大鏡「時平と道真③」現代語訳・解説(また、北野の~)

古文

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今回は大鏡より「時平と道真」について解説をしていきます。

最後の部分である「また、北野の~」で始まる部分になります。

 

・本文(読み仮名付き)
・品詞分解と語句解説
・現代語訳
・本文の解説

以上の内容を順番にお話していきます。

前回までの内容はこちら

道真の左遷

時平と道真①

時平と道真②

 

大鏡「時平と道真③」品詞分解・現代語訳・解説

本文・品詞分解(語句解説)・現代語訳

また、北野きたのの、かみにならせたまて、

また、 接続詞(【話題の転換】さて、それから)
北野 名詞(菅原道真のこと)
の、 格助詞(【主格】~が)
名詞(雷神)
格助詞
なら ラ行四段活用動詞「なる」(なる、変わる)未然形
尊敬の助動詞「す」連用形 (作者→道真への敬意)
給ひ ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」連用形 尊敬(作者→道真への敬意)
て、 接続助詞

【訳】さて、北野(道真)が、(亡くなった後)雷神におなりになって、

 

「神」がなぜ「雷神」なのでしょうか?

今でこそ学問の神様となっている道真ですが、当初は怨霊として恐れられていました。

道真の死後、時平をはじめ道真の左遷に関わった人々が変死し、天皇の住まいにも雷が落ちて多数の死者が出た。
そこで人々は道真を「雷や天候を司る神=天神(雷神)」として祀るようになった。

 

いとおそろしくかみなりりひらめき、清涼殿せいりょうでんちかかりぬと見えけるが、

いと 副詞(とても、大変)
恐ろしく シク活用の形容詞「恐ろし」(怖い、恐ろしい)連用形
名詞
鳴りひらめき、 カ行四段活用動詞「鳴りひらめく」(鳴りピカっと光る)連用形
清涼殿 名詞(天皇の住まい)
格助詞
落ちかかり ラ行四段活用動詞「落ちかかる」(落ちて来る)連用形
強意の助動詞「ぬ」終止形
格助詞
見え ヤ行下二段活用動詞「見ゆ」(見える)連用形
ける 過去の助動詞「けり」連体形
が、 接続助詞

【訳】とても恐ろしく雷が鳴りピカっと光り、清涼殿に落ちて来てしまうと見えたが、

 

 

本院ほんいん大臣おとど太刀たちきさけて、

本院の大臣、 名詞(藤原時平のこと)
太刀 名詞(反りがあり、長大な刀のこと)
格助詞
抜きさけ カ行下二段活用動詞「抜きさく」(抜き放つ)連用形
て、 接続助詞

【訳】本院の大臣(時平)は太刀を抜き放って、

 

きてもわがつぎにこそものしたましか。

生き カ行上二段活用動詞「生く」(生きる、生存する)連用形
接続助詞
係助詞 ※【連語】ても(~も、~の状態でも)
代名詞
格助詞
名詞(一段低い地位、次の位)
格助詞
こそ 係助詞 ※結び:しか
ものし サ行変格活用動詞「ものす」連用形
給ひ ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」連用形 ※【連語】ものし給ふ(~でおありになる、~でいらっしゃる)
しか。 過去の助動詞「き」已然形【係り結び】

 【訳】「生きている時も(あなた様は)私の次の位でいらっしゃった。

 

今日きょうかみとなりたまりとも、

今日、 名詞(今日)
名詞
格助詞
なり ラ行四段活用動詞「なり」(なる)連用形
給へ ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」已然形 尊敬(時平→道真への敬意)
完了の助動詞「り」終止形
とも、 接続助詞(たとえ~でも)

 【訳】今日、たとえ雷神におなりになったとしても、

 

このには、われにところたまべし。

代名詞
格助詞
名詞(世)
格助詞(【場所】~で、~において)
は、 係助詞
代名詞
格助詞
ところ置き カ行四段活用動詞「ところ置く」(遠慮する)連用形
給ふ ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」終止形 尊敬(時平→道真への敬意)
べし。 当然の助動詞「べし」(当然~すべきだ)終止形

 【訳】この世では、当然私に遠慮なさるべきだ。

 

時平はずいぶん強気ですね。

「生きてる時も俺の下の位だったんだから、神になったからって俺にさからうな!」と言わんばかりですね。

 

 

いかでか、さらではあるべきぞ。」と、にらみやりてのたまひける。

いかで 副詞
か、 係助詞【反語】※結び:べき ※【連語】いかでか(どうして~か、いやそんなはずはない)
さら 「さり」の未然形 ※さり=副助詞「し」+ラ変動詞「あり」=「しあり」が変化したもの
接続助詞
係助詞 ※【連語】さらでは(そうではなくては、そうでなかったら)
ある ラ行変格活用動詞「あり」連体形
べき 推量の助動詞「べし」連体形【係り結び】
ぞ。」 終助詞
と、 格助詞
にらみやり ラ行四段活用動詞「にらみやる」(にらみつける)連用形
接続助詞
のたまひ ハ行四段活用動詞「のたまふ」(おっしゃる)連用形 尊敬(作者→時平への敬意)
ける。 過去の助動詞「けり」連体形

【訳】どうして、そうでなくて済むだろうか、いや済まない。」と、(雷神の方を)にらみつけておっしゃった。

 

 

一度いちどはしづまらせたまりけりとぞ、ひともうはべりし。

一度 名詞
係助詞
しづまら ラ行四段活用動詞「しづまる」(止む、静まる)未然形
尊敬の助動詞「す」連用形(作者→道真への敬意)
給へ ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」已然形 尊敬(作者→道真への敬意)
完了の助動詞「り」連用形
けり 過去の助動詞「けり」終止形
格助詞【引用】
ぞ、 係助詞 ※結び:し
名詞(世間、世の中)
格助詞
名詞
申し サ行四段活用動詞「申す」連用形
侍り ラ行変格活用の補助動詞「侍り」連用形 丁寧(作者→読者への敬意)
し。 過去の助動詞「き」連体形【係り結び】

【訳】(それを受けて雷神は)一度はお静まりになったそうだと、世間の人は申しました。

 

 

されど、それは、かの大臣おとどのいみじうおはするにはあらず、

されど、 接続詞(けれども、しかし)
それ 代名詞(※雷神が静まったことを指す)
は、 係助詞
代名詞
格助詞
大臣 名詞(左大臣 時平のこと)
格助詞
いみじう シク活用の形容詞「いみじ」(すばらしい※ここでは身分が高いことを指す)連用形「いみじく」ウ音便化
おはする サ行変格活用の補助動詞「おはす」(いらっしゃる)連体形 尊敬(作者→時平への敬意)
格助詞
係助詞
あら ラ行変格活用の補助動詞「あり」未然形
ず、 打消の助動詞「ず」連用形

 【訳】しかし、雷神が静まったのは、あの大臣(時平)がお偉いからではなく、

 

 

王威おういかぎりなくおはしますによりて、理非りひしめさせたまるなり。

王威 名詞(天皇の威光、威厳)
格助詞
限りなく ク活用の形容詞「限りなし」(限りがない)連用形
おはします サ行四段活用の補助動詞「おはします」(おありになる)連体形 尊敬(作者→天皇への敬意)
格助詞
より ラ行四段活用動詞「よる」(原因になる、もとづく)連用形
て、 接続助詞
理非 名詞(道理と道理から外れること)
格助詞
示さ サ行四段活用動詞「示す」未然形
尊敬の助動詞「す」連用形 (作者→道真への敬意)
給へ ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」已然形 尊敬(作者→道真への敬意)
完了の助動詞「り」連体形
なり。 断定の助動詞「なり」終止形

 【訳】天皇の威光が限りなくおありになることによって、道理と道理から外れることをお示しなさったのだ。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?
今回は大鏡より「時平と道真」の3つ目のエピソード「また、北野の~」について解説しました。

無実の罪で左遷された道真は死後、雷神になってしまいます。

時平への恨みを晴らすために雷を落とそうとすると、時平の言葉が。
「生きてる時は俺の下だったんだから、死んでからも雷神になったとは言え遠慮しろよ」と。
時平が神やその呪いにも、恐れずに立ち向かう性格だったことが伺えます。

雷神(道真)は時平の言葉で静まったように見えましたが、そうではありませんでした。

実は時平に遠慮したのではなく、朝廷を乱してはいけないと天皇への尊敬の念を失わなかったとして、語り手の大宅世継は道真を評価しているのです。

この記事を書いた人
あずき

40代、一児の母
通信制高校の国語教員

生徒が「呪文にしか見えない」という古文・漢文に、少しでも興味を持ってもらえたらと作品についてとことん調べています。

自分の生徒には直接伝えられるけど、
聞きたくても聞けない…などと困っている方にも届けたくて、ブログを始めました。

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