・本文(読み仮名付き)
・品詞分解と語句解説
・現代語訳
・本文の解説
以上の内容を順番にお話していきます。
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徒然草「亀山殿の御池に」品詞分解・現代語訳・解説
本文・品詞分解(語句解説)・現代語訳
亀山殿の御池に、大井川の水をまかせられんとて、| 語句 | 意味 |
| 亀山殿 | 名詞(亀山御所。後嵯峨上皇が設置した。天皇の隠れ家としての意味もあった。) |
| の | 格助詞 |
| 御池 | 名詞 |
| に、 | 格助詞 |
| 大井川 | 名詞(京都府を流れ、淀川に合流する川。大堰川のこと。) |
| の | 格助詞 |
| 水 | 名詞 |
| を | 格助詞 |
| まかせ | サ行下二段活用動詞「まかす」(池などに水を引き入れる)未然形 |
| られ | 尊敬の助動詞「らる」未然形【尊敬】作者→後嵯峨上皇への敬意 |
| ん | 意志の助動詞「む(ん)」終止形 |
| とて、 | 格助詞 |

ここでは、主語が省略されています。
敬語表現と「亀山殿」という言葉から、ここでの主語は「後嵯峨上皇」とわかります。
| 語句 | 意味 |
| 大井 | 名詞 |
| の | 格助詞 |
| 土民 | 名詞(その土地に住む住民。百姓、人々。) |
| に | 格助詞 |
| 仰せ | サ行下二段活用動詞「仰す」(お命じになる)連用形【尊敬】作者→後嵯峨上皇への敬意 |
| て、 | 接続助詞 |
| 語句 | 意味 |
| 水車 | 名詞(田に水をくみ上げる装置) |
| を | 格助詞 |
| 造ら | ラ行四段活用動詞「造る」未然形 |
| せ | 使役の助動詞「す」未然形 |
| られ | 尊敬の助動詞「らる」連用形 |
| けり。 | 過去の助動詞「けり」終止形 |
| 語句 | 意味 |
| 多く | ク活用の形容詞「多し」連用形 |
| の | 格助詞 |
| 銭 | 名詞(お金) |
| を | 格助詞 |
| 賜ひ | ハ行四段活用動詞「賜ふ」(お与えになる)連用形【尊敬】作者→後嵯峨上皇への敬意 |
| て、 | 接続助詞 |
| 数日 | 名詞 |
| に | 格助詞 |
| 営み出だし | サ行四段活用動詞「営み出だす」(作り出す)連用形 |
| て、 | 接続助詞 |
| 掛け | カ行下二段活用動詞「掛く」(設置する)連用形 |
| たり | 完了の助動詞「たり」連用形 |
| ける | 過去の助動詞「けり」連体形 |
| に、 | 接続助詞 |

「掛く」はかける、渡すなど多くの意味があります。
ここでは「設置する」と訳しました。

「数日で」と言うのは、どのように捉えるといいのでしょうか?

私たちの感覚だと「数日で」は短い日数に感じられますね。
しかし、ここでは「たくさんの日数」という意味になります。
| 語句 | 意味 |
| おほかた | 副詞全く~ない |
| 廻ら | ラ行四段動詞「廻る」(回る)未然形 |
| ざり | 打消の助動詞「ず」連用形 |
| けれ | 過去の助動詞「けり」已然形 |
| ば、 | 接続助詞→已然形+「ば」【順接確定条件】~ので |
| とかく | 副詞(色々と) |
| 直し | サ行四段活用動詞「直す」連用形 |
| けれ | 過去の助動詞「けり」已然形 |
| ども、 | 接続助詞→已然形+「ども」【逆接確定条件】~けれども、~だが |
| 語句 | 意味 |
| つひに | 副詞(結局、とうとう) |
| 回ら | |
| で、 | 接続助詞(~ないで) |
| いたづらに | ナリ活用の形容動詞「いたづらなり」(役に立たない)連用形 |
| 立て | タ行四段活用動詞「立つ」已然形 |
| り | 存続の助動詞「り」連用形 |
| けり。 | 過去の助動詞「けり」終止形 |

「役に立たないのに立っている」という、皮肉を込めたダジャレのようですね。
| 語句 | 意味 |
| さて、 | 接続詞(そこで) |
| 宇治 | 名詞 |
| の | 格助詞 |
| 里人 | 名詞(その土地の住民) |
| を | 格助詞 |
| 召し | サ行四段動詞「召す」連用形【尊敬】作者→後嵯峨上皇への敬意 |
| て、 | 接続助詞 |
| こしらへ | ハ行下二段動詞「こしらふ」(つくる)未然形 |
| させ | 使役の助動詞「さす」未然形 |
| られ | 尊敬の助動詞「らる」連用形 |
| けれ | 過去の助動詞「けり」已然形 |
| ば、 | 接続助詞→已然形+「ば」【順接確定条件】~ので |

宇治の里人って一体何者ですか!?

古くから「柳、橋、水車」が和歌や絵画に描かれていれば「宇治」と言われていました。
宇治は水車の名所であり、宇治の住民は水車を造る技術を持っていたということです。
| 語句 | 意味 |
| やすらかに | ナリ活用形容動詞「やすらかなり」(簡単に) |
| 結ひ | ハ行四段動詞「結ふ」(組み立てる)連用形 |
| て | 接続助詞 |
| 参らせ | サ行下二段動詞「参らす」(献上する)連用形【謙譲】作者→後嵯峨上皇への敬意 |
| たり | 完了の助動詞「たり」連用形 |
| ける | 過去の助動詞「けり」連体形→「水車」が省略されている |
| が、 | 格助詞 |
| 語句 | 意味 |
| 思ふ | ハ行四段動詞「思ふ」連体形 |
| やうに | 比況の助動詞「やうなり」連用形 |
| 廻り | ラ行四段活用動詞「廻る」連用形 |
| て、 | 接続助詞 |
| 水 | 名詞 |
| を | 格助詞 |
| 汲み入るる | ラ行下二段動詞「汲み入る」(汲み入れる)連体形 |
| こと、 | 名詞 |
| めでたかり | ク活用形容詞「めでたし」(見事だ)連用形 |
| けり。 | 過去の助動詞「けり」終止形 |
| 語句 | 意味 |
| よろづに、 | 副詞(何事につけても) |
| そ | 代名詞 |
| の | 格助詞 |
| 道 | 名詞 |
| を | 格助詞 |
| 知れ | ラ行四段活用動詞「知る」已然形 |
| る | 存続の助動詞「り」連体形 |
| 者 | 名詞 |
| は、 | 係助詞 |
| やんごとなき | ク活用の形容詞「やんごとなし」(大切だ)連体形 |
| もの | 名詞 |
| なり。 | 断定の助動詞「なり」終止形 |
「大井の土民」と「宇治の里人」の比較
それでは本文の内容を確認していきましょう。 「大井の土民」と「宇治の里人」がそれぞれ水車を作る、出来上がったものは下記の通りです。| 水車 | 大井の土民 | 宇治の里人 |
| 作る | ・たくさんのお金をかけた ・日数をかけた | 簡単に組み立てた |
| 結果 | ・全く回らない ・色々と直してはみたが、とうとう回らない | 思いのままに回った |
| 評価 | 役に立たないで立っていた | 見事だった |
筆者が主張したいことは何か?
この話を通じて、筆者が主張したいことは、この一文に込められています。 「よろづに、その道を知れる者は、やんごとなきものなり。」 意味は、何事につけても、その道を知っている者(専門家)は大切なものである ということです。 後嵯峨上皇は大井川の水を汲み入れたかったので、大井川の住民(大井の土民)に水車を作らせました。 多くのお金を渡し、日数をかけて作り上げたものは役に立たない水車。 そこで結局、水車造りが得意な宇治の住民(宇治の里人)を呼んで作らせたのです。 すると、簡単に組み立て、思いのままに回り、見事に水を汲み上げたのでした。
私には、筆者が後嵯峨上皇を批判しているように感じられます。

確かに、最初から上皇が宇治の里人に造らせるという決断をしていれば、無駄なお金も時間もかけずに済みましたからね。
徒然草には後嵯峨上皇が何度か登場します。
皮肉やユーモアが含まれているのが、徒然草の特徴でもありますので、後嵯峨上皇への皮肉も込められていたのかもしれませんね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は徒然草より「亀山殿の御池に」のお話を紹介しました。
大井の土民と宇治の里人が水車を造る様子を比較し、「よろづに、その道を知れる者は、やんごとなきものなり。」という一文に筆者の主張が込められていることがわかりました。
また徒然草の性質から、そこには後嵯峨上皇への皮肉も込められていたとも考えられます。



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