奥の細道「旅立ち」品詞分解・現代語訳・解説

古文

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奥の細道より「旅立ち」について解説をしていきます。

奥の細道とは、江戸時代中期に松尾芭蕉によって書かれた俳諧紀行です。
江戸を出発し、東北・北陸をめぐる旅の様子を句を交えながらつづっています

今回のお話は、その旅に至る経緯と旅立ちの場面となっています。
しっかりと読んでいきましょう。

この記事では

・本文(読み仮名付き)
・品詞分解と語句解説
・現代語訳
・本文の解説

以上の内容を順番にお話していきます。

奥の細道「旅立ち」品詞分解・現代語訳・解説

本文・品詞分解(語句解説)・現代語訳

月日つきひ百代はくたい過客かかくにして、としもまた旅人たびびとなり。

語句 意味
月日 名詞(年月)
係助詞
百代 名詞(永遠)
格助詞
過客 名詞(旅人)
断定の助動詞「なり」連用形
して、 接続助詞
行き交ふ ハ行四段活用動詞「行き交ふ」(過ぎてはやってくる)連体形
名詞
係助詞
また 副詞(やはり)
旅人 名詞
なり。 断定の助動詞「なり」終止形

【訳】年月は永遠の旅人(のようなもの)であり、過ぎてはやって来る年もやはり旅人(のようなもの)である。

 

ふねうえ生涯しょうがいかべ、うまくちとらいをむかものは、

語句 意味
名詞
格助詞
名詞
格助詞
生涯 名詞
格助詞
浮かべ、 バ行下二段活用「うかぶ」連用形
名詞
格助詞
名詞
とらへ ハ行下二段活用「とらふ」(捕らえる)連用形
接続助詞
老い 名詞(老年、年をとること)
格助詞
迎ふる ハ行下二段活用動詞「迎ふ」(迎える)連体形
名詞
は、 係助詞

【訳】船の上に自分の一生を浮かべ、馬の口をとって老年を迎える者は、

 

これだと意味がよく分かりませんね。

「ここでは船頭として船の上で一生を過ごす者や、馬子として生涯を終える人は、」ということになります。

 

日々ひびたびにしてたびすみかとす。

語句 意味
日々 名詞(毎日)
名詞
断定の助動詞「なり」連用形
して 接続助詞
名詞
格助詞
名詞(住まい)
格助詞
す。 サ行変格活用動詞「す」終止形

【訳】毎日が旅であり、旅を住まいにしている。

 

古人こじんおおたびせるあり。

語句 意味
古人 名詞(昔の人。ここでは古い時代の詩人→李白や杜甫などを指す)
係助詞
多く ク活用の形容詞「多し」連用形
名詞
格助詞
死せ サ行変格活用動詞「死す」未然形
完了の助動詞「り」連体形
あり。 ラ行変格活用動詞「あり」終止形

【訳】昔の人もたくさん旅の途中で亡くなった。

 

そんな旅を作者もしたいというのでしょうか?

そのような立派な詩人と同じように、旅の途中で命を落とすことになってもかまわないという気持ちが込められています。

 

もいづれのとしよりか、

語句 意味
代名詞(私)
係助詞
いづれ 代名詞(いつ)
格助詞
名詞
より 格助詞
か、 係助詞

【訳】私もいつの年からか、

 

片雲へんうんかぜさそれて、

語句 意味
片雲 名詞(ちぎれ雲)
格助詞
名詞
格助詞
誘は ハ行四段活用動詞「誘ふ」未然形
受身の助動詞「る」連用形
て、 接続助詞

【訳】千切れ雲が風に誘われるように、

 

漂泊ひょうはくおもやまず、

語句 意味
漂泊 名詞(さまよい歩くこと)
格助詞
思ひ 名詞(思い、気持ち)
やま マ行四段活用動詞「やむ」(気持ちがおさまる)未然形
ず、 打消の助動詞「ず」連用形

【訳】さまよい歩きたいという気持ちがおさまらず、

 

海浜かいひんにさすら

語句 意味
海浜 名詞(海辺)
格助詞
さすらへ、 ハ行下二段活用動詞「さすらふ」(さまよう、放浪する)連用形

【訳】海辺をさまよい、

 

去年こぞあき江上こうしょう破屋はおく蜘蛛くも古巣ふるすをはらて、

語句 意味
去年 名詞(昨年)
格助詞
秋、 名詞
江上 名詞(川のほとり。ここでは隅田川のほとりを指す)
格助詞
破屋 名詞(あばら家。壊れかけた家。)
格助詞
蜘蛛 名詞
格助詞
古巣 名詞(古くなった巣)
格助詞
はらひ ハ行四段活用動詞「はらふ」(取り除く)連用形
て、 接続助詞

【訳】昨年の秋、川のほとりのあばら家に(帰り)、(留守中にできた)蜘蛛の巣を取り除いて(住んでいるうちに)、

 

ややとしれ、はるてるかすみそらに、

語句 意味
やや 副詞(やがて。しだいに。)
名詞
係助詞
暮れ、 ラ行下二段活用動詞「暮る」(季節や年が終わりになる)連用形
名詞
立て タ行下二段活用動詞「立つ」(季節がやってくる。始まる。)已然形
完了の助動詞「り」連体形
名詞
格助詞
名詞
に、 格助詞

【訳】やがて年も終わり、春がやってきて霞みがかった空を見て、

 

「立つ」は「暦の上で立春を迎える」と「春霞が立つ」という意味の掛詞となっています。

 

白河しらかわせきえんと、

語句 意味
白河 名詞(福島県南部にある関所)
格助詞
名詞
越え ヤ行下二段活用動詞「越ゆ」(未然形
意志の助動詞「む」終止形
と、 格助詞

【訳】白河の関を越えようと、

 

 

白河の関は、奥州三古関として知られる関所の一つです。
他は鼠ヶ関ねずがせき勿来関なこそのせきがあります。
東北の玄関口とされています。

 

 

芭蕉は、東北に旅に出たいと思い始めていたのですね。

 

そぞろがみものにつきてこころくるせ、

語句 意味
そぞろ神 名詞(旅に出るように誘惑する神)
【主格】格助詞(~が)
名詞
格助詞
つき カ行四段活用動詞「つく」連用形
※物につく 【連語】神や霊がとりつく
接続助詞
名詞
格助詞
狂は ハ行四段活用動詞「狂ふ」(正常ではなくなる)未然形
せ、 使役の助動詞「す」連用形

【訳】そぞろ神が(私に)取り憑いて心を正常ではなくならせ、

 

道祖神どうそじんまねきにあるものにつかず、

語句 意味
道祖神 名詞(旅人の旅の安全を守る神)
格助詞
招き 名詞(誘い)
格助詞
あひ ハ行四段活用動詞「あふ」連用形
接続助詞
取る ラ行四段活用動詞「とる」連体形
もの 名詞
名詞
格助詞
つか カ行四段活用動詞「つく」未然形
ず、 打消の助動詞「ず」連用形

【訳】道祖神の誘いにあって取るものも手につかず、

 

「そぞろ神の物につきて心を狂はせ」と「道祖神の招きにあひて取るもの手につかず」が対句になっています。

「取るもの手につかず」とは「旅がしたくて、他の事をしようと思ってもふわふわして、気が気でないという感覚です。

 

わかる気がします!

 

股引ももひきやぶれをつづり、

語句 意味
股引 名詞(ももひき)
格助詞
破れ 名詞
格助詞
つづり、 ラ行四段活用動詞「つづる」(継ぎ合わせる。繕う。)連用形

【訳】ももひきの破れを繕い、

 

かさけかて、

語句 意味
名詞
格助詞
名詞(紐)
付けかへ ハ行下二段活用動詞「つけかふ」(つけかえる)連用形
て、 接続助詞

【訳】笠の紐を付け替えて、

 

三里さんりきゅうすうるより、

語句 意味
三里 名詞(膝頭の下の外側のツボ。万病に効くとされている。)
格助詞
名詞
すうる ワ行下二段活用動詞「すう」(灸を据える)
より、 【即時】格助詞(~するとすぐに)

【訳】三里に灸を据えるとすぐに、

 

旅に向けて準備を始めたことを意味しています。

 

・ももひきの穴を繕い
・笠の紐をつけかえて道具の準備

・灸を据えて身体の準備
をしたということですね。

 

 

松島まつしまつきまづこころにかかりて、

語句 意味
松島 名詞(現在の宮城県の松島湾。日本三景の一つ。)
格助詞
名詞
まづ 副詞(まっさきに)
名詞
格助詞
かかり ラ行四段活用動詞「かかる」連用形
※心にかかり 【連語】気になる
て、 接続助詞

【訳】松島の月がまっさきに気になって、

 

めるかたひとゆずり、

語句 意味
住め マ行四段活用動詞「住む」已然形
存続の助動詞「り」連体形
名詞(場所。ここでは家を指す)
係助詞
名詞
格助詞
譲り、 ラ行四段活用動詞「譲る」連用形

【訳】住んでいる家は人に譲り、

 

杉風すぎかぜ別所べっしょうつるに、

語句 意味
杉風 名詞(人名。杉山杉風すぎやまさんぷう芭蕉の門人)
格助詞
別所 名詞(別院。別荘。)
格助詞
移る ラ行四段活用動詞「移る」(移動する。転居する。)連体形
に、 格助詞

【訳】杉風の別荘に移ると、

 

くさひないえ

語句 意味
名詞
格助詞
名詞
係助詞
住み替はる ラ行四段活用動詞「住み替はる」
名詞(時)
係助詞
名詞
格助詞
名詞

【訳】簡素なわび住まいも、(人が)住み替わる時が来たのだな。次は華やかなひな人形が飾られる家になることだろう。 

対比表現
草の戸…簡素なわび住まい
雛の家…雛人形が飾られる家

 

 

おもて八句はっくいおりはしらく。

語句 意味
表八句 名詞(連歌の第一句から八句目までのこと)
格助詞
名詞(草庵。芭蕉の住まいを指す)
格助詞
名詞
格助詞
掛け置く。 カ行四段活用動詞「掛け置く」(かけておく)終止形

【訳】(と詠み、この句をはじめとする連歌の)表八句を庵の柱にかけておく。

 

これは杉風の別荘の柱ではなく、もともと住んでいた芭蕉の家の柱です。

 

人に譲るようなことを書いてありますが、なぜその家の柱に句を掛けてくことにしたのでしょうか?

 

芭蕉が転居したことを知らずに訪ねてきた人に対して、「はじめの八句をかけておきますから、続きを詠んでください」と言っているのです。

いわば旅立ちの挨拶とも言えます。

 

次ページ:弥生も末の七日~

この記事を書いた人
あずき

40代、一児の母
通信制高校の国語教員

生徒が「呪文にしか見えない」という古文・漢文に、少しでも興味を持ってもらえたらと作品についてとことん調べています。

自分の生徒には直接伝えられるけど、
聞きたくても聞けない…などと困っている方にも届けたくて、ブログを始めました。

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