なり」終止形 |
【訳】(そのあたりに)たくさん見えた子どもたちとは似るはずもなく、たいそう将来(の美しさ)が想像されて、いかにもかわいらしい顔つきだ。
髪は、扇を広げたるやうにゆらゆらとして、顔はいと赤くすりなして立てり。
髪 | 名詞 |
は、 | 係助詞 |
扇 | 名詞 |
を | 格助詞 |
広げ | ガ行下二段活用動詞「広ぐ」(広げる)連用形 |
たる | 完了の助動詞「たり」連体形 |
やうに | 比況の助動詞「やうなり」(まるで~のようだ)連用形 |
ゆらゆらと | 副詞 |
し | サ行変格活用動詞「す」連用形 |
て、 | 接続助詞 |
顔 | 名詞 |
は、 | 係助詞 |
いと | 副詞(たいそう、非常に) |
赤く | ク活用の形容詞「赤し」(赤い)連用形 |
すりなし | サ行四段活用動詞「すりなす」(こすって~にする)連用形 |
て | 接続助詞 |
立て | タ行四段活用動詞「立つ」已然形 |
り。 | 存続の助動詞「り」終止形 |
【訳】髪は、まるで扇を広げたようにゆらゆらとして、顔は、(涙を手で)こすってとても赤くして立っている。
「何ごとぞや。童べと腹立ち給へるか。」とて、尼君の見上げたるに、少しおぼえたるところあれば、子なめりと見給ふ。
「何ごと | 名詞(どうしたこと、何たること)※咎める意味になる |
ぞ | 終助詞【念押し】(~なのか) |
や。 | 係助詞 |
童べ | 名詞(子どもたち) |
と | 格助詞 |
腹立ち | タ行四段活用動詞「腹立つ」(ケンカする、言い争う)連用形 |
給へ | 尊敬の補助動詞「給ふ」已然形(尼君→若紫に対する敬意) |
る | 完了の助動詞「り」連体形 |
か。」 | 係助詞【疑問】 |
とて、 | 格助詞 |
尼君 | 名詞 |
の | 格助詞(主格) |
見上げ | ガ行下二段活用動詞「見上ぐ」(見上げる)連用形 |
たる | 完了の助動詞「たり」連体形 |
に、 | 格助詞 |
少し | 副詞 |
おぼえ | ヤ行下二段活用動詞「おぼゆ」(似る、似ている)連用形 |
たる | 存続の助動詞「たり」連体形 |
ところ | 名詞 |
あれ | ラ行変格活用動詞「あり」已然形 |
ば、 | 接続助詞【順接確定条件】 |
子 | 名詞 |
な | 断定の助動詞「なり」連体形「なる」撥音便「なんめり」の「ん」を表記しない形 |
めり | 推定の助動詞「めり」終止形 |
※なめり | 【連語】~であるように見える |
と | 格助詞 |
見 | マ行上一段活用動詞「見る」(見る)連用形 |
給ふ。 | 尊敬の補助動詞「給ふ」終止形(作者→光源氏への敬意) |
【訳】「どうしたことですか。子どもたちとケンカをなさったのか。」と言って、尼君が見上げている(顔に)、少し似ているところがあるので、(光源氏は尼君の)子であるようだと御覧になる。
「雀の子を犬君が逃がしつる、伏籠のうちに籠めたりつるものを。」とて、口惜しと思へり。
「雀の子 | 名詞 |
を、 | 格助詞 |
犬君 | 名詞(召使の女の子の名前) |
が | 格助詞【主格】 |
逃がし | サ行四段活用動詞「逃がす」連用形 |
つる、 | 完了の助動詞「つ」連体形 |
伏籠 | 名詞(竹製の籠。鳥かごの代わりにしていた) |
の | 格助詞 |
うち | 名詞(中) |
に | 格助詞 |
こめ | マ行下二段活用動詞「こむ」(中に入れる、閉じ込める)連用形 |
たり | 存続の助動詞「たり」連用形 |
つる | 完了の助動詞「つ」連体形 |
ものを。」 | 終助詞【詠嘆】 |
とて、 | 格助詞 |
いと | 副詞(たいそう) |
くちをし | シク活用の形容詞「くちをし」(残念だ、がっかりする)終止形 |
と | 格助詞 |
思へ | ハ行四段活用動詞「思ふ」已然形 |
り。 | 存続の助動詞「り」終止形 |
【訳】「雀の子を、犬君が逃がしてしまったの。伏籠の中に閉じ込めておいたのになあ。」と言って、たいそう残念に思っている。
このゐたる大人、「例の、心なしの、かかるわざをしてさいなまるるこそ、いと心づきなけれ。
こ | 代名詞 |
の | 格助詞 |
ゐ | ワ行上一段活用動詞「ゐる」(座っている)連用形 |
たる | 完了の助動詞「たり」連体形 |
大人、 | 名詞 |
「例 | 名詞(いつものこと、普段) |
の、 | 格助詞 |
心なし | 名詞(不注意者、うっかり者※ここでは犬君のことを指す) |
の、 | 格助詞 |
かかる | ラ行変格活用動詞「かかり」(このような)連体形 |
わざ | 名詞(こと) |
を | 格助詞 |
し | サ行変格活用動詞「す」連用形 |
て | 接続助詞 |
さいなま | マ行四段活用動詞「さいなむ」(しかる、責められる)未然形 |
るる | 受身の助動詞「る」連体形 |
こそ、 | 係助詞【強意】結び:心づきなけれ |
いと | 副詞(たいそう) |
心づきなけれ。 | ク活用の形容詞「心づきなし」(気にくわない、好きになれない)已然形【係り結び】 |
【訳】その座っていた年輩の女房が、「いつものように、うっかり者(犬君)が、こんなことをして叱られるなんて、本当に気にくわないわ。
「このゐたる大人」とは、先ほど登場した「いと清げなる大人」のことを指します。
この大人が犬君のことを「気にくわない」って言ってるんですか?
なんか怖いです…
確かに直訳すると「気にくわない」ですが、「もうあの子ったら、困った子ね」という感じですね。
→大人(年配の女房のうちの一人)2. 誰に対して気にくわないと思っている?
→犬君3. 叱られるのは誰が誰に?
①犬君が尼君に叱られる
②(犬君の監督者として)年配の女房が尼君に叱られる
※2通りの解釈が可能
いづ方へかまかりぬる、いとをかしうやうやうなりつるものを。
いづ方 | 代名詞(どこ) |
へ | 格助詞 |
か | 係助詞【疑問】 |
まかり | ラ行四段活用動詞「まかる」連用形(「行く」の丁寧語…行きます) |
ぬる、 | 完了の助動詞「ぬる」連体形 |
いと | 副詞(たいそう) |
をかしう | シク活用の形容詞「をかし」(愛らしい、かわいらしい)の連用形「をかしく」のウ音便化 |
やうやう | 副詞(だんだん) |
なり | ラ行四段活用動詞「なる」連用形 |
つる | 完了の助動詞「つ」連体形 |
ものを。 | 終助詞【詠嘆】 |
【訳】(雀の子は)どこへ行ってしまったのでしょうか、たいそうかわいらしくだんだんなってきていたのになあ。
烏などもこそ見つくれ。」とて、立ちて行く。
烏 | 名詞 |
など | 副助詞 |
もこそ | 係助詞「も」+係助詞「こそ」(~したら大変だ) 結び:見つくれ |
見つくれ。」 | カ行下二段活用動詞「見つく」(見つける)已然形 |
とて、 | 格助詞 |
立ち | タ行四段活用動詞「立つ」連用形 |
て | 接続助詞 |
行く。 | カ行四段活用動詞「行く」終止形 |
【訳】烏などが見つけたら大変だ。」と言って、立って行く。
髪ゆるるかにいと長く、めやすき人なめり。
髪 | 名詞 |
ゆるるかに | ナリ活用の形容動詞「ゆるるかなり」(ゆったりとしている)連用形 |
いと | 副詞(たいそう) |
長く、 | ク活用の形容詞「長し」連用形 |
めやすき | ク活用の形容詞「めやすし」(見た目に感じがいい)連体形 |
人 | 名詞 |
な | 断定の助動詞「なり」の連体形「なる」の撥音便「なん」の「ん」を表記しない形 |
めり。 | 推定の助動詞「めり」終止形 |
【訳】髪はゆったりとしてたいそう長く、見た目に感じのいい人のように見える。
元の形:なる(断定の助動詞「なり」連体形)+めり(推定の助動詞「めり」終止形)
→撥音便化:なんめり
→「ん」を表記しない:なめり意味:~であるようだ、~のように見える
少納言の乳母とぞ人言ふめるは、この子の後ろ見なるべし。
少納言 | 名詞 |
の | 格助詞 |
乳母 | 名詞(母親に代わって子どもを養い育てる女性) |
と | 格助詞 |
ぞ | 係助詞【強意】 |
人 | 名詞 |
言ふ | ハ行四段活用動詞「言ふ」(呼ぶ)終止形 |
める | 婉曲の助動詞「めり」(~のようである)連体形 |
は、 | 係助詞 |
こ | 代名詞 |
の | 格助詞 |
子 | 名詞 |
の | 格助詞 |
後ろ見 | 名詞(後見人) |
なる | 男系の助動詞「なり」連体形 |
べし。 | 推量の助動詞「べし」終止形 |
【訳】少納言の乳母と人々が呼んでいるようであるの(人)は、この子の後見人なのだろう。
「少納言」とは本来男性の役職名ですが、女房名としても用いられます。
清少納言もそうですね。
ちなみに女房とは使用人の中でも、宮中や貴族に仕えた上級の使用人のことを指しました。
「若紫②」尼君、いで、あな幼や~へ続く
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は源氏物語より「若紫」日もいと長きに、~について解説しました。
光源氏にとって大切な人となる紫の上。
泣いて顔をこすって赤くなっているというなんとも子供らしい姿でした。
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