今回は枕草子からである「うつくしきもの」の原文、現代語訳をしていきます。
色んなことが羅列されていて、
何を言っているのかよくわからない方もいるのではないでしょうか?
・この時代の「うつくしきもの」の言葉の意味は?
・色々書いてあるけど作者が言う「うつくしきもの」って何?
などについても解説してまとめていきます。
枕草子「うつくしきもの」現代語訳!内容がスッと理解できる解説も
では早速本文とその現代語訳、そして解説していきます。
ただ現代語訳を読むよりも、内容が理解しやすいと思います。
本文と現代語訳
現代語訳
※青…単語、文法
※赤…指示語、敬語の解説
まず大前提としておさえなければいけないのが
「うつくしきもの」は現代の「美しいもの」ではなく
「かわいらしいもの」であるということです。
小さく幼いものに対して愛らしいと感じる気持ちを表しています。
瓜にかいた幼児の顔がかわいいというのが、ちょっと理解できませんが…
これはどうやら一種のお人形遊びだったようです。
あとで出てくる「雛の調度」と同様に捉えているのではないでしょうか。
2、3歳と言っても昔は数え年で言っていたから、実際は1、2歳ということですね。そんな子が小さいごみを見つけて「ほらっ見つけたよ!」って、
大人に見せてる姿を想像するとかわいらしいですね。
「尼そぎ」と言うのは現代のようなツルツルに剃ったものではなく、
肩で切りそろえた髪型のことを言います。
「らうたし」は「うつくし」とほぼ同じ意味で使われる単語です。
ここでは「母性本能をくすぐるようなかわいらしさ」=「愛らしい」という解釈をしました。
ここが作者の気持ちを表している一文ですね。
「どれもこれも、小さいものはみんなかわいい~!!」と言っています。
当時の「今ドキ女子」発言でしょうか。
着物が「衣長」でも「短き」でもかわいらしいと言っていますね。
幼児と着物のアンバランスさがかわいらしいと言っています。
8歳、9歳、10歳くらいなどの男の子が、声は子どもっぽい感じで漢文の書物を読んでいるのは、たいそうかわいらしい。
「文」って「手紙」のことじゃないんですか?
「文」には手紙という意味もありますが、
「漢文の書物」や「漢詩」などの意味もあります。
ここでは「漢文の書物」という意味で使われています。
当時の貴族の子ども(男子)は、
7、8歳になると「ふみはじめ」と言われる儀式がありました。
そこで初めて漢文の書物の読み方を教わり、読み始めるのです。
7、8歳で漢文の書物を読むなんて、すごいですね!!
難しい漢文を幼い声で読んでいる様子を
作者は「うつくし」と言っています。
赤ちゃんのような小さい子に対してだけでなく、
「一人前な行動と幼さを感じる声のギャップ」も
「うつくしきもの」ポイントのようです。
また作者には息子がいましたので、
自分の子どもの姿を思って「うつくし」と言ったという説もあります。
鶏の雛が、足が長く見えて、白く愛らしく、着物の丈が短いような感じで、ピヨピヨとやかましく鳴いて、人の後ろや先に立って歩き回るのも、かわいらしい。
鶏の雛は羽毛がフワフワでそこから細い足が出ている姿は、
人間の子どもが丈の短い着物を着ているのに似ててかわいらしいと言っています。
最後が単語の羅列で雑な感じがしますか?
「みなうつくし」が省略されていると考えられますが、
「雁の卵と、瑠璃の壺と…私が思う、うつくしきものはこんな感じかな」って楽しそうに語ってる姿が想像できますね。
「瑠璃の壺」とは「青いガラスの壺」です。
「うつくしきもの」は全部でいくつあった?
現代語訳と解説を読んで、
作者が挙げた「うつくしきもの」はいくつあったかわかりましたか?
出てきたものをシリーズごとに分けてみました。
(出て来た順ではありません)
小ささがかわいらしいもの
- 瓜にかいた幼児の顔
- 人形遊びの道具
- 池から取り上げた小さい蓮の葉
- とても小さい葵
- カルガモの卵
- 瑠璃の壺
幼い子供・動物の子どもの様子がかわいらしいもの
- 雀の子が踊るように寄ってくる様子
- 幼児があやして抱いているうちにしがみついて寝てしまった様子
- 鶏の雛が人の前後を歩き回る様子
- 親鳥が雛を連れて走る様子
幼さと行動やしぐさなどのギャップ
- 幼児が這ってくる途中に見つけたごみを大人に見せる様子
- 尼そぎをしている幼児がものを見るときのしぐさ
- 立派な着物を着た殿上童が歩き回る様子
- 色白でプクプクした幼児(裾の長い着物を着てハイハイしてきたり、逆に丈の短い着物を着ている様子)
- 8、9、10歳くらいの男の子が幼い声で漢詩を読んでいる様子
全部で15個ありました。
『枕草子』について
『枕草子』についても触れておきましょう。
『枕草子』は平安時代中期に執筆されたという随筆です。
随筆とは、作者の体験や読書によって得た知識などから
自分の感想や思想をまとめたものです。
現代で言うところの「エッセイ(エッセー)」ですね。
有名な「春はあけぼの」という自然描写や人間批評といった話もあれば、
今回のような「〇〇なもの」という「あるあるシリーズ」もあります。
現代にも通じる考え方もあり、古文の中では比較的読みやすい作品ではないでしょうか?
作者は清少納言。
※「せいしょう なごん」だと思ってた人いませんか!?
清少納言は
「清」… 父 清原 元輔の姓からとったもの
「少納言」… 当時の男性貴族の官職
という構成です。
「少納言を勤める清原さんの娘さん」といった感じでしょうか。
※清少納言の名前の由来については謎が多く、諸説あります。
また別の機会に詳しく調べてみたいと思います。
まとめ
今回ご紹介した「うつくしきもの」はいかがだったでしょうか?
全ては「何も何も、小さきものは、みなうつくし。」に尽きます。
「小さいものはなんでもかわいい~」ということでした。
「小さいもの」と一口に言っても、
幼児、鶏の雛、人形遊びの小さいものから植物の小さいものなどを挙げ、
物理的に小さなものに留まらず、様々な視点で挙げています。
それが清少納言の着眼点のすばらしさですね。
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