おらが春「幼子さと/添え乳②」現代語訳・解説

古文

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では、小林一茶の『おらが春』より「幼子さと/添え乳」の続きを読んでいきましょう。

今回の内容を私の解釈も加えてざっくり紹介すると、以下の通りです。

あらすじ(あずき的解釈含む)

さとは仏壇にろうそくを灯して「チーン」と鈴を鳴らすと、どこにいてもすごいスピードでハイハイしてきて、早蕨みたいにちっちゃくてかわいいお手ててを合わせて「なんむなんむ」って唱えるのよ。それの声がかわいくて、魅力的だし、感心だよね。
でも自分ときたら、頭は霜みたいに白髪で真っ白だし、おでこは波が寄せるみたいに皺だらけ。そんな歳になっても、信仰心が足りないなーってさとの手前、恥ずかしくなるくらいだわ。
あと、さとはね外で子どもたちが踊ってる声がすると、ごはんの途中でもお茶碗を投げ捨てて真似っこして踊るのよ。早くこの子も振り分け髪ができる背丈まで育てて、踊ってる姿をみたら、二十五菩薩の音楽よりもずっと勝ってるって思うと、自分が老いていく憂鬱さも晴れていくみたいだよ。

こんな風に一日中遊びまわるさとだから、朝は起きるのが遅いんだ。その間だけ、母親は正月みたいにのんびりできると思って、家事をやったりしてる。うちわをヒラヒラと汗をしずめてたら、さとの鳴き声が聞こえてくる。そうすると母親は手早くさとを抱き起して、おしっこをさせたりお乳をあげたりする。妊娠中も苦しかっただろうし、今も毎日大変なのに、さとのことをこの上ない宝だと言わんばかりに慈しむようになでて、喜んでるみたいだ。

ここで一句、
かわいい子どもの肌に残る蚤の跡を愛おしそうに数えながら、添い寝をして乳を飲ませているなあ。一茶。

 

それでは

・本文(読み仮名付き)
・現代語訳
・品詞分解と語句解説
・本文の解説

を見ながら、詳しく内容を読んでいきましょう。

おらが春「幼子さと/添え乳②この幼~」現代語訳・解説

本文・品詞分解(語句解説)・現代語訳

ここまでのお話:去年の夏、竹植うる日のころ~

このおさなほとけりしたまけん、逮夜たいやゆうれに、

この幼子は、仏が守護しなさっていたからであろうか、命日の前夜の夕暮れに、

語句 意味
代名詞
格助詞
幼、 名詞(幼子)
※ク活用形容詞「をさなし」の語幹であるが、ここでは「幼子」を表す名詞として用いられていると考える
名詞
格助詞
守り 名詞(守護、守ること)
サ行変格活用動詞「す」連用形
給ひ ハ行四段活用補助動詞「給ふ」連用形
けん、 過去の原因推量の助動詞「けむ」連体形
逮夜 名詞(葬儀の前夜、命日の前夜、亡くなった人の忌日の前夜)
格助詞
夕暮れ 名詞
に、 格助詞

 

持仏堂じぶつどう蠟燭ろうそくらしてりんらせば、

仏壇に蠟燭をともして鈴をたたいて鳴らすと、

語句 意味
持仏堂 名詞(仏間、またはそこにある仏壇を指す)
格助詞
蠟燭 名詞
照らし サ行四段活用動詞「照らす」連用形
接続助詞
名詞(鈴という鉢型の仏具。縁をたたいて鳴らす)
打ち鳴らせ サ行四段活用動詞「打ち鳴らす」(たたいて鳴らす)已然形
ば、 接続助詞

 

どこにてもいそがはしくりて、

どこにいても忙しそうに這って近寄って、

語句 意味
どこ 代名詞
格助詞
ワ行上一段活用動詞「ゐる」連用形
接続助詞
係助詞
いそがはしく シク活用の形容詞「いそがはし」(忙しそうだ)
這ひ寄り ラ行四段活用動詞「這ひ寄る」(這って近寄る)
て、 接続助詞

 

早蕨さわらびちいさきせて、「なんむなんむ。」ととの声、

早春の蕨のような小さな手を合わせて、「なんむなんむ。」と唱える声が、

語句 意味
早蕨 名詞(芽が出たばかりの蕨)
※先端が赤ちゃんの握りこぶしに似ている形であることから、ここでは「(幼子の)小さき手」を比喩的に表現している
格助詞
小さき ク活用の形容詞「小さし」連体形
名詞
格助詞
合はせ サ行下二段活用動詞「合はす」(合わせる)連用形
て、 接続助詞
「なんむなんむ。」 名詞(南無、南無。仏や菩薩に帰依する気持ちを表す言葉。)
格助詞
唱ふ ハ行四段活用動詞「唱ふ」(唱える、声高に読みあげる)連体形
声、 名詞

 

らしく、ゆかしく、なつかしく、殊勝しゅしょうなり。

かわいらしく、強く心をひかれ、愛おしく、けなげである。

語句 意味
しをらしく、 シク活用の形容詞「しをらし」(かわいらしい)連用形
ゆかしく、 シク活用の形容詞「ゆかし」(強く心がひかれる)連用形
なつかしく、 シク活用の形容詞「なつかし」(愛おしい)連用形
殊勝なり。 ナリ活用の形容動詞「殊勝なり」(けなげである)終止形

 

 

なぜ一茶は、さとについて「仏の守りし給ひけん」と言っているのでしょうか?

一茶が仏壇に蠟燭を照らしてりんを鳴らすと、さとが忙しげに這い寄って来て、小さな手を合わせてお経を唱える真似をするからです。

→無邪気に「なんむなんむ」と拝む姿が尊く見え、仏がさとを守っているように感じられた。

 

それにつけても、おのれ、かしらにはいくらのしもをいただき、

それにつけても、自分は、頭にはたくさんの霜のような白髪を頭にのせ、

語句 意味
それ 代名詞
格助詞
つけ カ行下二段活用動詞「つく」連用形
接続助詞
も、 係助詞
※それにつけても…話題を変える接続詞(それはそうとして、それにしても)の意味がある。
おのれ、 代名詞(自分)
名詞
には 格助詞
いくら 副詞(たくさん)
格助詞
名詞(霜、白髪を例えて言うこともある。ここでは後者)
格助詞
いただき、 カ行四段活用動詞「いただく」(頭の上にのせる)連用形

 

ひたいにはしわしわなみよわいにて、

おでこにはしわしわとひどく皺の波が寄せてくる年齢なのに、

語句 意味
名詞(おでこ)
格助詞
係助詞
しわしわ 副詞(ひどく皺が寄っている様子をあらわす)
名詞
格助詞
寄せ来る カ行変格活用動詞「寄せ来」(波が寄せて来る)連体形
名詞(年齢)
格助詞
て、 接続助詞

 

弥陀みだたのむすべもらで、うかうか月日つきひついやすこそ、

阿弥陀如来の衆生しゅじょう救済という誓願せいがんにすがる方法も知らないで、うかうかと月日を費やしていることは、

語句 意味
弥陀 名詞(阿弥陀如来のこと)
頼む マ行四段活用動詞「頼む」連体形
すべ 名詞(方法)
係助詞
知ら ラ行四段活用動詞「知る」未然形
で、 接続助詞
うかうか 副詞(ぼんやりと)
月日 名詞
格助詞
費やす サ行四段活用動詞「費やす」連体形
こそ、 係助詞 ※結び:けれ

 

ふた手前てまえづかしけれとおもも、

二歳の幼子の手前も恥ずかしいと思うのだが、

語句 意味
二つ子 名詞(二歳の子)
格助詞
手前 名詞(人が見る前、体裁の意味を表す)
係助詞
恥ずかしけれ シク活用の形容詞「恥ずかし」(気が引ける、恥ずかしい)已然形【係り結び】
格助詞
思ふ ハ行四段活用動詞「思ふ」連体形
も、 逆接の確定条件の接続助詞

 

その退けば、はや地獄じごくたねをまきて、

その席を退くと、もう地獄に落ちる原因を作って、

語句 意味
代名詞
格助詞
名詞(席)
格助詞
退け カ行四段活用動詞「退く」(退出する)
ば、 接続助詞
はや 副詞(もう、早くも)
地獄 名詞
格助詞
名詞
格助詞
まき カ行四段活用動詞「まく」連用形
※地獄の種をまく…地獄に落ちる原因を作ることを表す
て、 接続助詞

 

 「その座」とは、どこのことを指すかわかりますか?

仏壇の前(仏の前)です!

 

ひざむらがるはえをにくみ、ぜんめぐをそしりつつ、

膝に群がる蠅を憎み、膳の周りを飛び回る蚊を悪く言いながら、

語句 意味
名詞
格助詞
群がる ラ行四段活用動詞「群がる」連体形
名詞(ハエ)
格助詞
にくみ、 マ行四段活用動詞「にくむ」(憎む、嫌がる)連用形
名詞(料理をのせる台)
格助詞
巡る ラ行四段活用動詞「巡る」(飛び回る)連体形
名詞
格助詞
そしり ラ行四段活用動詞「そしる」(悪く言う、けなす)連用形
つつ、 接続助詞(~ながら)

 

あまつさへほとけいましめしさけむ。

それだけでなく仏の戒めた酒を飲んだりする。

語句 意味
あまつさへ 副詞(それだけでなく、そのうえ)
名詞
格助詞
戒め 名詞(禁制、禁じる事)
過去の助動詞「き」連体形
名詞
格助詞
飲む。 マ行四段活用動詞「飲む」終止形

 

無邪気に仏に拝む尊いさととは対照的に、一茶は信仰に対して真摯に向き合ってこなかったことを恥じています。

自分は、ひとたび仏壇を離れれば、蠅を憎み、蚊を悪く言い、酒まで飲んじゃうと…

これらは殺生戒(生き物を殺すことを禁じる教え)、飲酒戒(酒を飲んではいけない)を犯すことを指しています。

それらの行為を、「地獄の種」と言っているんですね。

 

おりからもんつきさして、いとすずしく、

ちょうどその時門口に月の光がさして、とても涼しく、

語句 意味
折から 副詞(ちょうどその時)
名詞
格助詞
名詞
さし サ行四段活用動詞「さす」連用形
て、 接続助詞
いと 副詞(とても、たいそう)
涼しく、 シク活用の形容詞「涼し」連用形

 

そとわらわべのおどりのこえのすれば、

外で子どもたちの踊りの声がすると、

語句 意味
名詞
格助詞
童べ 名詞(子どもたち)
格助詞
踊り ラ行四段活用動詞「踊る」連用形
格助詞
名詞
格助詞
すれ サ行変格活用動詞「す」已然形
ば、 接続助詞

 

ただちに小椀こわんてて、かたざりにざりて、

(娘が)すぐに小さな椀を投げ捨て、片膝をついて這って進み出て、

語句 意味
ただちに 副詞(すぐに)
小椀 名詞(小さなお椀)
投げ捨て タ行下二段活用動詞「投げ捨つ」(投げ捨てる)連用形
て、 接続助詞
片ゐざり 名詞(片膝をついたまま進むこと)
格助詞
ゐざり出 ダ行下二段活用動詞「ゐざり出づ」(膝をついたまま進み出る)
て、 接続助詞

 

こえげ、まねして、うれしげなるをるにつけつつ、

声を上げ、手まねをして、嬉しそうな様子をするのを見ては、

語句 意味
名詞
格助詞
上げ、 ガ行下二段活用動詞「上ぐ」(上げる)連用形
手まね 名詞(手を動かして真似ること)
サ行変格活用動詞「す」連用形
て、 接続助詞
うれしげなる ナリ活用の形容動詞「うれしげなり」(嬉しそうな様子だ)連体形
格助詞
見る マ行上一段活用動詞「見る」連体形
格助詞
つけ カ行下二段活用動詞「つく」連用形
つつ、 接続助詞(~ては)

 

いつしかかれをもがみたけになして、

早くこの子を振り分け髪のできる背丈にならせて、

語句 意味
いつしか 副詞(早く)
かれ 代名詞(あの人。ここではさとのことを指す)
格助詞
係助詞
振り分け髪 名詞(肩のあたりで切りそろえた髪型。8歳くらいまでの子どもがする)
格助詞
名詞(身長)
格助詞
なし サ行四段活用動詞「なす」(する、ならせる)
て、 接続助詞

 

おどらせてたらんには、

踊らせてそれを見たならばその時には、

語句 意味
踊ら ラ行四段活用動詞「踊る」未然形
使役の助動詞「す」連用形
接続助詞
マ行上一段活用動詞「見る」
たら 完了の助動詞「たり」未然形
仮定/婉曲の助動詞「む」(~したならば)連体形
(そのとき) ※補って読むと理解しやすい
格助詞
は、 係助詞

 

今は外で踊る子どもの真似をしているだけのさとですが、一茶はさとが振り分け髪ができるくらいまで成長した姿を想像しています。

でも実際はこのあと6月には、さとは病気で亡くなってしまうんですよね…

 

二十五菩薩にじゅうごぼさつ管絃かんげんよりも、はるかまさりてきょうあるわざならんと、

二十五菩薩の奏でるという霊妙な音楽よりも、遥かに優れて趣が深いことなのだろうと、

語句 意味
二十五菩薩 名詞(極楽浄土への往生を願う人々を迎えに来る25体の菩薩のこと。楽器を演奏したり、舞を踊ったりしながらやって来ると言われている)
格助詞
管絃 名詞(楽器、また楽器を演奏すること)
より 格助詞
も、 係助詞
はるか 副詞(程度がはなはだしい)
勝り ラ行四段活用動詞「勝る」(優れている)連用形
接続助詞
名詞(興趣)
ある ラ行変格活用動詞「あり」連体形
※興あり…趣が深い
わざ 名詞(こと)
なら 断定の助動詞「なり」未然形
推量の助動詞「む」終止形
と、 格助詞

 

わがもるいをわすれて、

我が身に降り積もる老いを忘れて、

語句 意味
代名詞
格助詞
名詞(我が身)
格助詞
積もる ラ行四段活用動詞「積もる」(降り積もる、積み重なる)連体形
老い 名詞
格助詞
忘れ ラ行四段活用動詞「忘る」連用形
て、 接続助詞

 

さをなんらしける。

つらさを晴らしたことだ。

語句 意味
憂さ 名詞(つらさ)
格助詞
なん 係助詞 ※結び:ける
晴らし サ行四段活用動詞「晴らす」(晴れ晴れとした気持ちにさせる)
ける。 過去の助動詞「けり」連体形 【係り結び】

 

かくすがら、牡鹿おじかつののつかのも、

このように一日中、牡鹿の角が生え替わるほんの少しの時間も、

語句 意味
かく 副詞(このように)
日すがら、 副詞(一日中)
牡鹿 名詞
格助詞
名詞
※牡鹿の角…夏は鹿の角が生え替わって新しい角が短いことから、短い時間を表す「束の間」を導く序詞
格助詞
つかの間 名詞(ほんの少しの時間)
も、 係助詞

 

手足てあしうごかさずといことなくて、

手足を動かさないということがなくて、

語句 意味
手足 名詞
格助詞
動かさ サ行四段活用動詞「動かす」未然形
打消の助動詞「ぬ」連用形
格助詞
いふ ハ行四段活用動詞「いふ」連体形
こと 名詞
なく ク活用形容詞「なし」連用形
て、 接続助詞

 

あそつかれるものから、あさのたけるまでねむる。

遊び疲れるので、朝は日が高くなるまで眠る。

語句 意味
遊び疲れる 下一段活用動詞「遊び疲れる」連体形
ものから、 接続助詞(~だから)
名詞
係助詞
名詞
格助詞
たける カ行下一段活用動詞「たける」(盛りの状態になる)
※日のたける…日が高くなる
まで 副助詞
眠る。 ラ行四段活用動詞「眠る」終止形

 

そのうちばかりはは正月しょうがつおも

その間だけ母親は正月のようにくつろげる時と思って、

語句 意味
代名詞
格助詞
うち 名詞(間)
ばかり 副助詞(~だけ)
名詞
係助詞
正月 名詞
格助詞
思ひ、 ハ行四段活用動詞「思ふ」連用形

 

「正月を思ひ」とはどういうことですか?

これは「のんびりとくつろげる時だと思う」ことを指します。

でも、この後の母親の行動を見ると、「のんびり」とは程遠いような気がします…

そうですね、「お母さんあるある」かもしれませんね。
子どもが寝ている間にやれることをやってしまい、それが終わってゆっくりしようと思ったら泣き声が聞こえて「起きちゃった~、自分の時間終わり!」となるんです…

 

めしき、そこらきかたづけて、

飯を炊き、その辺を掃除をしてかたづけて、

語句 意味
名詞
炊き、 カ行四段活用動詞「炊く」連用形
そこら 代名詞(その辺)
掃きかたづけ カ行下一段活用動詞「掃きかたづける」(掃除をして片付ける)連用形
て、 接続助詞

 

団扇うちわひらひらあせをさまして、

うちわをひらひらと(あおいで)汗をしずめて、

語句 意味
団扇 名詞
ひらひら 副詞
名詞
格助詞
さまし サ行四段活用動詞「さます」(しずめる)連用形
て、 接続助詞

 

ねやごえのするのをめる合図あいずとさだめ、

寝室で泣き声がするのを(娘の)目が覚める合図と決めて、

語句 意味
名詞(寝室)
格助詞
泣き声 名詞
格助詞
する サ行変格活用動詞「す」連体形
格助詞
名詞
格助詞
覚める マ行下一段活用動詞「覚める」連体形
合図 名詞
格助詞
さだめ、 マ行下二段活用動詞「さだむ」(決める)連用形

 

かしこくこして、うらはたけ尿しとやりて、

手早く抱き起して、裏の畑におしっこに行かせて、

語句 意味
手かしこく ク活用の形容詞「手かしこし」(手早い)連用形
抱き起こし サ行四段活用動詞「抱き起こす」連用形
て、 接続助詞
名詞
格助詞
名詞
格助詞
尿 名詞
やり ラ行四段活用動詞「やる」(行かせる)連用形
て、 接続助詞

 

乳房ちぶさあてがへば、すながら、

乳房をあてがうと、(娘は)すわすわと吸いながら、

語句 意味
乳房 名詞
あてがへ ハ行四段活用動詞「あてがふ」(あてがう)已然形
ば、 接続助詞
すはすは 副詞(飲むときの音を表現している)
吸ひ ハ行四段活用動詞「吸ふ」連用形
ながら、 接続助詞

 

胸板むないたのあたりをちたたきて、にこにこわらがおつくるに、

(母親の)胸板の辺りを強くたたいて、にこにこと笑い顔をするので、

語句 意味
胸板 名詞
格助詞
あたり 名詞
格助詞
打ちたたき カ行四段活用動詞「打ちたたく」(強くたたく)連用形
て、 接続助詞
にこにこ 副詞(嬉しそうに笑う様子を表す)
笑ひ顔 名詞
格助詞
作る ラ行四段活用動詞「作る」連体形
に、 接続助詞

 

はは長々ながなが胎内たいないくるしびも、

母親は長い間の胎内の(=妊娠中)の苦しみも、

語句 意味
名詞
係助詞
長々 副詞(長い時間が経つ様子を表す)
胎内 名詞
格助詞
苦しび 名詞(苦しみ)
も、 係助詞

 

日々ひび襁褓むつききたらしきも、ほとほとわすれて、

毎日のおむつがきたないのも、すっかり忘れて、

語句 意味
日々 名詞(毎日)
襁褓 名詞(おむつ)
格助詞
汚らしき シク活用の形容詞「汚らし」(きたない)連体形
も、 係助詞
ほとほと 副詞(すっかり)
忘れ ラ行下二段活用動詞「忘る」連用形
て、 接続助詞

 

ころもうらたまたるやうに、

衣の裏の玉のようなこの上ない宝を得たように、

語句 意味
名詞
格助詞
名詞
格助詞
名詞
格助詞
ア行下二段活用動詞「得ウ」連用形
たる 完了の助動詞「たり」連体形
やうに、 比況の助動詞「やうなり」連用形

 

なでさすりて、ひとしよろこぶありさまなりけらし。

なでてさすって、いっそう喜ぶ様子だったなあ。

語句 意味
なでさすり ラ行四段活用動詞「なでさする」(愛しい気持ちをこめてなでる、大切に世話をする)連用形
て、 接続助詞
ひとしほ 副詞(いっそう)
喜ぶ バ行四段活用動詞「喜ぶ」連体形
ありさま 名詞(様子)
なり 断定の助動詞「なり」連用形
けらし。 過去の詠嘆の助動詞「けらし」(~たなあ)終止形

 

俳句:のみあと かぞかぞながらに かな 一茶いっさ

(かわいい子どもの肌に残る)蚤の跡を、数え(さすり)ながら、(母親は)添い寝をして乳を飲ませていることだあ 一茶

語句 意味
名詞 夏の季語
格助詞
名詞
数へ ハ行下二段活用動詞「数ふ」連用形
ながら 接続助詞
格助詞
添え乳 名詞(添い寝して乳を飲ませること)
かな 詠嘆の終助詞
一茶 名詞

 

この句からは、どのような様子が読み取れますか?

家のことや子どもの世話に追われる中でも、授乳中には娘を愛おしそうにさするお母さんの様子が読み取れます。

そうですね。
お母さんの、さとを思う深い愛情が読み取れますね。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?
小林一茶の『おらが春』から「幼子さと」と二回に分けて、解説してきました。

無邪気でかわいらしいさとと、さとを思う一茶と母親の様子が、目に浮かぶような内容でしたね。
物事に執着しないことや、仏壇で無邪気におがむ姿など、さとと「仏」を結び付ける描写が見受けられます。

みなさんは、どのように感じましたか?

この記事を書いた人
あずき

40代、一児の母
通信制高校の国語教員

生徒が「呪文にしか見えない」という古文・漢文に、少しでも興味を持ってもらえたらと作品についてとことん調べています。

自分の生徒には直接伝えられるけど、
聞きたくても聞けない…などと困っている方にも届けたくて、ブログを始めました。

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